2020年 区議会第二回定例会 一般質問

2020年6月22日

日本共産党中央区議会議員 奥村暁子

【質問項目】

  1. 「ポストコロナ」の社会のあり方について
  2. 医療体制の拡充について
  3. 生活支援について
  4. 区内事業者への支援について
  5. 子どもたちの学びと安全の保障について

 日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.「ポストコロナ」の社会のあり方について

 はじめに、「ポストコロナ」の社会のあり方について質問します。
 世界で猛威をふるう新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が仕事と住まいを失い、命の危機にさらされています。コロナ発生で様々な世の中の問題が浮かび上がる中、「日本と世界のあり方はこれでいいのか」ということが根本から問い直される状況となっています。
 すべてを市場原理にまかせて、資本の利潤を最大化していこう、あらゆるものを民営化していこうという新自由主義の破綻が、今度のパンデミックによってはっきりしたのではないでしょうか。
 欧州ではEU(欧州連合)によって医療費削減などの緊縮政策を押し付けられた国々が大きな犠牲を強いられました。
 日本を考えてみても、「構造改革」の掛け声のもと、医療費削減政策が続けられ、急性期のベッド削減や公立・公的病院の統廃合、保健所が減らされていくといった中で、医療が逼迫し、今回のような危機に対して脆弱な状態をつくりだしました。
 雇用では、労働法制の規制緩和を続け、「使い捨て労働」を広げ、人間らしく働けるルールが壊された結果、今、コロナ禍で、派遣やパートで働く人々の雇い止めという問題が噴き出しています。
 新自由主義による社会保障・福祉の切り捨て路線と、労働法制の規制緩和路線を転換していくことが強く求められていると思います。
 経済全体も、これまでのような、一方で内需・家計に犠牲を負わせながら、もっぱら外需に依存し、さらには、医療・介護などのケアに必要な物資や食料、エネルギーをも海外に頼ってきたあり方を、この機会に見直すべきだと考えます。
 また、今度のパンデミックは、新自由主義の破綻とともに、資本主義という体制そのものが問われる問題でもあります。
 「格差拡大」と「環境破壊」という2つの資本主義の矛盾の集中点がパンデミックとして顕在化、激化しているというのが現状ではないでしょうか。
 一つ目の「格差拡大」という点では、感染症により一番の犠牲になっているのは貧困のもとに置かれている人々で、アメリカでは黒人やヒスパニックの人々のなかで死者が多く、日本でも経済的・社会的に弱い立場の人々により大きな犠牲が強いられています。先進国の内部だけでなく、先進国と途上国の格差拡大も大きな問題です。
 二つ目の「環境破壊」という点では、資本主義のもとでの乱開発がパンデミックに深くかかわっています。人間による無秩序な生態系への侵入や、環境破壊によって動物と人間の距離が縮まることで、動物がもっていたウイルスが人間にうつったり、地球温暖化によって住む場所を奪われた動物が人間と接触することにより新しい感染症が出現するということは、多くの専門家が共通して指摘しています。
 人類の歴史のなかで、感染症の流行は、人類が定住生活を始めたとき以来のものと言われています。ただ、この半世紀位でエイズやエボラ出血熱、SARSなど新しい感染症が次々と出現しています。
 厚生労働省によれば、ここ30年の間に少なくとも30の感染症が次々と発見されています。
 環境破壊を顧みることのない開発優先の利潤第一主義を変えなければ、新型コロナを収束させたとしても、次のより危険なパンデミックに襲われる可能性を考えなければなりません。
 新型コロナウイルスを収束させ、命と暮らしを守り抜いた先には、前の社会に戻るのでなく、日本でも世界でも、よりよい社会をつくっていく「ポストコロナ」の考え方が必要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、ポストコロナの社会として、新自由主義による社会保障・福祉の切り捨て路線を転換して、社会保障・福祉に手厚い国をつくる、また、労働法制の規制緩和路線を転換して、人間らしい労働のルールをしっかりつくりあげていくことが必要だと思いますが、いかがですか。
 第二に、感染症に対応できる社会をつくるために、外需依存ではなく、内需・家計を経済政策の軸にすえ、人間の命にとって必要不可欠なものは自分の国でつくる、という経済への転換が求められていると思いますが、いかがですか。
 第三に、人が集中し、感染症蔓延のリスクを伴う一極集中型の過密なまちづくりから、分散型のまちづくりへの転換が、ポストコロナの都市開発として必要だと思います。環境に負荷をかける大規模開発を見直す必要があると思いますが、いかがですか。
 第四に、在宅でのテレワークが生活に定着する中、職住接近の必要性がなくなり、地方居住への関心が高まっています。また、経済状況に明るい兆しも見えず、インバウンドも落ち込み、オフィスもマンションも供給過多となる中、巨大なタワー型マンションやオフィスビル、コンファレンスセンター、ホテルなどの複合施設を建設する大規模市街地再開発に税金を投入することは、区民の理解を得られないと思いますが、いかがですか。
 第五に、市街地再開発事業に毎年かけられる莫大な予算を、コロナ対策に振り分けるべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

