2024年区議会第三回定例会 一般質問

2024年9月20日

日本共産党中央区議会議員  奥村暁子

【質問項目】

  1. 雨水の活用について
  2. 空き家対策について
  3. 耐震助成制度について
  4. 生活保護について
  5. 学校給食について
  6. 会計年度任用職員の処遇改善について

 日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.雨水の活用について

 始めに雨水の活用について質問します。
 今、市街化が進んだ都内では、地下に雨が浸透しにくくなり、強い雨が降ると短時間に下水道や河川に雨が流れ込み、水があふれる都市型水害が頻発しています。
 豪雨の際には、下水道管の処理能力を超える雨水を貯留施設でためるなど、東京都はポンプ所などの基幹施設の整備や、雨水を地中に浸透させて災害リスクを抑える「レインガーデン(雨庭)」の整備に乗り出してはいるものの、建設にかかる期間や費用から簡単に増やせるわけではありません。
 過去に度々、洪水に悩まされてきた墨田区は、「流せば洪水、ためれば資源」と、雨水の活用に力を入れてきました。
 路地が広がるまちに「路地を尊ぶ」という思いからネーミングされた「路地尊」と呼ばれる雨水を利用する雨水タンクが計20基あり、水遊びや植木の水やりに使ったり、近所で発生したボヤの初期消火に活用するなど、地域防災とコミュニティーのシンボルともなっています。
 地上や地下に設置され、3トンほどの容量があるこうした「路地尊」の他にも、個人宅の軒先に設置されている小規模な雨水タンクは316基(3月末時点)あり、設置への助成制度がありますが、今後は老朽化に伴う修理や買い替えに対する助成も検討されています。
 墨田区内では他にも、江戸東京博物館や国技館、区役所など官民問わず大規模施設は雨水タンクを有しており、東京スカイツリーには区内最大の2635トンの雨水タンクがあります。
 こうした雨水タンクの一部は集中豪雨の際、雨を下水道に排水させないよう一時的に貯める雨水抑制槽として、豪雨に備え平時は空にしておく「ミニダム」の役割を果たしています。
 墨田区はさらに、開発指導要綱や条例でマンションや区内事業所への大型雨水タンクの設置も促しており、助成金の申請件数は右肩上がりとのことです。
 こうして墨田区が普及に力を入れる雨水タンクも含むミニダムは、雨水対策として大事な補完的役割を果たしています。
 墨田区内のミニダムの総貯水量は2万6000トンを超え、区民1人当たり約95リットル分に相当するそうです。
 能登半島地震では、耐震性水道管が破断し、長期間の断水が余儀なくされ、下水道管も被害を受けました。
 震災時や豪雨時に下水をあふれさせないため、また上下水道管が被害を受けた際の生活用水や飲料水の確保のためにも、これまで捨てていた雨を資源として使っていく視点を持ち、ライフラインに全面依存した都市から脱却していくことは大変重要ではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 第一に、雨水タンク、ミニダムの役割をどのように認識していますか。中央区で設置されている雨水タンクは、公共施設、集合住宅、個人住宅でそれぞれ何基ありますか。中央区での雨水活用の現状についてお示しください。
 第二に、墨田区以外にも大田区や世田谷区、板橋区などが雨水タンク設置に対し助成制度を設けています。中央区でも助成制度を創設することと、雨水タンクの積極的な設置を求めますが、いかがですか。
 第三に、雨水の活用をSDGsの観点、また災害対策の観点からも、環境施策や防災施策にしっかりと位置づけることを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

2.空き家対策について

 次に空き家対策について質問します。
 中央区は、再建築が困難な路地の奥などで老朽化した木造空き家を買い取り、防災機能を向上させる取組をすすめようとしています。
 6月の補正予算ではその検討のため、700万円のコンサル委託費が計上され、日経新聞の報道によると、来年度は空き家買い取りのための基金を20億円規模で造成するとのことです。
 区内には、勝どきや佃、月島、築地、人形町などの路地で木造住宅が集まる地域がありますが、建て替えの余地がある公道に面した外側の住宅とは違う、路地を入った内側の無接道敷地などの空き家や土地を区が買い取り、防火設備を備えたポケットパーク整備や無電柱化などに取り組むとのことです。
 老朽化による建物崩壊や放火など心配の声があがる空き家を放置するのではなく、その区画を逆に防災の視点から活用していくという発想は新しいものだと思いますが、まだ検討段階のため、不明な点が多くあります。
 そこでお聞きします。
 第一に、今年度の検討の進捗状況についてお示しください。また、20億円の基金はどのように造成するのでしょうか。
 第二に、防災面から十分な機能を果たさせていくために必要な箇所数はどの程度を見込んでいますか。目標値などはどのようになっていますか。
 第三に、再建築が不可能な路地の内側の土地でも、その土地と接する公道に面した土地がデベロッパーなどに買い取られれば、2つの土地を合わせることによりマンションなどの建設は可能です。区が買い取った土地をデベロッパーに転売するようなことがないようにすべきと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

