2024年区議会第二回定例会 一般質問

2024年6月21日

日本共産党中央区議会議員 小栗智恵子

【質問項目】

  1. 地方自治法改定について
  2. 都区制度と区長の政治姿勢について
  3. 築地市場跡地再開発について
  4. 住宅問題について
  5. 入船湯の存続について
  6. マイナンバーカードと保険証利用について
  7. 子ども子育て支援法改定について

 日本共産党の小栗智恵子です。私は、日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。なお再質問、再々質問をあらかじめ留保いたします。

1.地方自治法の改定について

 始めに地方自治法の改定について質問します。
 6月19日、地方自治法改定案が可決成立となりました。
 この法改定は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生、又は発生するおそれがある場合に、個別の法律に規定がなくても、各大臣が自治体に対し必要な指示を行なうことができる「指示権」を新たに導入するものです。
 災害や感染症を例示していますが、「その他」「これらに類する」など「事態」の範囲は曖昧で、発生の「おそれがある」など判断はすべて政府に委ねられ、国会にも諮らず恣意(しい)的運用が可能です。
 重大なのは、国による強制的な関与は基本的に認められないとされている自治事務にまで、国による強い関与の仕組みが設けられていることです。
 国の公共団体に対する権限が強化されることは、憲法第92条で保障された地方自治の本旨を侵害しかねません。全国知事会は、「事前に地方公共団体と十分な協議・調整を行うこと」「必要最小限度の範囲にすること」など意見書を出していますが、法案には「協議・調整」の規定や「必要最小限度」とする歯止めもありません。
 政府は安保3文書にもとづき、軍事利用のために空港・港湾などの整備をすすめており、これまでは自治体に自衛隊の優先使用を強制するものではないと説明してきましたが、改定案は、国が必要と判断すれば優先使用を指示することを可能にします。
 そこで質問します。今回の地方自治法の改定は、安保3文書にもとづく「戦争する国づくり」のために、地方自治体を動員するために使われる危険があるものだと考えます。区長の見解を求めます。ご答弁ください。

2.都区制度と区長の政治姿勢について

 次に、都区制度と区長の政治姿勢について質問します。
 長年の都区制度改革で、「特別区は身近な自治体として基本的な役割を担いつつ、広域自治体である東京都との特別な役割分担のもとに、相互に連携して東京大都市地域の行政に責任もつ」ことになっています。特別区は都知事の下請け機関ではありません。
 昨日から東京都知事選挙が告示されました。この都知事選をめぐり、5月末、都内の52人の自治体首長が、現職の小池百合子氏に出馬を要請したと報道され、その中に山本区長の名前もありました。中央区を代表する区長が、特定の候補者を支持し「出馬要請」することは、公正さを欠く行為ではないでしょうか。
 そこで質問します。なぜ出馬要請をすることになったのでしょうか。区長会会長から支援要請があったと伝えられていますが、こうした組織的な支援要請は公選法上も問題だと考えますがいかがですか。ご答弁ください。