2.医療体制の拡充について

 次に、区の新型コロナウイルス対策について、順次、質問します。
 初めは医療体制の拡充についてです。
 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、日本では4月7日に発動された緊急事態宣言が5月25日に解除され、長らく休校が続いた学校再開や飲食店の営業再開がすすんでいます。今後は感染抑止をしながら、経済・社会活動を段階的にすすめていかなければなりません。
 日本医師会の横倉義武会長は「競争や効率重視の新自由主義の影響が医療機関にも及んでいる」と指摘し、「感染症が流行したときに対応できる病床を維持しておくべき」「バブル崩壊後の行政改革で保健所は半分近くに減少した。職員数も減り、保健所の皆さんは今回、大変苦労された。削減しすぎたのはよくなかった」などと発言しています。
 ウイルスによる市中感染は続いており、国民に「新しい生活様式」をよびかけるだけでなく、医療と検査を抜本的に強化することが求められます。
 そこでお聞きします。
 第一に、広島、岩手、愛知など18道県の知事が、感染拡大を防止しながら経済・社会活動を正常化するための「緊急提言」を発表しました。これまでの「受動的な検査」を改め、「積極的感染拡大防止戦略」に転換することを提言しています。無症状者も含め、検査対象を適切かつ大規模に拡大し、感染者を早期発見するため、PCR検査や抗原検査、抗体検査の拡充を、国、東京都に強く求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 第二に、中央区としても、現在、佃の中央区休日応急診療所で行っているPCR検査についての周知を、区HPや区のお知らせ、町会への周知にとどまらず、さらに徹底することを求めますが、いかがですか。また、1日の検査数の定数は30件と設定されているものの、現在、それを満たさず余裕がある状況となっています。こうした余裕分で、区内の介護や医療の施設で働く職員や教員、保育士など人と接触の多い方たちにPCR検査を実施することを求めますが、いかがですか。
 第三に、医療費削減・社会保障費抑制路線のもと、日本全国で保健所はこの30年間で850カ所から472カ所へと約半分に減り、職員定員は7000人も減らされました。東京都でも71カ所あったものが、現在は31カ所、43%にまで削減されています。
 1994年に保健所法が地域保健法に改定された後、1997年に地域保健法が全面実施される中で、中央区にも元々、2カ所にあった保健所が、2001年に明石町の中央区保健所1カ所に統合され、日本橋と月島の2カ所に保健センターが設置されるという改変が行われました。今後、晴海にも保健センターがつくられる予定ですが、公衆衛生の業務を担うのは保健所です。今後の感染症対策として、また人口増に対応するためにも保健所を増設し、職員を増やしていくことが必要だと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

