2024年区議会第一回定例会 一般質問

2024年2月28日

日本共産党中央区議会議員  奥村暁子

【質問項目】

  1. 防災対策について
  2. 高齢者の居場所について
  3. 子育て支援策について

 日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.防災対策について

 初めは防災対策についてです。
 区長の所信表明では、冒頭で元日に発生した能登半島地震に触れ、「常日頃からの備えが十分か点検・整備するとともに、『地域のことは地域で守る』という視点に立ち防災対策に万全を期して」いく、と述べられています。
 そこでお聞きします。
 この「地域のことは地域で守る」とは「共助」を指しているものだと思いますが、行政として「公助」を後景に追いやるようなことがあってはなりません。中央区民の95%はマンション住まいで、地域コミュニティ形成に課題がある中、こうした「共助」頼みや、経済的負担も大きい災害時の備えを「自助」努力で行うことには限界があると思いますが、いかがですか。所信表明の中で後述される「災害に強いまちづくり」という部分でも、「公助」という文言は一切ありませんが、公助の役割こそ重要だと思います。いかがですか。
 それぞれお答えください。

 次に「公助の役割」の発揮について具体的に伺います。
 所信表明にも述べられている防災拠点、いわゆる避難所やマンションへの非常用発電機の配備などは通信手段確保のためにも欠かせませんが、発電のための燃料の容量には限りがあります。また、エレベーターや空調機などを作動させるためには、こうした非常用発電機よりもさらに容量の大きい自家発電機が必要になります。
 タワーマンションなどでは、非常用の大型ディーゼル発電機を設置しているケースもありますが、発電機の使用可能な時間には限界があります。
 給水についても、停電時にはマンションの屋上などに備え付けられた受水槽に水圧ポンプで水を押し上げられず、蛇口から水は出ません。受水槽に溜まっていた分の水を使い切ってしまえば終わりです。直接、水道管がつながっているマンションでも上水道が止まってしまえば水は使えなくなります。
 中央区では人口の95%を占めるマンション住民に対し、在宅避難が推奨されていますが、長期間の在宅避難を支える体制はどうなっているのでしょうか。
 まずは地震から命を守ること、そして地震で助かった命が失われることがないよう災害関連死を引き起こさないことが重要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、区内の分譲マンション、賃貸マンションの数はそれぞれ何棟となっていますか。新耐震基準、旧耐震基準で建てられたマンションはそれぞれ何棟ですか。「地域防災計画」の素案では「令和7年度までに、耐震性が不十分な住宅の概ね解消を目指す」と書かれていますが、耐震化率の向上はどこまで進んでいますか。
 第二に、区は、木造建築物や木造以外の住宅やマンションの耐震補強工事に対して費用助成を行っています。建物の形態により工事費用の助成限度額は様々ですが、例えば木造建築物の場合は限度額300万円となっており、一般の人は工事費の2分の1、高齢者や身体障害者がいる世帯に対しては工事費の全額を助成しています。マンションだと限度額が賃貸1500万円、分譲3000万円で工事費の2分の1の助成などとなっています。こうした助成の拡充を求めますが、いかがですか。生活困窮世帯も高齢者世帯のように全額助成の対象とすることを求めますが、いかがですか。
 また、この制度の対象となる木造建築物は、1981年以前の旧耐震基準で建築した建物となっていますが、旧耐震基準の木造建築物は、現在何戸ありますか。今、23区中18区は、木造建築物の耐震補強工事の助成対象を2000年以前に建築したものとしています。中央区でも早急に基準年度を見直して対象を拡大することを求めますが、いかがですか。
 第三に、所信表明では、木造住宅に対する感震ブレーカーの無償配布など、我が党が求めてきた施策も予算化されており評価できる点もありますが、災害に備えるための支援をさらに拡充すべきだと思います。備蓄食料を生活困窮世帯に無償配布するなど、自助がたちゆかない方々への負担軽減策が必要だと思いますが、いかがですか。
 第四に、中央区は、防災組織の結成や防災マニュアルの作成などに取り組むマンションを、分譲、賃貸問わず「防災対策優良マンション」として認定し、防災資機材の支給や防災訓練の経費を助成しています。現在、105軒が認定されており、組み立て式仮設トイレやバルーン投光器、エレベーター内防災用キャビネットなどが30万円を限度に支給されていますが、さらなる認定優良マンションの推進と制度の拡充を求めますが、いかがですか。
 第五に、区内で自家発電機を備えているマンションはどの位ありますか。分譲マンション、賃貸マンション問わず、非常用自家発電機設置への補助を求めますが、いかがですか。また、防災拠点での非常用発電機の配備状況と運用計画はどのようになっていますか。
 第六に、分譲マンションへの防災対策として中央区都市整備公社が行っているエレベーター閉じ込め防止のための地震時管制運転装置設置や防災備蓄倉庫の設置への補助制度を広く周知し、利用促進をはかることを求めますがいかがですか。また、賃貸マンションも対象とすることを求めますが、いかがですか。
 第七に、超高層のタワマン、オフィスビル建設偏重のまちづくりは、災害時のリスクを高めます。エレベーターが停止すれば避難やその後の生活で階段使用が余儀なくされることをはじめ、ライフラインが止まった際のトイレやゴミの貯留問題、在宅避難が立ち行かなくなっても防災拠点での受け入れは困難だということなど課題は山積しています。防災面からも東京一極集中のまちづくりを見直していくことが必要だと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