3.築地市場跡地再開発について

 次に、築地市場跡地再開発について質問します。
 築地市場は、長年にわたる「移転反対」「現在地での再整備を」望む声を押し切って、2018年に豊洲に移転されました。それから6年、間に2020オリンピック・パラリンピックでの駐車場利用を挟んで、この4月、東京都が市場跡地19haの再開発事業予定者を決定し、三井不動産が代表企業となった11企業グループが「ワンパーク・ワンタウン」計画を発表しました。完成予定は2038年とのことです。
 改めて、築地市場の経過をふりかえってみると、私たち区議団がかねてから指摘してきたように、1980年代からJAPIC=社団法人日本プロジェクト産業協議会が提案してきた方向で、市場の移転や幹線道路、再開発計画が進んできたと実感します。
 JAPICは、日本列島改造計画が破綻した後、大都市開発を共通のテーマとして、鉄鋼、セメント、土木、建設業界などにより1979年に発足、83年に当時の通産、建設、運輸、国土の4省庁共管の社団法人となり、銀行や商社、調査機関等が加わって、現在の組織となりました。
 1981年、築地市場の大井移転に失敗した東京都は、大田市場建設方針を策定しましたが、同じ年にJAPICは、「築地は汐留とともに都心一等地として今後めったに発生しない大規模再開発用地」なので、「今後、晴海、銀座などの開発とリンクさせて情報発信基地か都市型高層住宅として活用すべき」という内容のプロジェクトを発表しています。また、JAPICは東京湾埋立地の開発構想も研究し、その後86年には臨海副都心開発として具体化され、臨海副都心と都心とを結ぶ環状2号線、首都高速晴海線など5本の幹線道路を中央区に通す計画が決まりました。
 1999年に知事に就任した石原慎太郎氏は、現在地再整備が始まっていたのに、移転に舵をきり、中央区、区議会、関係者の移転断固反対の声を聞かず、移転先を豊洲に決定しました。その豊洲が深刻な土壌汚染で大きな問題になる中、8年前の2016年、小池百合子氏が豊洲への移転について「いったん立ち止まる」と発言し、都知事になりました。翌17年には「築地を守る、豊洲はいかす」と述べて、築地に市場が戻るかのような幻想をいだかせたが結局、築地市場は2018年10月に豊洲へ移転されました。
 小池都政は、跡地再開発について、民間に丸投げし、都民の共有財産である都有地を、1㎡当たり月4500円という破格の賃料で70年間貸し出し、企業が利益を上げられる計画として総延床117万㎡となる巨大開発を進めようとしています。
 その事業予定者は、代表企業の三井不動産をはじめ、名だたる大企業が名を連ね、読売新聞グループ・朝日新聞社・トヨタ以外の7社はいずれもJAPICの正会員です。
 そこで質問します。
 築地市場の移転は、JAPICが当初から掲げていたプロジェクトの方向で、都心の一等地の都有地を、企業の儲けの場として提供するために行われたといえると考えますが、いかがですか。
 築地再開発は、市場跡地の都有地を、巨大イベント施設や超高層ビル群に変えるもので、「築地は守る」としていた小池知事の公約は影も形もありません。築地再開発の検討は非公開で進められ、三井不動産やトヨタなど大企業の利益のために都有地が差し出されようとしています。日本共産党は、この計画を白紙撤回し、都民参加で再検討すべきと考えます。区長の見解をお示しください。

4.住宅問題について

 次に住宅問題について質問します。
 23区のマンションの平均価格は1億2500万円となり、区内では中古のマンションも高くなって、賃貸マンションの家賃も引き上げられる中、中央区に住みたくても住めないと悲鳴が上がっています。戸建ての賃貸住宅を数軒まとめてマンション建設をするため立ち退きを迫られたり、貯えを削って家賃を払ってきたけれど、年金も目減りし、更新料も払えないなど、住宅問題の深刻な相談が後を絶ちません。都営住宅に何度申し込んでも当たらない。区立の高齢者住宅は空き家募集も少なくてなかなか入れないという声も多くなっています。
 また東京都での出生率が低下し、合計特殊出生率が0.99と1を下回った原因に、住宅費が高すぎるのも一因だと指摘されています。マンション価格が近隣3県と倍以上の開きがあり、「経済的な事情などから出産に結びついていない(都子ども政策連携室)」といわれています。
 そこで質問します。
 都営住宅の新築は25年間ゼロとなっています。晴海フラッグで大量のマンションが供給されましたが、もともと都有地であるにもかかわらず、都営住宅は1戸も供給されませんでした。区内、区外に都営住宅の増設を行なうよう東京都に強く求めるべきです。また、区としても、都営住宅の空き住戸が区内で何軒あるのかきちんと状況を把握し、空き家募集がスムーズに行われるよう求めます。お答えください。
 区としても、区立住宅や高齢者住宅の増設をはかること、借上げ住宅を拡大して、低廉な家賃で入れる住宅を増やすよう求めます。コミュニティファンドを活用した居住支援の拡充も求められます。さらに、他区で実施しているような立ち退きをせまられている世帯向けに緊急に入居できる住宅の確保も必要だと思います。
 住まいは人権です。住民の福祉の増進を本旨とする中央区として安心して住み続けられるよう責任をもっていくが求められます。若者、子育て世代の住宅費の負担を軽減する家賃補助制度も必要ではないでしょうか。
 それぞれご答弁ください。

