2022年 区議会第四回定例会 一般質問

2022年11月18日

日本共産党中央区議会議員  奥村暁子

【質問項目】

  1. マイナンバーカードの利活用について
  2. 保育の質の確保について
  3. 保育園の給食費について
  4. 学童クラブ整備について
  5. 教員不足について

 日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.マイナンバーカードの利活用について

 初めに、マイナンバーカードの利活用について質問します。
 岸田政権は、「新しい資本主義」の重要な柱の一つとして「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、地方の社会課題を解決するため、データ連携基盤の構築などの環境整備を国が主導し積極的に取り組むとしています。
 2030年度末までの5Gの人口カバー率99%達成やデジタル人材を2026年度末までに230万人育成することなどと併せ、マイナンバーカードについては「本人確認・認証機能を徹底的に利活用していく」とし、岸田政権は現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードに一体化させると表明しました。
 マイナンバーカードを持たない人の医療についてはこれから対策を考えるという無責任な姿勢で、認知症など手続きが困難な人たちへの対応も見えません。
 マイナンバーカードの取得は法律で任意とされています。国民皆保険のもとでほとんどの国民が持つ健康保険証をなくしてマイナンバーカードに統合するのは事実上の強制です。カードの普及が進まないのは、国民が必要としていないからであり、生活に欠かせない保険証と引き換えにマイナンバーカードの取得を迫るのは強権的です。
 デジタル庁が8~9月に行ったアンケート調査によると、マイナ保険証を申し込まない主な理由は「メリット・必要性を感じない」29%、「手続きが面倒」19・4%、「情報流出が怖い」14・7%などでした。
 医療現場からも保険証廃止に異論が出ています。
 マイナ保険証の表面に被保険者の情報は書いてないため、医療機関は専用の電子システムを導入し、端末機器で被保険者の資格をいちいち確認することを義務づけられます。現行保険証なら目視で確認できるのに費用と手間をかけた対応が必要となります。
 現場では「医療従事者はコロナで大変。こんな時にやる必要性を感じない」「ほとんどメリットのない制度。医療機関・患者双方に負担」などの声が上がっています。
 現場の実態を無視し、マイナンバーカード普及のために医療を利用することはあってはなりません。
 そこでお聞きします。
 第一に、マイナンバーカードを取得していない区民への対応はどうするおつもりですか。
 第二に、保険証廃止について中央区内の医療関係者の声をどのように聞き取っていますか。運用を既に開始している施設での声はどのようなものでしょうか。
 第三に、原則義務化を定めた「療養担当規則」(省令)に違反すると、保険医療機関等の指定取り消し事由となり、期日までに運用を開始できなければ廃業を選択するしかない医療機関も生まれることから危機感が広がっています。今後のコロナ拡大や感染症対応としてかかりつけ医や発熱外来を増やそうというときに、廃業を促すようなことは絶対にあってはならないと思いますが、いかがですか。
 第四に、国民の理解抜きに保険証廃止の期限を切るのは強制に他ならず、社会保障としての保健医療を守る立場の厚労省が義務化を持ち込み、罰則を示唆して医療現場に不安と混乱を持ち込むことはあってはなりません。政府に対し、見直しを求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

2.保育の質の確保について

 次に、保育の質の確保について質問します。
 中央区内で認可保育所2園、認証保育所2園の計4園を運営する株式会社グローバルキッズが、豊島区、大田区、江東区など都内区部で運営する16の保育施設で保育士の人数を水増しして区側に報告し、過大な運営費を不正に受給していたことが報道されました。
 実際より多い保育士らが配置されているように見せ掛けるため、職員名簿や出勤簿を偽造し、各区に報告しており、区側はこれに基づき運営費を支給していたとのことです。
 豊島区が昨年7月の指導検査で不正に気づき、これを受けて東京都が今年1月から同社の104施設に検査を実施したことがきっかけとなり発覚しましたが、その後、過大受給分については返還請求がされ、同社から改善報告書が提出された事から、東京都は認可を取り消すことなく改善状況を注視していくこととなりました。
 しかし、組織的、意図的に事実と異なる名簿を提出していたケースで、大変悪質であり、同社の保育所で勤務経験のある保育士は「人手不足が常態化している園では、名義貸しは暗黙の了解だった。施設を新設する中で、既存の保育所が大事にされていない感じがあり、辞める人もいた」と明かしていることは重大です。
 国や自治体が運営費を支給する私立認可保育所は原則、都道府県による年1回以上の実地検査が義務付けられていますが、東京都が実地検査を行ったのは、約3000施設ある認可保育所のうち2019年度で8・0%、コロナ禍の2020年度は4・3%と検査が追いついていないことも大問題です。
 「検査が入れば、不正はもっと発覚する可能性がある。ただ、待機児童対策を優先する行政が保育所の撤退を恐れ、強く出られないケースもあるのではないか」との専門家の指摘もあります。
 今回、中央区内でグローバルキッズが運営する保育園では不正はなかったとのことですが、区として指導検査を拡充するなどの対策が必要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、その後、江東区ではグローバルキッズについて、運営費だけでなく施設整備費についても請求すべきでない費用の上乗せ請求があったことが明らかになっています。グローバルキッズに限定せず、中央区内の全私立保育園に対し、不正受給などがないか幅広く調査することを求めますが、いかがですか。
 第二に、現在9人の中央区の巡回指導員をさらに拡充するなどし、調査体制を強化することが必要だと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

