2019年11月25日
日本共産党中央区議会議員 奥村暁子
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日本共産党の奥村暁子です。日本共産党中央区議会議員団を代表して質問します。答弁によっては、再質問、再々質問を留保させていただきます。
初めに環境問題についてお聞きします。
今、地球的規模での気候変動がきわめて深刻な事態となっています。
今年9月23日に開かれた「国連気候行動サミット」で、16歳のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが「人びとは苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている」と世界に訴えたことは、大きな反響を呼びました。
2015年に採択、2016年に発効され、本格的な運用が2020年と迫っている温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える目標を設定し、21世紀後半までに人間活動による温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする方向性を打ち出しました。
1.5度の上昇であっても、深刻な熱波、嵐、水不足、山林火災、食料生産の不安定化などが生じるとされていますが、現在提出されている各国の目標の合計では、21世紀末には約3度の気温上昇が起こると予測され、そうなった場合の破壊的影響ははかりしれないものがあります。
9月25日には、科学者らでつくる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)も、温暖化によって海面上昇の速度が上がっており、高潮や巨大台風による沿岸部の被害がふえる危険などを予測した特別報告書を公表し、強い警鐘を鳴らしています。
気候変動から人類の未来を守るため早期に「温室効果ガス排出ゼロ」を実現する本気の行動は待ったなしにも係わらず、日本政府の姿勢は後ろ向きです。
日本は温室効果ガスの排出量を2030年度に、2013年比で26%減らす目標を掲げていますが、この目標自体がきわめて低く、主要国では最低レベルのうえに、目標上積みに応じようとしないことに批判が高まっています。
イギリスとカナダの主導で立ち上げた「脱石炭連盟」には現在、30カ国が参加し、欧州諸国では期限を設けて石炭火力発電所の全廃をめざしています。一方、日本は温室効果ガスの排出が突出して多い「石炭火力発電」を「ベースロード(基幹電源)」に位置づけて日本国内での新増設を認め、逆行しています。海外での新設計画に資金援助をしていることにも批判が高まっています。
この姿勢では、世界にも地球の未来にも責任は果たせません。
そこでお聞きします。
第一に、区長は地球的規模での気候変動についてどうお考えですか。温暖化対策の必要性をどのようにお考えですか。国に対し、本気の地球温暖化対策に取り組むよう求めるべきと考えますが、いかがですか。お答えください。
第二に、中央区は、温室効果ガス排出量を京都議定書で定めた基準年度である1990年から約1.5倍に増加させています。住宅や業務ビルで延べ床面積が増加したことが主な要因とされており、23区全体でも増加していますが、中央区の増加率は23区全体の増加率と比較しても約2倍の伸び率です(オール東京62市区町村共同事業「みどり東京・温暖化防止プロジェクト」2019年3月策定の資料より)。中央区が、環境に負荷をかけている責任は大きいと思いますが、いかがですか。
第三に、区は地球温暖化防止に寄与する事業として、檜原村に46.7ヘクタールの「中央区の森」を確保し、森林保全活動を実施していますが、この森が吸収するCO2量は、中央区全体から排出されるCO2量の10万分の1にも届きません。大事な事業ではあるものの、区内で排出されるCO2量とは残念ながら比較になりません。
区内でさかんに行われる巨大な市街地再開発事業により、建設工事の際のCO2排出に加え、現在の建物よりも建替え後の方がより巨大になり、延べ床面積が拡大することでCO2排出量は増加しています。今からでも建物のボリュームを抑えることに舵をきり、区内でのCO2排出量を抑えるべきだと思いますが、いかがですか。
第四に、中央区の緑被率をあげ、CO2吸収量を増やすため、区内の街路樹などはCO2吸収量が大きい樹木を増やしていくことを求めますが、いかがですか。
第五に、中央区は現在、エアコンやLEDランプなど省エネルギー機器を導入する中小業者への助成事業の他に、CO2削減の成果をあげた事業所に対する商工業融資の優遇や、区が発注する工事の入札の際に加点するなどインセンティブも得られる「中央エコアクト」事業をすすめています。こうした施策のさらなる拡充を求めますが、いかがですか。