 住宅問題に関連して、晴海フラッグの件について質問します。
 今年1月から入居が開始され、5月26日にはまちびらきがおこなわれた晴海フラッグですが、あるエリアでは購入者の4分の1が法人で、中には38戸購入した法人もあり、転売や賃貸に出すことが目的と見られるとNHK番組が報じました。
 ファミリー向けとうたいながら、申し込みの戸数に制限を付けず、転売禁止規定も設けずに販売し、転売の結果、価格が元値の1・5倍から2倍になり、一般世帯には手の届かない代物になっています。
 東京都は、選手村として利用するマンションを建設する民間企業には近隣地価の10分の1で土地を払い下げた一方、地元中央区には学校用地として2分の1、民間企業向けの5倍で売買契約しました。中央区はマンション1戸当たり100万円の開発協力金の徴収もタワマン以外の板状棟は免除しています。ここでも、晴海フラッグの事業者、三井不動産レジデンシャルを代表とする特定事業者に大サービスです。
 そこで質問します。東京都に対し、企業の利益を守るのでなく、住みたいと願う住民を守ること、事業者に対し転売禁止の規定を設けるよう申し入れることを求めます。
 また都が賃貸棟を借り上げて都営住宅として提供するなど、低廉な家賃で入居できるように都に要請するよう求めます。ご答弁ください。

5.入船湯の存続について

 次に、入船湯の存続について質問します。
 来年3月に廃止が発表された入船湯を、ぜひ存続させてほしいという声が広がっています。入船湯の利用者は入船周辺だけでなく、築地、明石町、新富など京橋地域はもちろん、日本橋や月島方面からの利用者や、在勤の利用者などみな「なくなったら困る」と何とか存続をと願っています。
 中央区は1991年に、それまであった銭湯がなくなり、ビルに建て替えることになった際、ビルの地下に公衆浴場をつくるよう支援をし、入船湯の家賃を支払い、公設浴場として維持してきました。これからも、公衆衛生、地域のコミュニティ、地域福祉の核となる公設浴場を区の責任で維持していくようを求めます。
 そこで質問します。
 入船湯について、行政懇談会や区長への手紙などでどのような声が届いていますか。
 入船湯を存続させる方法を再検討するよう求めます。ご答弁ください。

6.マイナンバーカードと保険証利用について

 次に、マイナンバーカードと保険証利用について質問します。
 厚労省の調査でも、マイナンバーカードで受診する「マイナ保険証」の利用率はわずか5・47%です。(24年3月)
 中央区では、今年2月の時点で、国民健康保険で5.6%、後期高齢者医療保険では2.9%とのことです。
 政府は「マイナ保険証」の利用率向上に躍起となり、5月から7月までマイナンバーカード保険証の利用促進を集中的に行う期間としました。これまでにも厚生労働省が、利用者を増やした医療機関に最大で20万円の一時金を支給する方針を打ち出しました。しかし、利用率が伸びていません。
 それなのに、岸田政権はマイナ保険証への一本化ありきで、現行保険証を12月2日に廃止する方針を変えようとしていません。しかし、社会保障審議会の部会で推進側の委員である日本医師会からも「12月2日までに大丈夫なのか」と懸念を示す意見が出ています。今年3月分の1か月だけでも、現行保険証の利用件数は全国で1億7千万件を超えています。現行保険証の廃止を強行すれば、大混乱に陥るのは必至です。
 そこで質問します。
 マイナンバーカードの取得者数・率とマイナ保険証の登録者数・率をお示しください。マイナ保険証の利用が広がらない理由をどうお考えですか。現行の保険証の廃止を延期すべきだと考えますが、いかがですか。
 政府は6月18日の犯罪対策閣僚会議で、携帯電話などの契約時に、本人確認をマイナンバーカードに一本化する方針を決定しました。建前は犯罪対策ですが、マイナンバーカードをIT企業などのもうけのタネに利用したいというのが目的です。取得は任意であるマイナンバーカードの強制は問題だと考えますが、いかがですか。
 それぞれご答弁ください。