3.生活支援について

 次に、生活支援について質問します。
 コロナ危機のもとで日本経済は戦後最悪という危機に直面し、国民のくらしと雇用は大きく脅かされ、解雇や雇い止めなどによる生活困窮が広がっています。
 全国400万世帯にのぼるひとり親世帯でも、とりわけ非正規など不安定な雇用状況にある家庭や、高い学費に苦しむ学生、所得の少ない高齢者世帯などの生活と健康を守る支援が急務です。
 そこでお聞きします。
 第一に、中央区では、生活保護の4月の申請数が昨年の9件から29件へと約3倍に、5月の申請数も昨年の12件から21件へと約2倍となっており、今後も増加が見込まれます。生活保護は権利だということを広く周知し、必要な人は速やかに申請するよう促すこと、また、生活保護を申請させない「水際作戦」をとることなく速やかに受給を開始することを求めますが、いかがですか。
 第二に、小金井市では、自宅にエアコンのない65歳以上の高齢者のみの世帯に5万円を限度に冷房機器購入費の助成を、荒川区では、省エネ型エアコン購入に対して区内店舗で購入した場合3万円の助成などを行うとしています。厚労省は、昨年から、生活保護を初めて受給する方などに限定してエアコン購入費を支給していますが、以前から生活保護が受給されているため、対象外となっている区民の方からは「障害を持つ子どもがいるので心配。命に係わることなのに。何とかしてほしい」との声が寄せられています。
 コロナ禍で多くの方が外出を控え、自宅で過ごすことを余儀なくされる中、熱中症対策として、また生活支援として、エアコン設置への助成を拡充することを求めますが、いかがですか。
 第三に、コロナ危機による学生生活の危機は深刻ですが、政府の「学生支援給付金」の対象は43万人で、学生のわずか1割にしか届かず、「5人に1人の学生が退学を検討」しているという調査もあります。
 八王子市は、学生への支援策として、新型コロナの影響でアルバイトの収入が減少した学生で、国の「学生支援給付金」の対象から外れた学生を対象に1人10万円を支給する制度を始めます。また、学生や生活に困窮している若者を新たに雇用した事業者に対し、1人当たり月5万円、一社10人までで6カ月間の賃金補助を行う制度も同時に始めます。
 足立区では、区の育英資金を受けている学生を対象に、生活費として10万円を支給し、無利子の奨学金を随時受け付けることも新規に実施します。
 学生が学業をあきらめることなく学び続けられるよう、中央区でもこうした支援策を講じることを求めますが、いかがですか。
 第四に、2019年度、中央区で就学援助を受けている小学校の児童は644人で全体の約9%、中学校の生徒では319人で全体の約22%と、多くの子どもたちが援助をうけています。就学援助については、今年度は前年度所得に係わらず、コロナの影響で所得が減少した世帯も対象とすることを求めますが、いかがですか。
 第五に、学校給食について、世田谷区では就学援助受給世帯に対して、休校期間中の「給食費」相当分の支給をするとしており、江戸川区も区内全ての小中学生の給食費を1学期の間は無償とします。中央区でもこうした施策の実施を求めますが、いかがですか。
 第六に、ひとり親世帯への支援として、目黒区など、児童扶養手当受給世帯に対し独自に5万円を支給する自治体が広がる中、ようやく国も第2次補正予算にひとり親家庭への支援策を盛り込みました。 
 中央区もこうした国の予算を使い5万円の支給を始めますが、ひとり親世帯への支援にさらに力を注ぐべきです。中央区では今年度から、家庭で余っている食品を持ち寄り、寄付できるフードドライブの窓口が設置されますが、早急にこの施策を実施し、ひとり親世帯や生活困窮世帯にいち早く配布することを求めますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

