令和3年度中央区各会計予算に対する日本共産党中央区議会議員団の態度表明を行ないます。
菅首相が、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を3月21日解除しましたが、感染者数は下げ止まり、東京都や既に解除した関西などで増加しています。感染力が強いとされる変異株の流行も拡大しています。
しかし、政府には大規模検査の戦略が欠けており、感染拡大の予兆をつかむモニタリング検査は1日1万件をめざすとしていますが、あまりに少なく、予兆の把握などおぼつかない水準です。
変異株についても、全陽性者の10%程度となっている検査率を40%に高める目標を掲げましたが、専門家からは50%以上でなければ実態をつかめないという指摘もあり、全例検査へと思い切って拡大することが急務です。
宣言解除後も政府は、飲食店を中心に営業時間の短縮要請を続けますが、事業規模に応じた協力金や持続化給付金、家賃支援給付金の再支給の要望には応えようとしません。
政府の方針には相変わらず医療機関の減収補填がないことも問題です。
東京都へ目を向ければ、都のコロナ対策の補正予算は99%が国からの支出金です。検査でも医療支援でも事業者への補償でも、ほとんどが国の施策の範囲内です。
石原都政以来、都立病院は16から8に半減し、保健所も6割近く減らされました。保健所の医師定数も1994年の56人から20人に減らし、小池都政でさらに15人まで減らされています。
菅政権と小池都政に共通するのは、科学的な感染対策を取らず、国民・都民に自己責任を押し付けていることです。
中央区に求められるのは、こうした国や都の悪政から区民生活を守り、ケアに手厚く、雇用と営業を支え、命と暮らしを大切にする役割を果たすことです。
日本共産党区議団が実施している「区民アンケート」には、「緑の多い広い土地で遊びたい」「住宅価格が高く購入をためらってしまう。若い世帯の定住のためにも補助などがあれば助かる」「住む家に困っている人や低所得の人のための住宅を建てて欲しい」「ほっとプラザはるみがなくなってしまって残念です」「将来にむけて災害や感染症に関する施設の設置。病院の設置も検討を」「他区に比べ中央区独自の施策が全くなくて残念です。ひとり親ですが他区の方が生活は苦しくなかったです」「中央区として地球環境保護、気候問題にどう取り組むのかよく分からず、子供世代へのツケを心配しています」など多くの声が寄せられています。
日本共産党区議団は、こうしたアンケートなどに寄せられた切実な要求や政策的な要望を集約し、昨年2020年10月19日に、869項目の「2021年度中央区予算編成に関する重点要望書」を区長に提出し、積極的に予算化するよう求めてきました。
本予算特別委員会の質疑では、問題点を指摘するとともに具体的な提案を行いました。さらに、区民の命と生活を守る施策を予算化するという基本に立って、生活保護世帯への歳末見舞金・夏期見舞金の復活や、高齢者施設でのPCR検査、介護施設や医療機関への支援金、区民への定額給付金の支給などを計上し、一般会計を37億7768万8千円増額する予算修正案を提案しましたが、残念ながら、わが党の修正案は否決されました。
日本共産党中央区議会議員団は、総合的に検討した結果、議案第1号「中央区一般会計予算」、議案第2号「国民健康保険事業会計予算」、議案第3号「介護保険事業会計予算」、議案第4号「後期高齢者医療会計予算」に反対します。なお、敬老大会の開催にかかわる議案第23号「令和3年度中央区一般会計補正予算」には賛成します。
区長提案の予算案には、住宅耐震補強工事等との併行改修工事費用助成や賀詞交歓会の廃止など、一定評価できる施策もありますが、抜本的な見直しが求められる多くの課題があると考えます。以下、具体的な課題について述べます。
まず、一般会計についてです。
第一に、いまや23区で中央区と品川区のみが徴収している情報公開手数料は、既に無料としている他区の状況も調査・確認しながら無料にすべきです。
第二に、「全指定管理者制度導入施設の状況一覧」によると、応募事業者が1社のみという施設が30施設中、12施設あり、複数の提案から選ぶプロポーザル方式とは呼べない指定管理者制度は見直すべきです。
第三に、環境に多大な負荷をかけ、また、新型コロナにより不動産需要の下落が懸念されるもとで、大規模再開発事業による超高層オフィスビルやタワーマンション建設は見直すべきです。
第四に、13ヘクタールの都有地が1㎡10万円以下という激安価格で払い下げられた晴海選手村は、後利用での2棟のタワーマンション建設計画の見直しを東京都及び事業者側に求めることと併せ、1戸あたり100万円の開発協力金は、選手の宿泊棟として使われる板状住宅部分からも徴収すべきです。
第五に、新型コロナウイルスの無症状感染者を保護し、リスクの高い高齢者などへの感染を広げないためにも、検査体制の拡充が求められます。感染力の強い変異株の拡大が懸念される中、ワクチンは万能ではないという事実に向き合い、検査を併行してすすめていくことが重要です。
第六に、新型コロナウイルス感染拡大のもと、営業が立ちゆかない事業者への家賃支援や、受診控え等で減収が続く医療機関に対しての減収補填に取り組むべきです。
第七に、認可保育園待機児童の一刻も早い解消のため、賃料の高さがネックとなり保育園開設をためらう事業者に対しては、その実態を調査した上で、適切に補助金を拡充していくことが求められます。
第八に、学童クラブ待機児童も深刻さを増しています。「苦渋の決断」として定員以上に子どもを詰め込むことは限界に達していることを直視し、学童クラブを増やす方向に舵をきるときです。
第九に、4月からの児童・生徒への1人1台のタブレット配布に関しては、教員負担軽減のためICT支援員を適宜拡充していくことや、子どもたちの健康を守るため、ブルーライトをカットする資機材の整備をすすめるべきです。
次は、特別会計についてです。
国民健康保険料は、2021年度も0.42%の値上げが予定されています。
モデルケースの試算では、「世帯主(40歳)+配偶者(40歳・収入なし)+子ども(10歳)」という3人家族で、年収200万円の場合の保険料は、25万1591円と、年収の12%を超えてしまいます。年収300万円以上の世帯も1割を超える保険料となり、保険料が家計に重くのしかかります。
特別区として、一般財源をさらに投入するなどの努力を行い、保険料そのものを引き下げていくことが必要です。
介護保険では、厚労省が省令を改正し(2021年4月1日施行)、要支援が要介護に進行しても、本人が希望し、区市町村が認めれば、いわゆるボランティアの活用などによる「総合事業の訪問・通所型サービス」を継続的に利用可能だとしました。しかし、これには「要介護者から介護給付を外す布石ではないのか」等の批判が噴出し、厚労省は、全面的な介護給付外しは一旦見送りました。
要介護者は日常生活すべてに綿密なサポートが必要です。介護保険制度を改善し、必要な介護サービスを提供できるようにすべきです。
後期高齢者医療では、2022年度から、原則1割だった窓口負担を2割にする制度改定を行おうとしています。
すでに、単身で年収383万円以上、夫婦で520万円以上の高齢者は3割負担となっていますが、新たに単身で年収200万円以上、夫妻で年収320万円以上の高齢者が2割負担となり、75歳以上の高齢者の20%にあたる人の窓口負担が2倍になってしまいます。
今でも、高齢者の年収に占める窓口負担の割合は高く、85歳以上は30~40代の5倍という状況であり、受診控えが広がっています。減らし続けてきた国庫負担を元に戻し、さらに増額もして、医療制度をしっかり支えることが求められます。
以上、各会計予算案に対する反対理由と主な課題を述べ、日本共産党区議団の態度表明を終わります。