2025年2月28日
日本共産党中央区議会議員 奥村暁子
【質問項目】
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日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。
始めに物価高騰対策について質問します。
労働者の賃金は、30年間もの長期にわたって減り続け、実質賃金は、ピーク時の1996年から年収で平均74万円も減少しています。そこに今、物価高騰が追い打ちをかけています。
暮らしの困難打開のカギとなるのは賃上げです。
自治体として働く人の処遇改善に積極的に関与できる施策として公契約条例があります。
公契約条例は、公共工事や委託事業において、入札や契約、働く人の労働条件などを適正に保障することを定めるものです。
制定している自治体は23区では2012年の渋谷区を皮切りに2015年に世田谷区、今年度からは台東区と墨田区が実施、さらに文京区、品川区でも実施が決まり、合計で14区と過半数を超えました。
世田谷区は公契約条例で、発注工事の報酬下限額を定めていますが、新年度から都内の最低賃金1,163円を大きく上回る1,460円に引き上げます。墨田区も同様に物価高騰にあわせて報酬下限額を見直していく考えを示しています。
公契約に関わって働く人の報酬額を引き上げれば、大きな賃上げ効果を波及させることができるのではないでしょうか。
そこでお聞きします。
第一に、中央区が発注する契約の件数と金額をお示しください。公契約における労働者の賃金実態の把握をどのように行っていますか。
第二に、区の努力としてできる賃上げ推進策として、公契約条例の制定を求めますが、いかがですか。公契約条例で世田谷区のように労働報酬下限額を定め、労働者の処遇改善を図ることは、物価高騰対策としても有効だと思いますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
東京都は、賃上げ策として「魅力ある職場づくり推進奨励金」制度を設けていますが、職場環境改善の2つ以上の取り組みが支給要件で、賃上げだけでは支援は受けらません。
2023年度は、応募のべ5,695社に対し奨励金を受けられたのは159社、わずか2.8%でした。
一方、岩手県や徳島県が独自に行っている中小企業等への賃上げ支援は、事業者自らが賃上げをするということだけを要件としている直接支援です。
そこでお聞きします。
こうした賃上げへの直接支援をおこなうよう東京都に要請することを求めますが、いかがですか。お答えください。
異常な物価高騰が家計を圧迫する中、福祉施策の充実も支出を抑える意味から、物価高騰対策として大変大事です。党区議団として求め続け、実施に至った学校給食の無償化や、新年度予算にもりこまれた補聴器購入費助成の拡充、出産支援タクシー券の増額など福祉施策の充実は物価高高騰対策として欠かせません。
そこでお聞きします。
第一に、第一子の保育料無償化や出産費用の無料化など、東京都と協力してすすめるよう求めますが、いかがですか。
第二に、国保料の負担軽減のため投入されてきた法定外繰入などの予算は、この10年間で半分以下に減らされました。今や国保料の金額全国上位26自治体のうち21を東京の自治体が占める状況になっています。法定外繰入をなくすことはやめ、保険料の軽減に、中央区として取り組むことを求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次に生活保護行政の改善について質問します。
まず、増加している生活保護制度の利用者への対応についてです。
厚生労働省『被保護者調査』によると、2024年9月、生活保護利用者数は200万7,830人、165万0,802世帯でした。東京都福祉局『令和5年度福祉統計年報編』によると、生活保護世帯は23万1,299世帯で、都道府県別に見ると「東京都」は第5位となっています。
地域別に見ると、保護率は区部平均20.5%に対し、最も保護率が高いのは足立区の33.9%で、最も低いのは中央区で7.0%です。
一方、増加率で見ると、最も増加率が高かったのが「中央区」で、2010年度を100とした際、2023年度は145.8とほぼ1.5倍に増えています。
一見、華やかな都心・中央区で、貧困にあえぎ、生活保護を受けながら必死に生きている人たちがいます。
そこでお聞きします。
中央区での現在の生活保護利用者数、世帯数をお示しください。利用者の増加率が区部で最も高くなっていることを、どのように分析していますか。1.5倍に増えたことに対応するだけの手厚い職員配置が必要だと思いますが、これまでどのように対応してきましたか。それぞれお答えください。
次に生活保護の制度の周知についてです。
「どのような時にどうすれば利用できるのか」など、生活保護の理解はまだまだ不十分です。そのため誤解やバッシングの発生、経済的に苦しくても制度が利用できることさえ知らない人が少なくありません。
制度を広く周知し気軽に相談できることを知らせ、生きる権利を保障することは大変重要だと思います。
そこでお聞きします。
