2025年区議会第三回定例会 一般質問

2025年9月18日

日本共産党中央区議会議員  奥村暁子

【質問項目】

  1. 共生社会の実現について
  2. 市街地再開発事業について
  3. 防災対策について
  4. 自衛隊への個人情報提供について
  5. 介護事業所への支援について
  6. シルバーパスの負担軽減について

 日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.共生社会の実現について

 始めに共生社会の実現について質問します。
 「外国人は優遇されている」「犯罪率が高い」など7月の参院選で、外国人への偏見をあおる虚偽の言説が広がったことに対し、排外主義、外国人差別に危機感を持ち、反対する動きが広がっています。
 弁護士や音楽プロデューサーら12人が「デマと差別が蔓延する社会を許しません」というアピールを発表(7月28日)し、オンライン署名が広がったり、人権問題に取り組むNGO8団体が排外主義の扇動に反対する緊急共同声明を発表(7月8日)したことへの賛同が1159団体に達するなど大きな広がりを見せています。日本ペンクラブも参院選後も続く「排外的言論の横行を懸念する」と声明を出しました(8月5日)。
 全国知事会は7月に青森市で開かれた定例会議で「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す我々47人の知事がこの場に集い、対話の中で日本の未来を拓く」と青森宣言を発表し、「外国人の受け入れと多文化共生社会実現に向けた提言」をまとめました。
 提言は、「国は外国人を『労働者』と見ているが、自治体から見れば日本人と同じ『生活者』であり『地域住民』である」と訴えた上で、生活支援や教育、高齢外国人への介護、年金などの課題に対し、外国人の受け入れと多文化共生社会の実現に向けた国の責任も強調しています。
 今、日本で働く外国人労働者は230万人(2024年10月現在)となっています。あらゆる産業現場が人手不足にあえぐ中、多くの外国人が希望を抱いて日本を選択し、社会に溶け込み貴重な労働力として貢献している現実への理解が求められます。
 中央区では1万1,000人を超える外国人が居住し、働く人、インバウンド共に増加しているもと、多文化共生社会実現に向けた取組をすすめることが必要ではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区で、外国人が生活保護や健康保険、奨学金などについて優遇されたり、外国人の検挙数の割合が増加しているという事実はありますか。
 第二に、根拠のない差別的な言質が流布されることを、区はどのように捉えていますか。
 第三に、中央区として、排外主義や外国人への偏見、差別を許さず、多文化共生社会実現をめざすことに特化した宣言を行うことやメッセージの発信を求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

2.市街地再開発事業について

 次に市街地再開発事業について質問します。
 インフレが社会問題となる中、交通至便な一等地で高い収益性を確保できるはずのJR中野駅前で計画されていた中野サンプラザの開発計画が見直されることになり、大きな話題となりました。他にも新宿駅南口や「第2六本木ヒルズ」と呼ばれる六本木での大規模再開発など、各地で建築費の高騰を理由に再開発プロジェクトが白紙になったり、計画を見直したりする例が相次いでいます。
 そんな中、今年3月31日、国の「市街地再開発事業等関連要綱」の一部改正が行われました。
 全国的に市街地再開発事業等の事業費が大幅に増加する中、国の補助金である「社会資本整備総合交付金」等の要望額が上回る状況が続いているため、補助金の交付対象事業を絞り込むことが、主な改正内容となっています。
 今後は、市街地の中で再開発を促進すべき区域であり、かつ、①「都市機能の集約」②「国際競争力の強化」③「密集市街地の解消」という3つの課題に対応する事業に、交付対象を限定するとのことです。ただし、2026年(令和8年)度末までに都市計画決定されていれば、従前通り交付対象となります。交付対象となるかどうかは、事業の行く先に大きな影響を及ぼします。
 そこでお聞きします。
 第一に、区内で計画がすすんでいる市街地再開発事業等29件のうち、今後、国の補助金の交付対象から外れる事業はどの程度あると見込まれますか。
 第二に、交付対象の絞込みから逃れるため、2026年度末までに都市計画決定を終わらせるようと駆け込み申請の増加が見込まれますが、区としての対応についてお示しください。
 第三に、工事費の高騰により事業の見直しを行っている事業数はどの程度ありますか。また、見直しの内容とその方法についてお示しください。その際、地域に居住したり事業を営んでいる従前権利者には影響を及ぼさない見直しとなっているのかお答えください。
 第四に、国の補助金が縮小されることを契機に、補助金頼みや保留床が高く売却できることを前提とした市街地再開発事業そのものを止めることも含め、見直しが必要だと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

