2018年 区議会第二回定例会 一般質問

2018年6月20日

日本共産党中央区議会議員 志村孝美

【質問項目】

  1. 歴史的な「米朝首脳会談」について
  2. 戦後最悪の安倍政権について
  3. 小・中学校の道徳の教科化について
  4. 小学校の標準服について
  5. 入学準備金の前倒し支給について
  6. 子どもたちの個性と自主性を育む教育環境の充実について
  7. 卸売市場法改悪と築地市場移転問題について

 日本共産党の志村たかよしです。
 6月18日、大阪北部を震源とする最大震度6弱の地震が発生しました。
 登校中の小学生が学校のブロック塀の下敷きになって亡くなるなど各地で深刻な被害を広げています。亡くなった方と、そのご家族にお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 前日の17日には、群馬県を震源地とした震度5弱の地震も起きています。千葉県東方沖では、今月に入って、陸側と海側のプレートの境界がゆっくりずれ動く「スロースリップ」が発生するなど活動が活発化しており、地震大国・日本として警戒と備えをさらに強めることが不可欠となっています。
 では、質問に入ります。日本共産党中央区議団を代表して質問します。
 なお、再質問、再々質問を留保します。

1.歴史的な「米朝首脳会談」について

 はじめに、「米朝首脳会談」についてです。
 6月12日、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が、初の米朝首脳会談を行いました。1950年に勃発した朝鮮戦争が休戦状態という国交のない米朝両国が、朝鮮半島の非核化と平和体制構築をすすめることを合意したのは、歴史的なことです。
 昨年は、戦争の瀬戸際まで来たのではないかと世界で懸念が広がりましたが、韓国、中国の首脳も加わった粘り強い外交交渉もあって、首脳会談が実現しました。
 開催国となったシンガポールのシェンロン首相が「非核化された朝鮮半島の恒久平和と安定に向けた長い旅路において、決定的に重要な第一歩」だと述べたように、米朝首脳会談は、まさに、「平和に向かう第一歩」です。
 この「平和へのプロセス」が成功をおさめるならば、世界史の一大転換点となり、地域の情勢を一変させるものとなるでしょう。
 北東アジア地域における非核化と平和構築のために、憲法9条を国是に掲げる日本の政府としての努力が求められています。
 日本政府が、日朝平壌宣言に基づき、核・ミサイル、拉致、過去の清算など両国間の諸懸案を包括的に解決し、国交正常化への努力をはかるなど、開始された平和体制プロセスを促進する役割が重要となっています。
安倍首相が、北朝鮮に対して、圧力一辺倒の立場を唱えていた時に、日本共産党は、国連決議による経済制裁と合わせて「対話による平和的解決」を一貫して主張してきました。
 区長も、昨年の第4回定例会で「最終的には、国際社会と連携して平和的・外交的な対話による解決が図られるものと認識しております。」と答弁していました。
 そこで、区長にお聞きします。
 第1に、今回の米朝首脳会談についてどのような評価をしていますか。
 第2に、北東アジア地域の非核化と平和構築のために、日本が果たすべき役割をどうお考えですか。
 第3に、北東アジア地域の平和の流れのなかで、日本は憲法9条を改定することをやめるべきだと思いますが、いかがですか。
 第4に、北朝鮮および朝鮮半島の非核化を実現するためには、日本政府が核兵器禁止条約に参加することが必要だと思いますが、いかがですか。それぞれお答えください。