第一に、生活保護を啓蒙するポスターは都内10区が独自に作成していますが、中央区は作成していません。作成している自治体では区有施設などに張り出したり、新宿区では病院や公衆浴場にも掲示しているとのことです。相談を促すための手配り用のチラシも作成し、支援団体などを通じ配布することもおこなっています。中央区でもポスターやチラシを作成し有効活用することを求めますが、いかがですか。
また、区広報だけでは必要な情報が届かず、困窮している人が正確な情報を得にくい状況にあることから、練馬区、足立区など複数の自治体では「困った時には役所に相談を」と積極的にSNSで発信しています。中央区でも取り組むよう求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次は不適切な事案を生まないための取組についてです。
生活保護をめぐって、江戸川区では2018年の男性ケースワーカーによる生活保護利用女性への性的な発言や飲食に誘うなどのセクハラ行為、ケースワーカーが必要な対応を取らなかったことにより利用者の遺体を2カ月半にわたり放置した2023年の事件、さらに2024年には職務訪問中に生活保護利用者と性交渉を行うなどの不適切事案が続きました。
足立区でも2024年12月、生活保護利用者の遺体放置事件が起きるなど、生活保護利用者への不適切事案が後を絶ちません。
江戸川区は、2023年の遺体放置事件を受け、池谷秀登・立正大学社会福祉学部教授を委員長とし、「江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会」を設置し、提言された様々な取組をすすめ、生活保護利用者の権利を守る環境整備に努めています。
区議会第三回定例会の一般質問でも質問しましたが、生活保護費の過支給などの不備が起こらないようにするため、また重大な不適切事案が今後、中央区で起こらないようにするためにも、江戸川区で提言された取組は参考になるのではないでしょうか。
そこでお聞きします。
第一に、江戸川区や多くの区では受給にかかわる事務処理や引継ぎ事項にもれがないよう、改善策としてチェックリストや連絡表を新たに作成していますが、中央区にはチェックリストなどはありますか。事務処理の改善により利用者に不利益がないようにすることが大事だと思いますが、いかがですか。
第二に、ケースワーカーと査察指導員は現在何人いますか。ケースワーカーの育成や査察指導員の専門性と資質向上策のため、社会福祉主事任用資格の取得者を増やしていくことや、ケースワークをテーマとした研修やグループワークの充実、事例検討を図っていくことが大事だと思いますが、どのように取り組んでいますか。また、生活保護に関わって区で行っている研修とはどのようなものですか。
第三に、休職または退職したケースワーカーの補充は可能な限り正規職員としていくことや、若手・中堅・ベテランをバランスよく配置するための異動年限の延長、福祉職経験者を積極的に配置するなど、職員体制を充実させていくことも大事です。中央区では経験層を厚くするためにどのような取組が行われていますか。また、江戸川区では、外部有識者の助言も得ながら、職員の能力や成果を適切に評価する仕組みを新たにつくったとのことですが、中央区ではモチベーションの維持向上をどのように図っていますか。図るための評価の仕組みはありますか。
第四に、ハラスメント研修の充実や第三者を加えたハラスメント審査会の設置も有効だと思いますが、中央区でのハラスメント対策はどのようになっていますか。
第五に、職員間また組織間でのサポート体制強化と情報共有をすすめることも大事です。江戸川区では、業務の全体管理や業務に従事する職員の指導育成などを担う所管課の新設置や、ヒヤリハットの事例などについて課をまたいで共有する仕組みの構築を進めています。また、新たにケースワーカーが「在宅医療・介護連携推進事業会議」に出席したり、「江戸川区相談支援連絡協議会」との交流を行う取組や、外部有識者による「江戸川区生活保護業務適正実施検証委員会」を設置し外部の視点を導入しているとのことです。
中央区では他の課や外部組織との連携や情報共有についてはどのようになっていますか。
それぞれお答えください。
次は教員不足の解消について質問します。
2021年、文科省が初めて教員不足全国調査を行い、深刻な教員不足の実態が明らかになりました。
東京都教育委員会での毎年の調査でも、都内公立小学校1266校で、2024年4月の教員不足は約20人で、2023年4月の約80人からは改善しているといいますが、年度途中にも休職や退職は増え続けます。2023年度では2学期が始まる9月で約140人、3学期が始まる1月約160人の欠員となりました。公立小学校の約13%の学校で「先生が教室にいない」ことになり、1学級の児童数は35人と考えると、都内で最大5600の子どもたちが教員不足の被害者となったといえます。
東京都教育委員会によると、教員不足に対し、算数などの習熟度別指導をする加配教員や、図工、音楽などの専科教員を学級担当にするなどして担任を配置しているとのことです。
東京都都教育委員会は、学級担任を確保していれば問題はないと考えているようですが、しかし、加配教員や専科教員が行っていた授業はどうなるのでしょうか。
