議案第77号 中央区行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の一部を改正する条例の反対意見

奥村暁子

 議案第77号 中央区行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用及び特定個人情報の提供に関する条例の一部を改正する条例について反対意見を述べます。
 この議案は、心身障害者の医療費の助成に関する条例に基づく心身障害者の医療費の助成に関する事務において情報連携が可能な特定個人情報が追加されたこと等に伴い、個人番号を利用することができる事務について当該助成に関する事務の追加等をするものです。
 この条例改正により、地方税関係情報や障害者関係情報、生活保護関係情報、中国残留邦人等支援給付等の支給に関する情報などの特定個人情報が庁内連携及び外部連携により一元化されることになります。
 これまでにも、重度心身障害者手当や難病患者福祉手当の支給、精神通院医療費や結核患者医療費の助成などに関わって、「行政手続における特定の個人を識別するための番号」、いわゆるマイナンバーにより特定個人情報の一元的管理が進められてきましたが、本議案でさらに心身障害者の医療費の助成が加えられることになります。
 マイナンバー制度によって個人情報が集積されることは、区民にとっての利便性や行政事務の効率性以上に、徴税強化や社会保障給付抑制の目的に加え、民間事業者により個人情報が利活用されることや個人情報流出などの不利益があります。こうしたことは、憲法の人権保障やプライバシー権を侵害するなど看過できない問題です。
 国は、今後、介護保険など他のデータベースとの連携にもとりくみ、研究や新薬開発のために巨大なビッグデータが民間企業に提供されることも想定されるとしていますが、デジタル庁のワーキンググループで有識者からは「本人の望まない形で他の目的に利用しない担保が必要」「知らない内に行政等に監視されたり、不利益に利用されないことが重要」との意見が出されています。
 個人情報の流出については、2018年12月に国税局の委託先においてマイナンバーが記載された約55万件の個人情報のデータ入力業務が違法に再委託されていたことが判明したことや、今年8月には厚労省が収集する難病・小児慢性特定疾病患者の診断情報などのデータベースから、氏名・生年月日・住所など5640人分の個人情報の流出があったことが明らかになっています。
 米国ではマイナンバーにあたる社会保障番号(SSN)が民間も含め様々な分野で利用されていますが、「なりすまし」による年金不正受給や税金の不正還付などが後を絶たず、韓国でも住民登録番号のハッキングによるオンラインゲームやオンラインショッピングなどへの不正利用が問題になっています。
 一方、ドイツには納税者番号など行政分野別の番号はありますが、マイナンバーのような共通番号は憲法違反とされ存在しません。イギリスでは一時、国民の様々な個人情報をデジタル化し記録する登録簿の作成が始まりましたが、2010年の政権交代により廃止されています。
 作為、無作為に関わらず情報流出は起こり得ることであり、100%情報漏えいを防ぐ安全なシステムの構築は不可能です。情報が一元化されればされるほど利用価値は高まり、狙われるリスクは高まります。
 日本共産党区議団は、マイナンバー制度の法律に基づく条例制定(2015年9月)に反対し、その適用を拡大する条例改正にも反対してきました。
 個人情報保護と安全管理措置への懸念が払拭されないまま、心身障害者にも適用を拡大する本議案に賛成はできません。
 以上の理由により、日本共産党中央区議会議員団は、議案第77号に反対します。

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