3.耐震助成制度について

 次に耐震助成制度について質問します。
 災害時に命をまもるため、行政として取り組めることとして、耐震性の不十分な住宅への助成制度は欠かせません。
 今年2月の区議会第一回定例会の一般質問で、私は木造建築物の耐震助成制度について質問し、1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物だけでなく、他区のように新耐震基準以降で2000年以前に建てられた新耐震基準の建物も対象とするよう基準年度を見直すことや助成額の拡充などを求めたところ、今後必要な対応をとっていく旨の前向きな答弁がありました。早期の実施を求めるものですが、さらなる耐震化の拡充が必要だと思います。
 今回、東京都耐震ポータルサイトを確認したところ、旧耐震基準の木造建築物について、23区中9区が改修工事だけでなく、建替えへの助成も行っていることが分かりました。また、23区中19区が建物の除却に対しても助成を行っており、その中でも墨田区は2000年までの新耐震基準の木造住宅の除却にも助成しています。
 そこでお聞きします。
 大地震の際に倒壊の危険性のある住宅を安全な住宅に建替えたいという区民の声に応えるため、木造建築物の建替えや除却も助成の対象に加えることを求めますが、いかがですか。お答えください。

4.生活保護について

 次に生活保護について質問します。
 国が2008年以降のデフレで物価が下がった分、生活保護利用者の可処分所得が増えたとして保護費を減らしたことに対し、全国29の都道府県で保護費を引き下げられた利用者の方たちが国を相手取り、いわゆる「いのちのとりで裁判」がたたかわれる中、高裁、地裁合わせて18例で、保護費の引下げを違法とする判決が言い渡されています。
 東京でも、都内の生活保護利用者48人が国などを相手に、引き下げ処分の取り消しを求めてきましたが、その判決が6月13日、東京地裁であり原告側が勝訴しました。
 厚労省は保護費の引下げの根拠として、テレビやパソコンなどの電化製品の値下がりが大きかった時期を意図的に設定するなど、独自の物価指数を採用した「デフレ調整」を行い、保護費の中で食費などに充てる生活扶助費を最大で10%も削減、総額は670億円にも上りました。
 篠田賢治裁判長は、多大な下落率を導いた厚労省の計算の「大半の部分が過大に算出された疑義がある」と指摘した上で、厚労相の判断は「裁量権の逸脱や乱用があると言わざるを得ない」とし、保護費の引下げ処分は違法だと言い渡しました。
 篠田裁判長は判決言い渡し後、「社会は未来に向かって下向きの方向ではなく、上向きの方向に進まなければいけない」「そのために行政が担う役割がある」と述べ、詰めかけた当事者や支援者で満席の法廷で、最後に「皆さんが一体となって取り組んでほしい」と話を締めくくりました。
 私たち区議団のもとにも生活保護を受給している区民の方から「生活必需品であるエアコンが壊れたが買い換えるお金がない」「日々の生活の中で貯蓄などとてもできない」など、生活の厳しさを訴える声が届いています。
 生活保護の基準は、最低賃金や就学援助など47の制度の基礎になっています。その基準が下がれば、国民全体の生活水準も下がることにつながり、決して生活保護利用者の話だけではありません。
 社会全体を上向きにする責任を果たしていく役割が行政にはあるのではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 中央区は家賃や物価が高いため、生活保護世帯の生活が大変厳しい現状をどう認識していますか。特に住宅扶助費が家賃相場と見合っておらず、中央区から転出せざるを得ないケースを生むような基準では低すぎると考えますが、いかがですか。区民生活をまもるためにも、生活保護費の引き下げを許さず、住宅扶助費をはじめ生活保護費を引き上げていくよう、国に求めるべきだと考えますが、いかがですか。それぞれお答えください。

 コロナ禍や不景気の影響など様々な要因で、中央区でも生活保護受給者は増えていますが、深刻な物価高騰が続くなか、受給者の多くが限られた保護費で生活を切り詰めながら生活をしています。
 先日、生活保護を受給しているシングルマザーの方から相談を受けました。
 その方は離婚後、体調を崩し職場を退職した後、育ち盛りの子どもを抱え2022年から生活保護を受給しています。
 保護受給期間中、失業保険を受け取りながら職業訓練を受講していた時期がありましたが、その間に給付されていた職業訓練受講給付金を収入として区の福祉事務所にきちんと申告していたにもかかわらず、区側の瑕疵によりその収入が申告漏れという扱いになっていたことを1年3カ月経って初めて知らされました。
 本来、収入分が減額された保護費が給付されるはずが、減額されないまま振り込まれていた期間が5カ月あり、結果として総額約70万円を分割により返還するよう現在、区から求められています。しかし、支払いの負担が重く、生活が維持できない、というご相談です。
 この相談と極めて類似したケースで、本人の過失でないにもかかわらず、過支給となっていた保護費の返還を福祉事務所から求められ、それを不服として争われた裁判で、返還決定をくつがえした判例があります。
 東京地裁で判決が言い渡されたその裁判は、職員の瑕疵により、原告が収入として申告していた児童扶養手当が収入認定されていなかったこと、及び冬季加算の削除の処理がされていなかったことにより、合計約59万円の生活保護費の過支給分の返還を都内のA福祉事務所から求められたというケースです。
 判決文では、生活保護によって保障される生活は、憲法25条に定められた健康で文化的な水準を維持することができるものでなくてはならず、仮に毎月2000円ないし3000円の少額の分割による返納をしたとしても、その期間は16年から25年という極めて長期におよび、その期間は保護基準に沿った生活水準を下回る生活を強いられることや、原告世帯の自立を阻害することなどから、返還金額の決定処分を取り消す内容となっています。
 大変重要な判決だと思います。
 そこでお聞きします。
 受給者本人に過失がないにも係わらず、保護費が過支給となっていたケースはこれまでにどれ位ありますか。職員の瑕疵により同様のケースが発生した場合には、判例に倣い、返還免除の対応を取ることを求めますが、いかがですか。それぞれお答えください。