 日本では災害そのものによる直接死に加えて、その後の災害関連死が多いことが特徴です。それを防ぐためには、在宅避難の支援強化と併せ、防災拠点の環境整備が重要です。
 日本と同様に自然災害が多いイタリアでは、トイレ、キッチン、ベッドの略である「TKB」が発災直後から各個人に提供される仕組みが確立されています。安心できる清潔なトイレ、暖かい食事、快適なベッドは人間的に暮らすために欠かせないもので、これらがしっかり整っていないと命を落とすことにつながります。
 イタリアのTKBを学ぶため、現地を視察したNPO法人日本トイレ研究所代表理事の加藤篤氏によると、イタリアでは災害時、被災者が避難所となる体育館などに入りきらない場合は、屋外に300人位の規模で家族ごとのテントを張り、こうしたテント村にコンテナ型のトイレカー、キッチンカー、シャワーカーが送り込まれる体制がとられます。
 トイレカーは5~10コンテナほど配置され、1つのトイレカーにはトイレ個室が4個室程度あります。7~15人に1個室あるという計算になり、日本における国のガイドラインよりもはるかに多い数で、しかもエアコンや手洗い用の洗面台も完備され、車イス用のトイレもあるそうです。
 食事については、イタリアに限らず欧米では避難所で食事を作ることが必須となっており、プロのシェフや調理トレーニングを受けた人が職能ボランティアとして調理にあたります。
 国際栄養情報センター国際災害栄養研究室室長の笠岡宣代氏の報告では、イタリアではコンテナ型のキッチンカーと食堂がセットで配備され、長テーブルと長イスも用意されます。パスタ、リゾット、スープ、肉や野菜などの温かい料理に加え、チーズ、アイスクリーム、コーヒーなども提供されますが、こうした栄養価の高い食事の費用は請求すると公費から支払われる仕組みとなっています。
 日本の避難所での食事は炭水化物が中心で、量および質ともに不十分で、ビタミン類が少ないことなどから深部静脈血栓症が高頻度に発症することも報告されており、栄養面の改善が必要です。
 ベッドについては、避難所・避難生活学会理事長の榛沢(はんざわ)和彦氏によると、体育館などの床に段ボールやマットを敷いて大勢の被災者が毛布で寝ているような避難所は、実は先進国では日本だけで、イタリアに限らず欧米の避難所では必ず簡易ベッドが準備され、またテントで家族ごとに避難生活をするのが一般的とのことです。
 簡易ベッドが用いられるようになったのは、第二次世界第戦中の1940年のロンドンで、防空壕が足りずに大勢の市民が地下鉄駅構内へと避難し、今の日本の避難所のように雑魚寝が続く中、肺塞栓症(はいそくせんしょう)、いわゆるエコノミー症候群で亡くなる人が前年比で6倍、肺炎で亡くなる人も2倍と増え、簡易ベッドの必要性が訴えられたことに始まります。
 簡易ベッドが準備された後、こうした疾患の増加がなくなったことは、今でもロンドン市博物館やロンドン交通博物館などでくり返し展示されているそうです。
 避難所ではいくら環境整備をし、土足禁止にしても大勢の人が行き来し、埃や塵も入ってきます。段ボールやマット、布団を敷いても床から冷気が伝わり、背中が冷えると脊髄神経も冷やされ、交感神経が刺激されて安眠できず血液が固まりやすくなり血栓ができることから、エコノミークラス症候群や心筋梗塞、脳梗塞などが起きやすくなります。こうした疾患を防ぐため、避難所・避難生活学会は簡易ベッド、特に冷気を遮断する効力が強い段ボールベッドの使用を提唱しています。