2.戦後最悪の安倍政権について

 次は、戦後最悪の安倍政権についてです。
 安倍首相は、刑法が禁じる賭博場・カジノを合法化するカジノ(IR)実施法案を、国会延長してまで成立を図ろうとしています。
 カジノの合法化に反対する国民は、6割~7割に上っており、民意無視の安倍内閣の暴走は許されません。
「カジノではなく統合型リゾート(IR)」だと言いますが、「違法の民営賭博の合法化」という本質を覆い隠すためのごまかしにすぎず、公営賭博を特例として認める趣旨からさえ大きく逸脱し、刑法の体系と整合性をとることなどできない話です。
日本進出をめざす海外のカジノ資本は、日本国内にカジノをつくり、日本人客から金を巻き上げることができれば、大もうけができると踏んでおり、「日本のカジノに1兆円程度の投資をいとわない」と再三にわたり言明しています。
違法性が高く経済効果もないうえ、カジノ資本が国民を搾取し、深刻なギャンブル依存症を増加させる希代の悪法といえます。
 そこでお聞きします。
 第1に、「築地市場跡地にカジノを」という財界の思惑もある中、カジノ(IR)実施法案が、区民・国民に及ぼす影響をどうお考えですか。
 第2に、カジノで日本経済の活性化を図ることができるとお考えですか。
 それぞれお答えください。
 安倍政権は、働く人たちの命と健康を破壊し、権利も脅かす重大な中身が盛り込まれている「働き方改革」一括法案も成立させようとしています。法案審議の中では、提出データの半数近くに間違いがあったことが明らかになっています。
 労働時間規制を撤廃する「高度プロフェッショナル制度」いわゆる「残業代ゼロ制度」は、「8時間労働制」を根底から覆すものです。
 対象となる年収の最低ラインを1075万円としていますが、月収20万円の労働者も労使の合意があれば対象となると労働基準局長は国会で答弁しており、多くの労働者の問題でもあります。
 今回の「高度プロフェッショナル制度」の導入は、歴史の流れにも、世界の流れにも逆らうものです。
 労働基準法は、1947年に制定されましたが、当時の国会で政府は、「朝から晩まで長い時間働いて、帰って寝る時間しか与えられないのでは、しっかりした日本の再建にならない」と説明していました。
 人間的な生活をするうえで労働時間の短縮は極めて重要な課題であり、「8時間働けばふつうに暮らせる社会」をつくることこそ国民が求める働き方改革ではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 第1に、中央区では、働き盛りの区民の方が増えていますが、少なくない区民が「高プロ制度」の対象になる可能性があります。健康被害や家庭への悪影響などが危惧されますが、区長はどう認識していますか。
 第2に、中央区役所では「働き方改革」、労働環境の改善をどのように進めていますか。それぞれお答えください。
 第2次安倍政権が発足して5年半になります。この間、集団的自衛権行使容認の閣議決定や安保関連法いわゆる戦争法強行など立憲主義の破壊を進める一方で、公文書の隠ぺい、改ざん、廃棄、虚偽答弁など、戦後かつてなかった国政の私物化を進めてきました。
 多くの国民が望んでいるモリカケ問題の真実の解明には蓋をして、国民の多くが反対している憲法違反の悪法の強行成立を重ねるという戦後最悪の内閣ではないでしょうか。
 そこで区長にお聞きします。
 安倍首相は、森友学園問題、加計学園問題の真相を国民に丁寧に説明するという責任を果たしていると思いますか。見解をお聞かせください。

