「議案第17号 中央区印鑑条例の一部を改正する条例」に対する反対意見

2023年2月28日 奥村暁子

 「議案第17号中央区印鑑条例の一部を改正する条例」に対する反対意見を述べます。
 本議案は「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」の施行等に伴い、印鑑登録証明書の交付申請について、移動端末設備を使用する方法の追加等をするものです。
 この法律は、民間・行政機関・独立行政法人と別々に制定されている3つの個人情報保護制を統合し、対象に地方自治体・地方独立行政法人を加え、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化しますが、そもそもこの法律に大きな問題があります。
 自治体は、国が示した解釈に従って制度の運用を求められますが、条例を定めた際の個人情報保護委員会への届出など自治体の条例づくりに委員会が口を挟める仕組みが導入されています。
 さらに、都道府県・政令市に特命加工情報制度、いわゆるオープンデータ化を義務化し、全自治体にオンライン結合=情報連携を禁止することは認めないとしています。
 これらは自治体の個人情報保護条例に縛りをかけるもので、地方自治の侵害といえます。
 こうした問題のある法律に伴い、今回、本議案が提案されています。
 現在、マイナンバーカードの利用者証明書用電子証明機能を利用し、区の電子計算組織と電気通信回線で接続されたコンビニに設置されている民間事業者設置の多機能端末機から住民票の写し及び印鑑登録証明書の交付がうけられるようになっていますが、同法律によりマイナンバーカードがスマートフォンにも搭載できるようになることから、本条例ではスマートフォンを使用する方法を追加します。
 政府は、「利便性」向上をアピールし、マイナンバーの情報連携、マイナンバーカードのカギ機能を使った「マイナポータル」を入り口とした情報連携によって、データをさらに集積しようとしていますが、今回のマイナンバーカードのスマホ搭載もそうした一環です。
 集積されたデータはオープンデータ化され、利活用へと回されますが、集積した情報は攻撃されやすく、漏洩の危険が高まります。
 個人情報の流出については、2018年12月に国税局の委託先においてマイナンバーが記載された約55万件の個人情報のデータ入力業務が違法に再委託されていたことが判明したことや、昨年8月には厚労省が収集する難病・小児慢性特定疾病患者の診断情報などのデータベースから、氏名・生年月日・住所など5640人分の個人情報の流出があったことが明らかになっています。
 作為、無作為に関わらず情報流出は起こり得ることであり、100%情報漏えいを防ぐ安全なシステムの構築は不可能です。
 米国ではマイナンバーにあたる社会保障番号(SSN)が民間も含め様々な分野で利用されていますが、「なりすまし」による年金不正受給や税金の不正還付などが後を絶たず、韓国でも住民登録番号のハッキングによるオンラインゲームやオンラインショッピングなどへの不正利用が問題になっています。
 一方、ドイツには納税者番号など行政分野別の番号はありますが、マイナンバーのような共通番号は憲法違反とされ存在せず、フランスにも社会保障番号はありますが共通番号としての利用をしないということが国の方針となっています。イギリスでは一時、国民の様々な個人情報をデジタル化し記録する登録簿の作成が始まりましたが、費用対効果やプライバシー侵害等が問題視され、2010年の政権交代により廃止されています。
 取得は国民の任意であるマイナンバーカードの宣伝・普及にばかり力を入れ、危険性はまともに伝えず、多くの国民の不安や疑問などは置き去りに、カードの利用拡大をすすめる政府の姿勢は問題です。個人情報を一元化し、徴税強化や社会保障費抑制をねらったり、民間事業者の「儲けのタネ」として利活用するために、守るべき個人情報を個人情報が流出するリスクを認めることはできません。
 以上の理由から、日本共産党中央区議団は「議案第17号中央区印鑑条例の一部を改正する条例」に反対します。

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