 こうして紹介したように、欧米、またTKBの本場イタリアでは、国として徹底的にヒトに主眼を置いた人道支援が柱となっています。快適なトイレ環境、暖かく美味しい食事、安心して眠れるベッドを整えることは、決して贅沢なことではありません。「災害時だからしょうがない、我慢するしかない」と被災者、国民はあきらめる必要はないのです。そうした支援策を準備しておくのが行政の責任ではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 第一に、避難生活を支えるため、コンテナカー方式のトイレカーやシャワーカー、キッチンカーの活用をすすめるべきだと思いますが、いかがですか。
 第二に、中央区で設置される仮設トイレの洋式、和式の別、バリアフリーの有無、それぞれの数についてお示しください。また、防災拠点でのトイレやマンホールトイレも合わせ、何人に1個の割合となっていますか。十分な数はあるのでしょうか。お示しください。
 第三に、災害時の学校の給食室の運用についてお示しください。また、中央区は自校方式となっていますが、他自治体の給食センターの活用の計画についてもお示しください。
 第四に、内閣府の「避難所運営ガイドライン」には段ボールベッドも含む簡易ベッドの使用について明記はされたものの、これまでの事例では設置まで発災後平均10日以上かかっているとのことです。段ボールベッドの備蓄状況と設置までの流れをお示しください。欧米並みに3日以内に設置できるよう整備が必要だと思いますが、いかがですか。
 第五に、災害時、交通が途絶えた場合でも、すぐに住民の支援活動などにあたるための職員確保が重要だと思いますが、職員住宅や区内在住の職員は何人いますか。職員住宅の拡充が必要だと思いますが、いかがですか。
 また、中央区では非正規職員が増加の一途を辿っていますが、会計年度任用職員など非正規雇用の方は災害時の参集要請に応じる義務はないため、正規職員を増やしていくことが防災上も必要だと思いますが、いかがですか。
 第六に、イタリアには市民安全省という常設の国家組織があり、災害対応には専門知識や技能をもったボランティアが全国に100万人規模で組織され、災害直後から稼動するシステムが構築されています。
 災害が発生すると、有給ボランティアとして各専門職が集合し、調理、電気整備やテント張りなどの対応にあたりますが、こうしたボランティアには発災時には最長3カ月の休暇を取って被災支援にあたることができるルールがあり、人件費は会社に対して政府が負担することになっているとのことです
 このように専門職をボランティアとして配置する仕組みはとても有効だと思います。国、東京都とも連携しながらボランティアを活用する仕組みを構築することを求めますが、いかがですか。イタリアではボランティアを前提として調理士免許を取得するための訓練も毎年実施されているそうですが、こうした職能訓練を取り入れる仕組みづくりも必要だと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