 今回の事件では、本来、人件費に充てるべき運営費を、人件費部分を抑えてほかに流用できる「弾力運用」も問題となっています。
 私立認可保育所の保育に必要な費用はすべて、自治体を通じて運営費として支給されますが、運営費は人件費などの必要経費をもとに算定され、本来は毎年使い切る資金です。ただし収入の3割は繰り越すことができ、積立金に回すことも可能です。自治体との事前協議し「取り崩し協議書」さえ通れば、繰越金と積立金を取り崩して事業拡大に充てたり、繰越金を本部経費に充てることができます。
 国は、運営費でもっとも額が大きい「委託費」について、8割を人件費に充てることを想定していますが、こうした「取り崩し協議書」を交わすなどして事業者が保育士の賃金を低くとどめた分が、事業拡大の経費や役員報酬などに回されるケースは少なくありません。
 労働条件が悪ければ保育士が定着せず、人手不足から今回のような不正が今後も起こりうるのではないでしょうか。保育の質を確保するためにも、保育士の処遇改善は必須です。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区内の認可保育所と区の間で、運営費を本部経費などに充てることを可能にする「取り崩し協議書」は交わされていますか。
 第二に、株式会社が運営する保育園では、「委託費」のうち人件費の占める割合がわずか3割台というケースもあり、こうしたことが黙認されることは問題だと思いますが、中央区での実態はどのようになっていますか。委託費の8割相当をきちんと保育士の給与に充てることが必要だと思いますが、いかがですか。
 第三に、国は都区部の保育士の給与を年間約440万円と想定して運営費を支給していますが、中央区の認可保育所の常勤保育士の給与はどれ位ですか。調査は行っていますか。
 第四に、保育従事者の処遇改善について、国が今年2月から月9000円の処遇改善加算を実施していますが、実際の平均賃上げ額はいくらとなっていますか。
 第五に、保育士の処遇改善のため、区独自の保育士加算の実施を求めますが、いかがですか。年間を通じて必要な保育士数を確保できるよう支援を行なうことが必要だと思いますが、いかがですか。
 第六に、保育の質確保のために、保育士の処遇改善にとどまらず、保育士配置基準を抜本的に引き上げるよう国に求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

3.保育園の給食費について

 次に、保育園の給食費について質問します。
 小中学校の学校給食費の無償化については、葛飾区が来年4月からの無償化を決定し、中野区議会では無償化を求める意見書が全会一致で採択されるなどの変化が生まれており、子育て世帯の教育費用や保育費用の負担軽減はまったなしの課題です。
 2019年10月から始まった3~5歳児の「幼児教育・保育の無償化」ですが、それと引き換えに、それまで無償だった保育園給食費の負担が新たに生まれた数少ない自治体が中央区となっています。
 それまで保育園の食材料費は、3~5歳の場合、副食費、いわゆるおかず代は国が決める保育費用(公費と保育料)に含まれており、保育費用に含まれない主食費については、東京都の場合、全ての区市町村で自治体が負担し、事実上、保護者が給食費を払うことはありませんでした。給食が保育における食育として重視され、保育の一環として位置づけられてきたからです。
 ところが、保育の無償化に伴い、内閣府は3~5歳児の食材料費を実費徴収するという方針を示しました。主食費については都内の自治体のほとんどがそれまで通り補助の継続を決定し、中央区も実費徴収していません。
 ところが副食費については、23区のうち19区が「もともと徴収してこなかった」ことや「保育の無償化の趣旨にあっている」「現場の事務負担が増える」ことなどを理由に実費徴収を行わない中、中央区は4500円を徴収しています。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区は、世帯の区民税額の所得割額の合算が13万円未満となる世帯に対し保育園給食費免除を行っていますが、給食費を払っているのは何人、全体の何割にあたりますか。
 第二に、自治体間の格差是正や保護者負担軽減のためにも、保育園給食費の徴収を行っていない19区のように中央区でも徴収しないことを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

