2025年9月26日 奥村暁子
「議案第79号 中央区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」に対する反対意見を述べます。
本議案は、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律等の施行に伴い、来年度から新たに実施される「乳児等通園支援事業」、いわゆる「こども誰でも通園制度」の設備及び運営に関する基準を定めるものです。
目的として、全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化することが掲げられています。
中央区の条例案によると、対象は認可保育所、認定こども園、地域型保育事業、企業主導型保育施設に入園していない生後6カ月から3歳到達後の年度末までのこどもで、利用時間はこども1人あたり、月20時間(国10時間+都事業活用上乗せ10時間)、1日あたり8時間を上限とし、利用する曜日や時間帯を固定する「定期利用」を基本とするとのことです。
国基準の保育士配置5割以上を若干上回る6割にすることや、0歳児1人あたりの保育面積についても国基準の1.98㎡を上回る3.3㎡にするなどの対応は取られるものの、慣らし保育もない週1回程度の利用を想定した制度には様々な問題があり、制度の根本にある危険性を是正するものではありません。
こどもにとって、生後6カ月から3歳という人見知りが始まり、親の後追いが激しい時期に、慣れない場所で見知らぬ保育士に預けられる心的な影響は計り知れません。また、通常保育で毎日過ごしているこどもたちの集団に、短時間利用のこどもが入ってくることが及ぼす子どもたちに与える不安もぬぐえません。
受け入れる側の保育現場にとっても、短時間保育やはじめてのこどもを受け入れるには十分な体制と保育のスキル、経験が必要なのに、通常保育でさえ保育士不足や低すぎる処遇で疲弊している上に、新たな負担を強いられることになりかねません。
公的責任の後退も問題です。先行実施している自治体もある中、現在は事業の実施主体が市区町村となっていますが、2026年度の本格実施からは利用者と事業者の直接契約になります。市区町村は、利用者の認定、事業者の認可を行った後は、利用状況を確認したうえで施設からの請求書を確認し、施設が代理受領する給付費を支払うことだけになります。実際の事業については当事者任せとなり、公的に関わりづらくなることが懸念されます。指導監督や事故等への対応の責任の所在もあいまいです。
子育ての孤立化がすすむなか、家庭で育つ未就園児への支援のしくみづくりが求められることは事実です。しかし「こども誰でも通園制度」は、法律上は「乳児または幼児への遊び及び生活の場の提供」であって「保育」ではありません。事業者が子どもの状態を十分に把握することが難しい中、子どもの安全や育ち、多様な経験が担保されるとは言えず、保育現場に負担を強いるものとなります。
現在各園で行われている一時預かり事業との類似性、整合性も指摘される中、一時預かり事業の条件整備をすすめて拡充する対応こそ必要ではないでしょうか。
以上の理由により、日本共産党区議会議員団は議案第79号に反対します。