第六に、区所有の建物は98ありますが、そのなかで自然エネルギー設備を設置している施設は、太陽光発電が中央区保健所など20施設、風力発電は中央小学校など5施設の計25施設となっています(2019年10月8日時点、決特資料より)。区施設の建替や改修などの際に、自然エネルギー設備設置をもっと増やしていくことを求めますが、いかがですか。
第七に、中央区として「気候の非常事態宣言」を公表し、温室効果ガスのゼロエミッションを達成する目標を立て、持続可能消費の推進策の計画を実施することを求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次は豪雨災害への対策についてです。
地球温暖化の影響により、日本では豪雨災害の規模が年々拡大し、深刻さを増しています。
9月に台風15号、10月に台風19号と立て続けに大型で強い台風が上陸し、台風19号では、多摩川の増水により下水管を通じて逆流した水が地上に噴出しました。神奈川県武蔵小杉駅近くの47階建て643戸のタワーマンションが浸水し、地下3階に設置されていた電気系統の設備が浸水したことにより、停電や断水が続き、エレベーターも止まるなどライフラインが途絶え、大問題となっています。
市街地に降った雨が、短時間で排水路や下水管に一挙に流入し、雨水処理能力を超えてあふれる、あるいは川の水位が上昇して雨水をポンプで川に流せずに、市街地の建物や土地、道路などが浸水する内水氾濫はいつどこで起きるか予測できません。
大都市での水害リスクをどう低減させるかは、地球温暖化ストップの取組みと併せ待ったなしの課題であり、多くの超高層ビル、タワーマンションを抱える中央区でも決して人ごとではありません。
そこでお聞きします。
第一に、頻発している豪雨災害などに備え、区内マンションの止水板設備の有無など水害対策の総点検をすすめるべきだと思いますが、いかがですか。
第二に、地下に電気系統の設備を設置しているマンションの実態調査を早急に実施することを求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
豪雨災害時や津波・高潮が発生した際、遠くまで水平移動するより垂直避難をすすめることが重要です。1・2階に住んでいる住民がマンションやオフィスビルに逃げ込めるような対策が必要ではないでしょうか。
そこでお聞きします。
第一に、マンションやオフィスビルを「一時避難ビル」「津波避難ビル」に区が指定するなど体制を整備することが必要だと思いますが、現在の状況と今後の計画はどのようになっていますか。
第二に、災害時に備え、地域住民・町会とマンションやオフィスビルの協力体制が速やかに構築できるよう、区が指導することを求めますが、現在の状況と今後の計画はどのようになっていますか。
それぞれお答えください。
次は共同建て替えについてです。
地球環境を守るため、また持続可能なまちづくりという点からも、今、中央区で進められている超高層タワーマンション建設によるまちづくりは問題があります。
区が多額の補助金を投入し進める大規模な市街地再開発は、現在29件も進行中です。私はこれまでもタワーマンション建設ばかりではない「まちの更新」の選択肢として、共同建て替えへの検討・支援を求めてきました。
今年6月の区議会第二回定例会の一般質問では、共同出資型による共同建て替えについて「庁内でのプロジェクトチームの立ち上げや、専門家との研究・協議など」を求めましたが、区の答弁は「権利変換型の再開発であれば、権利者の負担なくできるが、共同出資型の建て替えでは高齢者世帯では負担しきれない。仮住居の経費も必要」という旨のものでした。しかし、共同建て替えのなかで保留床をつくったり、区の施設も整備していけば、住民負担を軽減しながら建て替えすることが可能になるのではないでしょうか。
そこでお聞きします。
第一に、住民の方たちの共同出資による共同建て替えの中で保留床を作り、売却や賃貸にすれば、建設期間中の仮住居の費用など住民負担の軽減が実現できると思いますが、いかがですか。また、高齢者の通いの場や子どもの遊び場など区民に望まれている施設も整備をしていけば、区民にも喜ばれるものになると思いますが、いかがですか。
第二に、こうした保留床や区の施設整備も盛り込んだ共同建て替えについての検討を求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次は聞こえのバリアフリーについてです。