3.防災対策について

 次に防災対策について質問します。
 近年、地震だけでなく温暖化による異常気象などで大型台風、大雨、洪水、山火事、大雪など自然災害が頻発し、「災害列島」日本での日常的な防災・減災対策の強化が急務となる中、23区では防災にDXを活用する動きが各地で出ています。
 江戸川区は、火災や水害などの発生時に被害状況を迅速に把握し情報収集できるよう、高層ビル・マンションの計3カ所に、AIを活用した火災探知システムを搭載した高所カメラを設置しています。AIが火災による煙を感知すると、職員のスマートフォンに火災を知らせるメールが届き、消防署に連絡する仕組みです。
 さらに今年度中に、250カ所弱の小中学校の屋上で、専用のポールへの防災カメラの取り付けを完了させ、高所カメラで生じる死角についても詳細な被害状況を確認できるようにし、それでも把握できない場合は、区と協定を締結した4社がドローンで確認します。
 小中学校に設置するカメラは、インターネットに接続できなくても通信が可能で、カメラやドローンが撮影した画像などを区役所に送信できる仕組みとなっています。届いた画像をAIが解析し、家屋の全壊・半壊を判定し、罹災証明の発行にも役立てるとのことです。
 荒川区も、停電時でも72時間稼動するバッテリー付のカメラを、区内の緊急輸送道路を中心に93台取り付け、被害状況を確認するとのことです。
 他にもDX活用例として、葛飾区では、避難所の備蓄倉庫にある物資の在庫などを管理するシステムを導入し、職員の負担軽減と在庫数の正確な把握につなげるとのことです。
 災害対応のこうしたDX化は、迅速な被害把握や救出活動につながることに加え、マンパワーに制約がある中で公助を補完する役割も果たすことから重要です。
 そこでお聞きします
 第一に、中央区での災害時のDX活用について現状と課題をお示しください。
 第二に、中央区でもAIカメラの設置や備蓄品の在庫管理などへのDX活用を求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

 いつ発生してもおかしくない南海トラフ地震や首都直下地震への対策として、建築物の耐震性の確保は重要であり、首都圏では高層の建物を大きく揺らす「長周期地震動」による深刻な被害が懸念されます。
 国土交通省は11都府県を「対策地域」に指定し、2017年4月以降に申請された60メートルを超える高層建築には長周期地震動に耐えられる設計を義務づけました。
 既存の超高層建築は設備の破損などが発生する恐れがあるとされており、耐震基準を満たさない雑居ビルも各地にあることから、防災・減災の視点で住宅の耐震化などを改めて総点検する必要があります。政府も防災庁の創設を来年度中に目指すとしています。
 そんな中、港区は、能登半島地震で新耐震基準の建物にも被害があったことや区民の9割がマンション住まいであることを踏まえ、新耐震基準の分譲マンションで耐震調査費を助成します。都内で初めての制度で、1棟の助成の上限額は450万円とのことです。
 千代田区は、築30年以上の分譲マンションの耐震化促進のため、耐震改修の助成率を10分の9に引き上げるとともに、1棟あたりの助成限度額を2億5099万円に引き上げます。また、補強設計の助成上限額も500万円から750万円に引き上げるとのことです。
 中野区や杉並区でも、耐震改修助成の対象を新耐震基準の建物まで拡充します。
 そこでお聞きします。
 中央区で長周期地震動に耐えられるマンションはどれ位ありますか。マンションの耐震に対し、どういう支援が必要だと考えますか。中央区でも新耐震基準の建物への耐震調査費や耐震改修への補助を求めますが、いかがですか。お答えください。