7.子ども子育て支援法改定について

 最後に、子ども子育て支援法改定について質問します。
 6月5日、国会で子ども子育て支援法改定法案が可決・成立となりました。
 「こども未来戦略」に基づき、今後3年間に取り組む「加速化プラン」に盛り込まれた施策を実施するための法改正で、児童手当の拡充や出産等の経済的負担の軽減、保育士の配置基準の改善、共働き・共育ての推進など、実現が待たれていたものもあります。
 しかし問題は、必要とされる3・6兆円の財源を、徹底した歳出改革や、医療保険制度に上乗せ徴収する「支援金制度」でまかなうとしていることです。
 岸田首相は、支援金制度を導入しても、国民に新たな負担を求めるものではないと繰り返し説明してきましたが、それはまやかしです。医療・介護の給付が削減されれば、それに伴って利用者の自己負担は増加し、「支援金制度」も国民にとって負担増そのものです。
 そこで質問します。
 第1に、支援金は医療保険料に上乗せして徴収され、収入の低い加入者の多い国民健康保険のほうが保険料に対する支援金の負担増の割合が高くなります。フリーランスは国保に加入し支援金も徴収されますが、支援金を財源とする出生後の「休業支援給付」や、育児のための「時短就業の給付」は、雇用保険未加入のフリーランスは給付を受けることができません。国民に負担増と不公平を強いる支援金制度は問題だと考えますが、いかがですか。
 第2に、「こども誰でも通園制度」です。これは全国どこでも市町村が指定した施設にアプリを使って申し込み、生後6か月から満3才未満までの子どもが時間単位で利用できる制度です。
 保護者の就労を要件とせず、保育所等に通っていない子どもも含めて全ての子どもの育ちを応援するという理念は大切ですが、そうであるなら、諸外国では当たり前になっているように、親の就労の如何にかかわらず、全ての子どもたちが保育所を利用できるように、保育の必要性の要件を見直すべきです。
 誰でも通園制度で提供されるのは、法律上は「遊び及び生活の場の提供」であって「保育」ではありません。しかも利用する施設、月、曜日や時間を固定しない自由利用も認められ、さらに帰省先での利用なども想定し、居住地以外の都道府県をまたいだ利用も可能とされています。
 そこで質問します。
 保育施設等における死亡事故は0歳児で46%、1歳児では31%で最も多くなっています。入園からの日数別では、入園から30日目までが34%と、預けはじめが非常に多いことがわかっています。毎回違う施設に預けることが可能な自由利用は、重大事故のリスクにこどもたちをさらすことになりかねないと考えます。いかがですか。
 第3に、今年4月から保育士の配置基準が見直しとなり、保育士1人が担当する3歳児は20人から15人に、4、5歳児は30人から25人になりました。経過措置として当面従来の基準で運営することが認められています。
 保育士や保護者らでつくる「子どもたちにもう1人保育士を」全国保護者実行委員会の調査で、約1万2千の保育施設の状況が明らかになり、新たな基準通りの配置ができず、実施できる時期が不明とする保育施設は30%に上ったとのことです。
 そこで質問します。
 中央区内での保育施設で、区立、私立全園で、保育士配置は新しい基準通りできているかお答えください。
 全国的に見ても、3歳未満児の死亡事故が多いことから、3歳未満児の配置基準の改善は急務だと考えますが、いかがですか。ご答弁ください。

 以上で一回目の質問といたします。ご答弁をよろしくお願いします。

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