WHOの調査では、先進国でも発展途上国でも高齢者の障害のトップは聴覚障害であることが明らかになっており、耳鼻咽喉科学の第一人者で慶応医師会会長の小川郁(かおる)慶應義塾大学医学部教授によると、超高齢社会を迎える日本での難聴者の数は人口の10%、65歳以上では45%、約1500万人が難聴であると推計されています。
難聴になるとコミュニケーション不足に陥り、家庭の中でも社会的にも孤立しやすく、うつ病の発症や認知症につながることが、今、大きな問題となっています。
難聴は高齢者の認知機能低下に大きくかかわっており、難聴があると高齢者の脳の容積が減少することが分かっていますが、これは、難聴によるコミュニケーション不足が要因とされています。難聴の放置は認知症の原因となることから、国際アルツハイマー病会議で難聴は「予防可能な認知症の最大危険因子」だと発表されました。
予防策として、聞こえない、聞こえづらい状態から1日も早く脱することが必要であり、そうしたことから、今、補聴器は、難聴者の社会参加にとどまらず、認知症予防など医療面での効果からも注目されています。
前述の小川郁(かおる)教授の調査では、補聴器の装着率を欧米諸国で見た場合、アメリカが約30%、フランス約40%、イギリス約48%、デンマークでは約53%などとなっているのに対し、日本での装着率は約14%と極めて低く、日本補聴器工業会によると、経済的な負担が重いことが最大の要因になっているとのことです。
中央区では現在、所得制限はあるものの、65歳以上で医師から必要と認められた高齢者に対し、補聴器購入費用助成として区独自に3万5000円を支給しています。障害者総合支援法による重度難聴者向けの国の補聴器支給とは別なので、障害者手帳を持っていない人が対象となりますが、2018年度の実績ではこの区独自の補聴器購入の助成を受けた高齢者はわずか42人にとどまっています。
中央区の65歳以上の高齢者人口は約2万4500人ですが、この内、45%にあたる約1万2000人の方に難聴の可能性があるとすれば、まだまだ支援の手が届いていない方が多くいるのではないでしょうか。
補助を受ける方は、自分自身で補聴器を選ぶことになりますが、補聴器の性能は様々で、ぴったりと合ったものを選ぶのは難しく、合わないために使用をやめてしまったということはよく聞く話です。
また、補聴器は、1990年以降のデジタル化により、性能が格段に進歩し、かなり細かい調整もできるようになったものの、眼鏡の様にかければすぐに見えるようになるというものではないため、正確に聞き取るための認知トレーニング、聴覚トレーニングなど脳の訓練を積んでいく必要性も指摘されています。補聴器を使用せずにきた脳は、情報が少ない状態になれているので、そこにいきなり補聴器をつけてもすぐに快適に聞こえるものではなく、根気強くトレーニングをすることで脳が補聴器の音に訓練され、言葉を聞き取れるようになってきます。調整には3ヵ月から半年はかかります。
何よりもまず、早く診断を受け、専門家の指導のもとに早期に補聴器を装着し、聞くためのトレーニングを積み、地域参加の機会を増やし、コミュニケーションをはかることが、高齢者の生活の質を向上させることにつながります。聞こえのバリアフリーをすすめるため、自治体の支援は不可欠です。
現在、東京都は「区市町村が創意工夫を凝らして主体的に実施する取組みを包括的に支援」するとして、「高齢社会対策市区町村包括補助」制度を設けています。中央区もこの東京都の補助制度を積極的に活用すべきではないでしょうか。
そこでお聞きします。
第一に、今、中央区は独自に補聴器購入費用助成を行なっていますが、江東、新宿、豊島の3区は東京都の「高齢社会対策市区町村包括補助」を活用し、都の1/2負担で補聴器購入への助成をおこなっています。中央区でもこの補助制度を活用することを求めますが、いかがですか。
江東区の場合、所得が257万2000円以下などの基準を設けた上で、4万5000円相当の補聴器を現物支給しています。箱型、耳かけ型の2種類で、耳鼻咽喉科で聴力検査をして必要と認められれば、医師が調整して支給しており、診察料も無料となっています。都の包括補助を活用すれば、中央区でも同様の取組みが可能になると思いますが、いかがですか。
江東区では週に1回、区役所内で補聴器の調整も実施しています。中央区でも実施することを求めますが、いかがですか。
第二に、中央区は、HPや「高齢者福祉事業のしおり」、要介護認定を受けた際の案内などで補聴器購入費助成について周知しています。今後周知をさらに広げ、補助の利用者を増やすことが大事だと思いますが、いかがですか。また、医師の方たちに対しても補助制度を周知徹底するため、区内の医療機関にも補助制度について紹介するビラを置くなどの措置が必要だと思いますが、いかがですか。