4.自衛隊への個人情報提供について

 次に自衛隊への個人情報提供について質問します。
 区民の方から「中学校3年生の孫宛に、陸上自衛隊高等工科学校から募集案内が郵送されてきてびっくりした。やめてほしい」という相談を受けたことがあります。
 募集案内には、特別職国家公務員として月額10万6900円の生徒手当てと年2回の期末手当が支給されることや、全寮制で宿舎は無料、食事・制服・寝具等も支給又は無料貸与で、3学年終了時に高等学校の卒業資格を取得できる旨が、さも魅力的に紹介されています。
 防衛省は毎年、中学生だけでなく、高校や大学の卒業を控える若者に対し、自衛官や防衛大学校の募集案内を郵送することなどを目的に、住民基本台帳に記載されている氏名、生年月日、住所、性別の4情報の提供を自治体に依頼しています。
 従来、防衛省・自衛隊による住民基本台帳の閲覧や書き写しにのみ対応していた自治体が、防衛省の依頼を受け、紙や宛名シール、電子媒体などによる名簿の提供に切り替えるところが増えています。
 近年、少子化に加え、2015年の安保関連法の成立以後に任務の危険度が高まったことや、自衛官のパワハラ・セクハラ問題などもあり、定員割れが続く自衛官の募集難を背景に、政府は自治体への協力要請を強めています。
 この間、それまでは都道府県知事への要請のみだった名簿提供の依頼が、2018年以降、防衛大臣名や防衛省・総務省の両省の連名で市区町村に度々、通知として出されるなどしており、昨年12月に策定された自衛官募集に向けた基本方針には「すべての市区町村からの提供を目指す」ことが明記されました。
 こうした中、保護者などの市民が声を上げ、奈良県山添村や福岡県太宰府市などでは名簿提供を中止し、北海道では名簿提供から閲覧方式に戻した自治体もあります。昨年3月には奈良市で、名簿提供された高校生が憲法13条のプライバシー権の侵害にあたるとして、自衛隊名簿提供違憲訴訟も起きています。
 本人の同意のない名簿提供には法的根拠がありません。自衛隊法施行令120条でも、募集に関し防衛大臣が自治体に「資料の提出を求めることができる」とあるのみで、募集に応じていない対象年齢全員の個人情報を提供できるはずがありません。
 2003年4月23日には個人情報の保護に関する特別委員会で、当時の石破茂元防衛庁長官も名簿提供について「私どもが依頼をしても、こたえる義務というのは必ずしもございません」と答弁しています。
 政府は今、戦争での死傷者を想定した体制づくりを進めており、自衛隊と自治体の協力体制は、有事において戦死した自衛官を補充する仕組みになる恐れも指摘されています。
 何よりも自衛隊は国際法上の軍隊であり、自衛官は兵士です。服務の宣誓を行い、命をかけて人を殺す「賭命義務」が課されています。
 自衛隊は広報に力を入れ、ことあるごとに子どもにアピールする機会を増やしていますが、本質が説明されないまま勧誘が行われれば、入隊後に苦しむ人も出てくるでしょう。
 法的根拠がなく、憲法13条を侵す名簿の提供は行うべきではありません。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区では、このような陸上自衛隊高等工科学校や自衛官募集の案内の送付がどのように行われてきたのか、これまでの経緯をお示しください。
 第二に、中央区は現在、防衛省・自衛隊による住民基本台帳の閲覧や書き写しで対応していますが、今後も紙や宛名シール、電子媒体などによる名簿提供は行わないことを強く求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