3.小・中学校の道徳の教科化について

 次は、小・中学校の道徳の教科化についてです。
 「特別の教科 道徳」の教科書は、小学校では2017年度に採択し今年度から使用されています。中学校では今年度採択することになっています。
 実際に使用が始まった小学校の道徳の教科書については、専門家からは、集団に奉仕する人間を美化する内容や型にはまった行動様式を教え込む内容が盛り込まれたものが多いとの指摘があります。
 今回、検定を通った中学校の道徳の教科書の傾向としては、「この素晴らしい日本を愛しましょう」や「日本人は世界の人々に比べてこんなに素晴らしい」ということが強調されたり、「感動させられる、パッと読むとグッと心が揺れてしまうような教材」も特徴的で、全体として感情に訴える教材が増え、自己責任の強調、心がけで何とかなるような描き方の教材も多いという専門家の指摘があります。
 また、道徳の評価については、「数値による評価は行わない」と学習指導要領解説が言っているにもかかわらず、教師が「評価」することも問題ですが、採択対象となる教科書の8社中5社に自己評価欄があり、4段階で自己評価させる教科書やこころの輝き度を星の数で表す教科書もあります。
 「愛国心」などの徳目の達成度を数値や記号で評価させることは、子どもの考え方を縛りかねません。
 学習指導要領解説は、「道徳化の授業では、特定の価値観を児童に押し付けたり、主体性を持たずに言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育の目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」と指摘しています。
 ふりかえれば、戦前の道徳教育は、「教育勅語」で定めた軍国主義国家の「道徳」を「修身」と称して教え込ませるものでした。
 戦後はその軍国主義教育の反省から、憲法に「思想良心の自由」を定め、道徳の教育は特定の教科ではなく、教育活動全体を通じて行うとされました。
 その後文科省によって「道徳の時間」が設けられましたが、教科ではなく、年間35時間実施し、数値などによる評価も行わないことになっていました。
 特定の教科書も長らくなく、2002年から文科省作成の「心のノート」が配布されましたが、あくまで補助教材としてでした。
しかし、2006年、第1次安倍政権は、教育基本法を改悪し、教育の目的に「愛国心」や「公共の精神」を書き込み、2013年、第2次安倍政権が策定した「国家安全保障戦略」に、日米同盟強化のために「我が国と郷土を愛する心を養う」と明記し、政府見解に従うように教科書検定基準と検定制度を改悪しました。
 そして、戦前回帰のゆがんだ愛国心を子どもたちに押し付ける体制を確立させ、道徳教育は「学校教育の中核」だと強調して、「特別の教科」として義務付けました。
 ここには、日本国憲法が定める基本的人権や市民道徳的な内容が、ほとんど盛り込まれていないのが特徴です。
 安倍政権による道徳の教科化は、「戦争立法」など「戦争する国づくり」と同時に進められてきましたが、そこに、「道徳の教科化」の本質が表れています。
 「道徳」を唱える安倍政権が、「不正をしても、公務員や政治家は、責任を取らなくていい」というモラルハザード政権なのですから、究極のブラックジョークです。
 教師は、道徳の授業で、安倍政権の不正や不誠実な態度について児童から質問が出たときに、どう説明すればいいのでしょうか。この大人たちの醜態を見ている子どもたちに、どのような影響を与えるのか心配です。
 そこでお聞きします。
 第1に、「道徳の教科化」についてどのような認識をお持ちですか。
 第2に、道徳を数値などで評価することは無理であり、子どもの考えを縛るものだと思いますが、いかがですか。
 第3に、中学校の道徳の教科書を採択するにあたって、何を重視していますか。
 第4に、安倍政権の不誠実で横暴な振る舞いが、子どもたちに及ぼす影響をどう考えていますか。それぞれお答えください。

4.小学校の標準服について

 次は、小学校の標準服についてです。
 今年の春、泰明小学校の超高級ブランドデザイン標準服が、全国的な関心を集めました。 小学生を持つ家庭だけでなく、幅広い年代の方たちから、批判と疑問の声が出されたのが特徴的でした。
 小学校の標準服について、価格が高いとか安いとかの判断は、家庭によって異なるでしょうし、標準服や制服よりも私服のほうがおカネがかかるという家庭もあるでしょう。
服装に対する価値観は人によりさまざまですから、制服やユニフォームは、愛校心や所属意識を育むという声もあれば、子どもの表現の自由を奪うという声もあります。
 私は、「標準服」と聞くと「国民服」をイメージし、「服育」と聞くと「服役」「服従」などの言葉を連想します。
 そこでお聞きします。
 第1に、身体の変化・成長が著しい小学生の時期に、標準服は相応しいのか疑問を持ちます。標準服のメリット・デメリットをどう考えていますか。
 第2に、男女別標準服による性同一性障害の児童への影響をどう考えていますか。
 第3に、区内小学校のうち、標準服を採用している学校で標準服以外で登校する児童の割合は、どの程度でしょうか。また、標準服を着ていない児童に対してのいじめや差別などの不利益は存在していないのでしょうか。
 第4に、標準服導入小学校で、標準服について議論、再検討する機会がPTAに必要だと思いますが、いかがですか。それぞれお答えください。