4.区内事業者への支援について

 次に、区内事業者への支援について質問します。
 コロナ禍のもと、消費不況の長期化が明らかとなる数字が政府からも次々と発表されており、リーマン・ショック後を上回る景気後退となるとの見方が強まっています。
 新型コロナウイルス感染拡大による営業自粛などによって、全国で約600万人が休業を強いられましたが、飲食店などは飛まつ防止や身体的距離を保ちながらの営業は難しく、「開けても地獄、閉めても地獄」という厳しい状況が続いています。店舗の閉店にとどまらず、経営破綻する企業も増加しています。
 民間信用調査機関の東京商工リサーチによると、新型コロナを原因に経営破綻した企業は6月10日時点で235社で、このうち飲食業は36社にのぼりますが、5月中は新型コロナの影響で裁判所の破産申し立て業務が滞っていましたが、通常時に戻れば、倒産件数は今後さらに増えていくと見られています。
 中央区が実施した4月実施分の景気動向調査を見ても、現状判断DI、先行き判断DI、ともにリーマン・ショック後を下回っており、現場で働く方の声が紹介されていますが、「外出自粛要請のため、区内の繁華街が壊滅的ダメージを受けている」「訪日外国人客の激減を含めて、現在はなすすべがない」「世界同時的にドミノ倒しのように景気は減速する」など、非常にシビアなものです。
 区内事業者の方からは「特別定額給付金も持続化給付金も雇用調整助成金も、何もかも届かず、もう限界」「食材を卸している飲食店の閉鎖が相次ぎ、このままでは連鎖倒産してしまう」「毎晩眠れない日々が続いている」「真綿で首を絞められているよう」など悲痛な相談が寄せられています。
 強力な経済対策を実行し、中央区の事業者を守ることがいよいよ重要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、区内事業者の倒産や廃業の影響が、今後、どのように広がるとお考えですか。また、区長は区内事業者の声をどのように聞き取っていますか。
 第二に、区内事業者の方から「家賃などの固定費の支払いが重くのしかかっている」という声が寄せられています。小金井市は、前年同月比で15%以上減収している市内中小業者を対象に、家賃補助として20万円を支給しています。また、新宿区では、店舗の賃借人が事業を継続できるよう、家主に対して5万円を限度に家賃減額助成を行っています。中央区でもこうした家賃補助の施策が必要だと思いますが、いかがですか。
 第三に、昭島市では、アプリを使って先払いの食事代の20%を補助し、コロナ収束後にお店を訪れることで飲食店を応援する「外食産業等応援前払い促進事業」を実施します。飲食店が多い中央区でも必要な施策だと思いますが、いかがですか。
 第四に、新宿区では休業に追い込まれたライブハウスや劇場などが、施設で撮影した演奏や演劇などを動画配信する場合、その制作費について50万円を上限に制作費の90%を助成することを決めました。 
 また、杉並区も、劇場やライブハウス、ホールなどの運営法人に対して1施設当たり40万円を支給することや、各種公演や展示会などの文化・芸術活動を行う個人や団体に対し、最大30万円を支援するとしています。中央区内には、銀座を中心にライブ・レストランや画廊などが数多くありますが、こうした文化・芸術分野に対し、区として助成することが必要だと思いますが、いかがですか。
 第五に、消費税減税は、コロナ危機で痛めつけられている家計を助け、低所得者や小規模な事業者への大きな支援となります。消費税を5%に減税することを、国に強く求めるべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。

5.子どもたちの学びと安全の保障について

 次に、子どもたちの学びと安全の保障について質問します。
 新型コロナウイルスによる約3カ月の休校によって、かつてない学習の遅れと格差が生まれていますが、例年通りの授業をしようと詰め込みを行うと子どもに新たなストレスを与えてしまうおそれがあります。  
 日本教育学会は、5月22日、学びを保障し、ストレスや悩みに応える学校づくりのため教員10万人増とスタッフの大幅増員が必要だとする提言を発表しました。
 全国的には、教員採用試験の受験者約13万7000人のうち採用者数は約3万7000人で、教員免許状は取得していても、採用されなかった多くの若い方々がいます。また、教職の定年を迎えた約20万人のうち、教職についていない方が約10万人いますが、こうした潜在的に教職につける人を、教員免許更新制を凍結するなどして確保することも大事です。処遇改善を行い、将来の見通しも立つようにすれば教員を大幅に増やすことは十分に可能ではないでしょうか。
 また、教員の大幅増は学校での感染拡大を防止するうえでも必要不可欠です。
 政府の専門家会議は「身体的距離の確保」として「人との間隔はできるだけ2メートル(最低1メートル)を空けること」をよびかけており、文部科学省が発表した「衛生管理マニュアル」にある教室内の席配置の図でも、2メートルの間隔を取るには1クラス20人程度に抑えることが必要になることが分かります。しかし、「40人学級」では2メートルはおろか、1メートル空けることも不可能です。子どもたちが長い時間を過ごす教室を、専門家会議が提唱する「身体的距離の確保」の例外にしていいのでしょうか。
 子どもたちの健康をまもりながら、一人ひとりに丁寧に寄り添う手厚く柔軟な教育をすすめるため、教員の大幅増による少人数学級実施に、このコロナ禍を機に大きく踏み出すことが必要です。
 そこでお聞きします。
 第一に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを増員し、全児童・生徒への面談を実施するなど、子どもたちの心のケアを強化することが必要だと思いますが、いかがですか。
 第二に、身体的距離を確保するために、どういった対策を考えていますか。
 第三に、子どもたちの豊かな学びを保障し、健康をまもるためにも少人数学級を実施すべきだと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。
 以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

ページトップへ▲