5.介護事業所への支援について

 次は介護事業所への支援について質問します。
 2000年に始まった介護保険が今年4月1日に創設25年を迎えた際、「介護崩壊元年」というニュースがネット上で流れました。「崖っぷち」にある介護保険がいよいよ「崩壊」となるのか。食い止めるため国の責任が問われます。
 圧倒的多数を女性が担っていた介護を「社会化」するとして、介護保険は国民の期待を集め始まりました。一方、保険制度を導入したことにより、それまで介護費用の50%だった国庫負担が25%にされるなど、国の責任後退が当初から指摘され、「住民税非課税以下の人も保険料を年金から天引きされる」「利用料に減免がなく低所得者も1割負担」「要支援・要介護の認定がなければ利用できない」「サービス基盤が整っていない」など「保険あって介護なし」という状況が危惧されました。
 国はその後も「社会保障構造改革」や「税と社会保障の一体改革」の名による社会保障削減を繰り返し、2006年の介護保険改悪では、「要支援1、2」がつくられ、要介護1の6割を要支援2に格下げしサービスを制限しました。2009年には要介護認定の見直しで、軽度判定が出るように認定システムを変えています。2015年には要支援の訪問介護と通所介護を保険給付から切り離し、ボランティアなどを使う自治体の「事業」への置きかえを進め、特養ホームの入所を要介護3以上の中度・重度者に限定し、52万人いた待機者のうち要介護1・2の人を切り捨てました。
 厚生労働省老健局長も務め、介護保険制度の創設を主導した堤修三・元社会保険庁長官でさえ「国家的詐欺」だと糾弾するほどの大改悪でした。
 今、特に崩壊の危機にあるのが訪問介護サービスです。2024年、事業者の倒産や休廃業、解散は過去最多の784社を記録しましたが、その7割が訪問介護です。介護報酬の本体部分は消費税増税対応部分を除いた実質でも、創設時から5・13%も削減され、事業所のひっ迫を招く重大な要因となっています。
 そのため介護労働者の賃金は全産業平均より月5万円低く人手が不足しています。ホームヘルパーは6万円低く、有効求人倍率は14倍を超えます。ところが政府は2024年、訪問介護の基本報酬を2~3%引き下げました。これでは介護保険の崩壊にますます拍車がかかることになります。崩壊を食い止めるため、あらゆる手立てを取るべきです。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区での訪問介護事業所の廃業などの状況はどのようになっていますか。また職員の離職率についてお示しください。
 第二に、東京都は2022年から介護サービス事業所に対し、物価高騰対策として補助を行なっており、中央区も一部支出をしていますが、事業所の経営を支えるのに十分と言えるでしょうか。お答えください。
 第三に、品川区は、国の介護報酬引下げによる訪問介護事業所の減収を独自に補填する「訪問介護報酬緊急支援」を2年間の臨時措置として行う補正予算を組みました。事業規模に応じて、一事業所あたり年間12万円から240万円を補助するもので、区内約60の全ての訪問介護事業所が対象となっています。中央区でもこうした補助制度を求めますが、いかがですか。
 第四に、足立区は、不足している福祉人材の就労促進と定着を図るため、介護サービス事業所及び障害福祉サービス事業所の若年層の職員に対し、賃貸住宅の家賃を月額上限3万円補助する「足立区福祉サービス事業所職員家賃支援事業」を行っています。中央区でも民間賃貸住宅に対応する家賃支援を行なうよう求めますが、いかがですか。
 第五に、「要介護1・2の生活援助などを保険給付から外して区市町村の総合事業へ移行させる」ことや「利用料原則2割への引上げ」、「ケアプラン有料化」をやめさせ、介護報酬を引き上げるよう国に求めることを要望しますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

6.シルバーパスの負担軽減について

 次にシルバーパスの負担軽減について質問します。
 東京都は今年10月から、年間2万510円のシルバーパスを1万2,000円に値下げします。日本共産党都議団が2017年以降、繰り返し条例提案をし、負担軽減を求めてきたことが実ったものです。
 この東京都の措置に合わせ、荒川区は1万1,000円を補助し、高齢者の実質負担を一律1,000円に軽減します。高齢者の健康づくりのためには外出促進、外出支援が特に重要と判断してのことです。
 そこでお聞きします。
 中央区は高齢者に対し、コミュニティバスの乗車料を無料としていることは大変高く評価しますが、コミュニティバスで移動できる範囲は区内だけです。東京都の措置を好機と捉えて、シルバーパスの負担軽減、また無償化のための補助を行うことを求めますが、いかがですか。お答えください。

 以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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