5.学校給食について

 次に学校給食について質問します。
 学校給食無償化にともない、これまでは多くの区で各学校が保護者から給食費を徴収して支出する仕組みだったものが、無償化後は区が補助金を学校に支出する形に切り替わりました。
 公費となったため、学校が学期ごと又は年度ごとに、使い切らなかった給食費の余剰分を区に返還するなど会計方法がより厳格化され、現場からは「より厳しい給食運営を余儀なくされている」「給食の質の低下につながっているのではないか」という声も上がっているとの報道がありました。
 多くの区では、無償化前は栄養士が年間を通して給食費をやりくりし、余った給食費を翌年度に繰り越して使える仕組みとなっていました。無償化された後も、板橋区や葛飾区ではこの仕組みを継続し、区と学校の間で余剰分を返還するなどの清算はしていません。
 中央区は、年度末までに使い切らなかった区に返還させ清算するという対応をとっているとのことですが、本来、給食費は食材購入のために全額使われるべきものだと思います。
 そこでお聞きします。
 第一に、昨今の物価高騰の折、子どもたちに少しでも満足度の高い給食を提供することや、現場での事務負担の軽減のためにも、余剰分の翌年度への繰越を認め、清算を行わないよう求めますが、いかがですか。
 第二に、渋谷区は今年度、「日本一美味しい給食」を目指し、区独自に給食単価を35%上乗せし、栄養士からは「提供できる食材や果物が増やせた」などの声が上がり、給食の充実につながっているとのことです。中央区も10%上乗せしたとのことですが、さらなる充実を求めますが、いかがですか。
 第三に、他区が行っているように不登校児童・生徒にも給食費相当額を補助していくことを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

6.会計年度任用職員の処遇改善について

 次に会計年度任用職員の処遇改善について質問します。
 非正規雇用である会計年度任用職員は、この3月に東京都でスクールカウンセラーが大量雇い止めされるなど、その理不尽な扱いが全国的にも問題となっています。
 総務省は6月28日、人事院が国の非正規職員である期間業務職員について「公募によらない採用は、同一の者について連続2回を限度とするよう求める」としていた文言を削除したことを踏まえ、地方自治体で働く会計年度任用職員の継続任用を制限する「3年目公募」の削除を示した総務省通知を出しました。
 総務省自治行政局の担当者によると、これまでも連続任用は可能であり、国の取り扱いは例示されていただけであって公募が必須だったわけでない、との説明ですが、今回はっきりと示された連続任用は可能であるということを自治体としてしっかりと受け止める必要があります。
 公募によらない更新可能年数は、自治体の判断で弾力的に運用されており、中央区では4回更新の5年目公募とのことですが、すでに都内では、文京区、世田谷区、板橋区、八王子市、狛江市で更新可能年数の上限はなく、今年度、調布市もなくしました。
 女性が多くを占める会計年度任用職員の処遇を改善し、正規雇用との均等待遇に向けて前進することは、ジェンダー平等実現のためにも大変重要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区でも会計年度任用職員の更新可能年数の上限を撤廃するよう求めますが、いかがですか。
 第二に、会計年度任用職員の処遇改善として、正規職員に準じて経験年数に応じた昇給を行うべきです。都内でも墨田区や港区、杉並区では昇給制度をもうけています。中央区でも実施することを求めますが、いかがですか。
 第三に、東京都では約3万人の会計年度任用職員の内、その約6割が教育庁に所属し、学校などで教育に携わる職員だとのことです。
 社会保険加入について、例えばスクールカウンセラーは、学期中は週20時間以上働いているにも係わらず、夏休み等を含め1年間で平均すると20時間未満になるとして、社会保険に加入させてもらえない現状がありますが、厚労省はこうした対応は不適切だとの見解を示しています。
 中央区で働いている会計年度任用職員の社会保険加入の基準と状況をお示しください。適正に加入できるよう徹底することを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。
 以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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