それらの授業は、担任教員が実施することになり、担任教員の授業負担が大きくなり、勤務時間が増大し「働き方改革」に逆行します。また、専科教員が実践してきた質の高い教育が受けられないことにもなり、教育の質の低下を招くことからも問題です。
そうした何らかの影響を受けている東京都の小学生(約59万5000人の13%)の人数は、約7万7千人ということになります。
欠員部分に加配教員や専科教員を配置する以外に、「校長・副校長・主幹が入る」「学年間で対応する」「教員一人当たりの時数や担当児童数を増やして対応する」「講師や非常勤、支援員等が対応する」などして学級担任や授業担当をカバーすれば、これらの教員が通常分担している校務にさらに負荷が加わることになります。いない教員の仕事をカバーするには限界があります。
そこでお聞きします。
第一に、中央区での教員不足の実態はどうなっていますか。
第二に、学級担任が欠けた場合、中央区ではどのようにその欠員不足を補いましたが。また、今後の対応策についてもお示しください。その際、教育の質の確保をどのように担保しますか。
第三に、欠員がなくとも、長時間過密労働が当たり前となっている今の学校現場の労働環境は大変厳しいものがあると思います。学校現場の状況をお示しください。
それぞれお答えください。
教員数や加配教員は国の基準に基づく正規採用職員ですが、学校には都や区市町村での独自の基準で配当されている臨時的任用職員、時間講師、スクール・サポート・スタッフ、副校長補助、介助員などの非正規の教職員が数多くいます。新年度から中央区で新規に配置される「エデュケーション・アシスタント」も同様です。
これらの教職員の欠員は、文科省や東京都教育委員会の調査の対象にはなりません。しかし、時間講師の授業も子どもにとっては正規の授業であり、正規職員と代わらない「先生」です。教員の欠員問題は行政にとっての欠員ではなく、子どもにとっての問題といえます。
そこでお聞きします。
非正規教職員の都や区独自の配置基準はどのようになっていますか。欠員はありますか。その場合の区の対応策についてもお示しください。
今、小学校での「教科担任制」が文科省から推奨されており、教員の負担軽減の切り札のように宣伝され、成果ばかりが報告されます。
しかし、純粋に教員増としない限り、教員の間での授業交換になるだけで、授業の持ち時間数は変わりません。
また、小規模な学校の場合は全体の教員が少ないため、教科担任といっても、一人の教員が複数の教科を教える必要があり、結果として連続して授業が入ってくることになります。
例えば、A先生が4年1組で理科実験の後、器具の片付けもそこそこに、4年2組の体育授業のために運動場へ行くなど教員はばたばたと大忙しになります。
中学校と違って、他の学校へ異動したときには担当教科が変わってしまうため、若手教員は何度も0からの授業研究をすることになります。
そもそも教員免許は、小学校は全教科を担当することが前提となり、中学・高校のように専門教科担当となっていないのは、子どもの発達段階と教育内容や方法に違いがあるからです。教育額的な意義を欠いた施策では教員不足の解決はできません。
そこでお聞きします。
教科担任制の課題をどのように捉えていますか。人員加配がなければ効果は上がらないと思いますが、いかがですか。それぞれお答えください。
2024年度の東京都の教員採用試験は、小学校は1.2倍と、志望倍率は10年間で半減しています。
首都圏の国立大学に通い、小学校教員を目指していた女性(23)は、「採用試験を受ける」と母親に言うと「お願いだから、先生はやめて」と泣きつかれた、という報道が昨年の朝日新聞に掲載されていました。学校に対する負のイメージが広がっています。
そこでお聞きします。
早期退職者や精神疾患による休職者増大、教員志望者の減少という「負のスパイラル」の背景に、何があると思いますか。お答えください。
東京都教育委員会は、教員不足の解消のため様々な対策を打ち出しています。
教員採用を増やすために、①大学年3年での教員採用試験の受験②合格発表を9月中に行う③社会人選考を25歳以上にする④中途退職者の試験を一部免除するカムバック採用の新設-などです。
退職させないために①新人等へのメンタルサポート拡充②定年退職教員による新人サポート③職員室の環境改善-などをすすめ、「働き方改革」を含めた人的支援として①スクール・サポート・スタッフ配置(1校1人)②エデュケーション・アシスタント(小学校の副担任業務を担う支援員/1地区20校)③副校長補佐(1028校)④外部人材による小学校外国語・体育等授業-にも取り組んでいます。さらに小学校担任制、教材等の共有、指導教諭等の授業動画配信、授業時数や学校行事等教育課程編成に係る指導・助言の徹底-なども掲げました。ところが、教員採用試験を見る限り効果が出ているとはいえません。
そこでお聞きします。
学校現場では、非正規教員が増えることで、正規教員の労働時間が増える悪循環に陥っています。非正規教員を増やすのではなく、30人学級にするなど学級編成の基準を見直して、正規教員を増やしていくことが必要だと思いますが、いかがですか。お答えください。
以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。