2.高齢者の居場所について

 次に高齢者の居場所について質問します。
 中央区は、高齢化率は低いものの、全体的な人口増加にともない、高齢者人口も増加しています。
 所信表明では「年齢を重ねても地域で自立した生活を送ることができるよう、生きがいや健康づくりなどの支援を強化して」いくとのことでした。
 昨年12月に、「ほっとプラザはるみ」を改修してつくられた「はるみらい」がオープンし、新たな地域コミュニティの拠点として運営されていますが、高齢者の居場所としての機能が十分とは言えません。多世代交流を促す役割も担っていますが、高齢者よりも子育て世代などに焦点を合わせた運用となっていることから、高齢者の居場所としての機能を充実させてほしいという声が地域から上がっています。
 この地域に「いきいき館」、いわゆる敬老館を整備してほしい、という声も以前からあります。晴海地域で高齢者が健康づくりや仲間づくり、生きがいづくりをしながら、憩える身近な空間を増やしていくことが求められます。
 そこでお聞きします。
 第一に、はるみフラッグの入居者も含んだ晴海地域全体での高齢者人口の推計はどのようになっていますか。今後、子育て世代が高齢化するなど将来的な高齢者人口の増加についてはどのように捉えていますか。
 第二に、敬老館では、マシントレーニングやフラダンス教室、オカリナ教室、ペン習字教室、パソコン相談などあらゆる行事は全て無料となっています。マッサージ師によるマッサージも大変な人気で抽選となっていますが、これも無料です。また、マッサージチェアや将棋なども自由に使え、お茶なども無料で提供されるなど、1日過ごせる施設となっています。こうした機能を「はるみらい」にも取り入れることを求めますが、いかがですか。
 第三に、中長期的な視野からも、晴海地域に敬老館を整備することを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

3.子育て支援策について

 次に子育て支援策について質問します。
 今、格差と貧困の拡大は社会問題となっており、比較的、高所得世帯が多いと見られている中央区でも、就学援助を受けている子どもは多くいます。例えば学用品費では、小学校児童の6.6%が、中学校生徒の20%が援助を受けています(2023年度版区政年鑑より)。
 所信表明では「子どもも親も笑顔が輝き、地域で安心して子育てができるまちの実現に向け、子育て支援サービスの充実」をはかっていくと述べられていますが、そのためにも格差是正として保護者負担の軽減をさらに拡充していくことが求められます。
 そこでお聞きします。
 第一に、学校給食費無償化についてです。新年度から東京都が給食費の2分の1の補助を行うとのことですが、全額補助を都に求めるべきだと思います。いかがですか。
 また港区や板橋区では、アレルギーや宗教上の理由からお弁当持参の子どもに対しても、小中学校での給食費相当分を助成することが決まりました。中央区でも給食費無償化の対象拡大を求めますが、いかがですか。
 第二に、品川区では、区立小中学校の児童・生徒約2万4000人を対象に、絵の具や習字セットなどの学用品について、所得制限を設けず全額無償化することを発表しました。中央区でもこうした学用品の無償化を実施することを求めますが、いかがですか。
 第三に、予算案では、卒業や成長に伴い着用しなくなった標準服の寄付を募り、譲渡する標準服リユース事業を始めるとあります。環境に対する意識啓発や行動変容の促進を図るとのことですが、保護者負担の軽減としての意義も大きいと思います。説明では、譲渡会を月1回開催、譲渡額は上着1着1500円程度、譲渡会場は京華スクエアとなっています。
 現在でも回収した標準服をPTAが無料配布している学校もあり、大変人気がありますが、新しく始まる標準服リユース事業でも無料譲渡とすることを求めますが、いかがですか。
 また、この間、我が党としても予算修正案などで提案してきた高すぎる標準服の半額補助を求めますが、いかがです。
 第四に、足立区では、統廃合した区立小学校跡地に、私立の不登校特例中学校を今年4月に開設し、保護者に対する授業料の一部助成も実施するとのことです。
 中央区でもこうした取組を実施することを求めますが、いかがですか。
 第五に、北区は、返済する必要のない給付型奨学金制度を独自に創設し、2025年度から実施することが、「北区教育ビジョン2024」(案)で発表されました。
 このビジョンの策定にあたり、0歳から中学校3年生までの子どもがいる保護者の方を対象として、北区の教育についてどのように感じているか調査する保護者向けアンケートと、児童・生徒向けのアンケートも実施されました。
 中央区も、「子育て支援に関するニーズ調査」の実施や「中央区教育振興基本計画2020」を策定しており、今後は「第三期子ども・子育て支援事業計画」の策定予定もありますが、こうした中で奨学金制度など教育負担軽減の必要性について、どのように受け止めていますか。北区のような奨学金制度の創設を求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。
 以上で1回目の質問を終わります。

ページトップへ▲