第三に、補聴器の利用を拡大することを、認知症対策の一環として位置づける積極的な取り組みを求めますが、いかがですか。
第四に、認定補聴器技能者や補聴器相談員、言語聴覚士など専門家の支援を得て、日常的な相談活動や訓練支援を行なうべきだと思いますが、いかがですか。
第五に、難聴の早期発見のためには聴覚スクリーニングが不可欠です。豊島区では区が行なっている健康診査で、65歳の受診時に聴覚検査を実施しています。中央区でも実施することを求めますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次は障害のある児童・生徒への支援についてです。
聞こえのバリアフリーをすすめる上では、高齢者の難聴のみならず、先天的な難聴や幼少期の難聴についても早期の発見と支援が非常に重要となります。
中央区では、2015年(平成27年)から、明正小学校に言語障害や難聴の子どもたちへの支援として「ことばと聞こえの教室」(通級指導学級)が設けられており、子どもたちは普段通っている学校から週に1回程度、明正小学校に通い、口の動かし方や言葉を聞き取る練習などに取り組んでいます。
発達障害や情緒障害などがある児童を支援する特別支援教室は全ての小・中学校に設けられており、心身に障害のある児童・生徒が通う特別支援学級は明石小学校、月島第二小学校、銀座中学校に設けられています。中央区の人口増に伴い子どもの数が増えるなか、こうした教室や学級に通う児童数も増加しています。様々な困難を抱える子どもたちが適切な支援を受けられるようにすることが必要です。
そこでお聞きします。
第一に、「ことばと聞こえの教室」や特別支援教室、特別支援学級の拡充の必要性についてはいかがお考えですか。
第二に、様々な困難を抱える子どもたちが、それぞれ適切な学級や教室に通えるようにするため、就学前の相談に加え、入学後の年度途中でも医師や言語聴覚士など専門家との協議や相談など連携が必要だと思いますが、いかがですか。
第三に、困難を抱える子どもたちを指導する巡回指導教員などに対しての研修は月1回程度実施されているのに対し、クラス担任の研修は年1回程度しかなく、全員が参加するわけではありません。研修の中身、回数ともに拡充が必要だと思いますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
次は放課後等デイサービスについてお聞きします。
様々な困難を抱える子どもたちが増加するなか、発達障害などがある子どもたちに対し、放課後や夏休みに居場所づくりの支援として「放課後等デイサービス」が、区立施設、民間施設で行われていますが、様々な条件が合わず、区外の施設を利用している方も多くいます。
保護者の方たちから、「区立施設だと兄弟を預かってもらえない」「月島地域にはないので通わせるのが大変」、生活能力の向上に必要な訓練を積む「療育」だけではなく、「学習支援も行って欲しい」などの相談が寄せられています。
現在、区内の放課後等デイサービスは、福祉センター内の区立施設が定員20人、その他民間施設が5つでそれぞれ定員10人なので、区内での定員数は70人ということになり、十分とはいえません。
事業者に対しては、施設整備への補助はあるものの、運営費への補助はなく、介助が必要とされる度合いによって子ども1人あたり最大で1日7,392円などの給付が国からあるのみで、区内では家賃の高さなどから、10人という定員のなかでは運営が厳しいということです。
通いやすく利用しやすい施設を今後、さらに増やしていくことが必要ではないでしょうか。同時に施設数を増やすだけではなく、質を維持することも重要です。
そこでお聞きします。
第一に、放課後等デイサービスの需要の高まりについてどのように分析していますか。今後、区立施設の拡大についても検討すべきだと思いますが、いかがですか。また、家賃が高い中央区では民間施設に対し、区独自に補助をしていくことも必要だと思いますが、いかがですか。
第二に、区施設では、兄弟児の一時預かりについては生後7ヶ月から就学前までと限定されています。就学児の預かりも実施すべきだと思いますが、いかがですか。
第三に、児童数が多い月島地域での施設整備が必要だと思いますが、いかがですか。
第四に、保護者のニーズが高い学習支援を区施設で行うことを求めますが、いかがですか。また民間施設でも学習支援を行えるよう支援することも必要だと思いますが、いかがですか。
第五に、区施設の質の管理とあわせて、民間施設でも質が確保されるよう、区のかかわりが重要だと思いますが、いかがですか。
それぞれお答えください。
以上で1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。