4.学童クラブ整備について

 次に、学童クラブ整備について質問します。
 今後10年間を見据えた具体的な施策や取組み内容を示す新たな計画「中央区基本計画2023(仮称)」の策定作業が今、進められ、「中間のまとめ」が報告されていますが、その中で、子どもたちが安心して過ごせる放課後の居場所として、区立小学校への学童クラブ設置が掲げられています。
 区内各地で進行する市街地再開発事業などによる人口急増の影響で、保育園待機児童と並び、学童クラブ不足は大変深刻な問題とされてきました。
 学童クラブによっては本来の定員の1.5倍にまで定員を増やし、子どもたちを詰め込んでいますが、それでも今年4月1日現在で待機児童は243人で小学1年生でも待機児童がいる状況です。
 この間、日本共産党区議団は具体的に民間物件を示しながら児童館の増設を提案したり、23区のほとんどの自治体が学校の余裕教室を活用して学童クラブを設置しているのに、中央区での学童クラブ設置場所は全て児童館内となっていることから、学校内での設置を求めてきました。
 今回、学校内での設置について初めて言及があったのは重要だと思いますが、基本計画(案)には「プレディとの一体的な運用を図る」との文言もあり、どういう運営になるのか具体的には示されていません。
 そこでお聞きします。
 第一に、プレディは保育面積や保育士配置などの基準が一切ない施設で、学童クラブとは設置目的も機能も異なりますが、今回検討されている学校内で設置する学童クラブとは「児童福祉法」に基づき福祉保健部所管の施設となるのでしょうか。この機に、本来の定員基準をきちんと守り、面積基準や職員配置を向上させ、子どもたちに決め細やかな対応ができるよう改善することを求めますが、いかがですか。
 第二に、待機児童解消のため、一日も早く学校内での学童クラブ設置をすすめていただきたいと思いますが、今後の整備計画とスケジュールについてお示しください。

 学童クラブについては、基本計画(案)に民間学童クラブの誘致を進めることも明記されており、来年4月1日には区内初となる株式会社ベネッセスタイルケアを運営事業者とする民間学童クラブが月島3丁目に開設されることが福祉保健委員会で報告もされています。
 6月の区議会第二回定例会で、学童クラブの民間誘致の課題について質問した際の答弁は「収益性の低い事業であることから、地価の高い本区において、民間事業者のノウハウを活かし、いかに利用料や提供するサービスの内容を工夫しながら、継続して安定的に運営できるかが課題」というものでした。
 今回、応募のあった事業者は株式会社ベネッセスタイルケア1社のみで、保育料は月3万6000円に別途、入会金や施設維持費、延長料金、送迎料金等がかかります。公立学童クラブが無料だということを考えると、大変高額です。
 福祉施策とは本来、収益を出すことは目的ではないはずです。民間事業の誘致で待機児解消をめざすなら高い保育料を徴収しなくても運営できるように支援すべきです。
 そこでお聞きします。
 第一に、高額な保育料を支払える家庭だけが利用できる民間学童クラブの誘致は、公平な待機児童解消策とは言えないのではないでしょうか。
 第二に、中央区は学童クラブの運営経験もノウハウもあります。中央区がきちんと責任を持つ公設の学童クラブ整備による待機児童解消を求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

5.教員不足について

 次に、教員不足について質問します。
 教員志望者が減少し、本来配置されるべき教員が配置されず、代替教員も配置されない状況が全国で発生し、子どもたちの学びに影響が出でいます。
 文科省の調査でも2021年4月時点で教員不足は2558人に上り、始業日に学級担任がおらず、1カ月以上たっても代替教員が配置されない、副校長が担任となるなど、校内対応の限界やきめ細やかな指導の断念など深刻な事態が広がっています。
 10月の決算特別委員会の質疑では、中央区でも2022年度当初からの欠員が日本橋小学校で1名、年度途中からの産育休による欠員が中央小学校で1名と、計2名の教員不足の状況にあることが分かりました。
 本来配置されるべき教員が未配置などということはあってはならないことです早急な対応と来年度以降へ向けての確実な教員配置が必要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、教員の欠員は今、どのような状況になっていますか。中央区では区費による講師配置で補っているとのことですが、それは常勤講師ですか。非常勤講師ですか。
 第二に、正規の教員以外に現場の補助員などの不足は起きていないのでしょうか。
 第三に、新年度は配置できていたとしても、2学期、3学期になるにつれて産育休・病休取得者の替わりが見つからず、不足が深刻化していく事態が広がっていますが、今後、未配置とならないよう対応することを求めますが、いかがですか。
 第四に、今の教員不足は、小泉政権下の2001年にいわゆる「義務教育標準法」を改定して、正規教員1人という定数を複数の非正規教員に置き換えることを可能としたところに発端があります。区として、教員定数の改善と教員の加配を国、都に対して求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。
 以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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