5.入学準備金の前倒し支給について

 つぎは、入学準備金の前倒し支給についてです。
 経済的に厳しい家庭の子供に対する就学援助制度には、新入学用品の費用を援助する入学準備金も支給されますが、家庭の所得を確認することから、支給が入学時に間に合わず、6月7月の支給となっています。
 私は、2016年の第3回定例会で、お金を借りて入学準備をしている実態を示して、前倒し支給の実施を求めた時、教育長は「さまざまな課題があり、直ちに実施することは困難」と答弁しました。
 「教育の中央区」というのもおこがましい対応を私は批判し、早期の実施を求めました。
 昨年、2月に開かれた区民文教委員会でも、私は前倒し支給を実施している区が広がっていることを示して中央区での早期実施を求めたところ、学務課長は「前年度所得を2月の段階で押さえるためにはシステムを半年ずらさなければいけない。中学校の入学準備金については取り組んでいる区があるので、研究していきたい」と答えました。
 国会では、昨年3月に、日本共産党の畑野君枝衆院議員が、「国としても前倒しの支給を決断せよ」と求めたところ、文科省は「中学生は可能、小学生は鋭意検討を行っている」と答弁しました。その後、3月31日に、「必要な援助が適切な時期に実施されるよう市町村教育委員会に周知する」ことを指示する通達を、各都道府県教育委員会に出しました。
 11月の委員会で、わが党の奥村あきこ議員が「最短での実施はいつになるのか」と質問したところ、学務課長は、「18年度中に通知を発送し、19年度入学に間に合うスケジュールになる」と答えました。
 そこでお聞きします。
 現在、入学準備金の前倒し支給を、中学校は15区、小学校は5区で実施していると聞きます。中央区では来年度から実施できそうですか。進捗状況をお聞かせください。また、対象となる児童・生徒の見込み数もお聞かせください。

6.子どもたちの個性と自主性を育む教育環境の充実について

 次は、子どもたちの個性と自主性を育む教育環境の充実についてです。
 中央区では、タワーマンション建設などによる児童数の急増で教室不足となる学校と、小規模のまま推移する学校に対応するために、学校を増設するのではなく、学区制度を緩めて、少人数となっている学校に児童を振り分ける「特認校制度」を2009年から行っています。
 「特認校制度」は、「子どもと学校のつながり」「地域と学校のつながり」という学校が持つ重要な役割を軽視する行政の都合に合わせた施策といわざるをえません。
 そして、公立学校にもかかわらず、パイロット校を指定して、国際教育、理数教育などを掲げて予算も重点的に充てられています。その一方で、タブレット導入が2校に限定されたり、各教室にテレビもないという学校が存在するなどの「格差」が生まれています。
 「特認校」は、安倍首相がかかげる成長戦略と重なるものがあり、企業にとって優秀な労働者を育成するための学校は、まるで「職業訓練学校」の様に私には見えてしまいます。
 「特認校制度」は、他の学校との違いを際立たせ、公教育に格差を持ち込み、教育を受ける機会均等の精神をふみはずしているのではないかと思います。
 泰明小学校の標準服問題も、銀座の学校、名門校、伝統校の意識、特認校としての意識が背景にあるのではないでしょうか。
 そこでお聞きします。
 特認校制度の「地域の子どもと学校との関係」「地域と学校の連携」へのデメリットをどう認識していますか。お答えください。
 将棋の最年少棋士・藤井聡太さんやフェイスブック創業者のマークーザッカーバーグ氏らも学んだとして、子どもの自主性を重んじる「モンテッソーリ教育」に注目が集まっています。「モンテッソーリ教育」は、「大人のプログラムを与える従来の教育ではなく、子どもの自然発達に従う教育で、子どもが能動的に、自分で自分をつくる」というのが特徴と言われています。
 私たち党区議団は、モンテッソーリ教育を実践している十思保育園を視察しましたが、園児たちが、自由にのびのびと生活している様子を目の当たりにしました。大きな声をあげる園児も保育士もいなかったのが印象深かったです。
 小学生になると、自ら独自のテーマを見つけるようになり、積極的に学ぶ。自信を積み重ねて「自己肯定感」が高まり、新たな世界を切り開こうという意欲が生まれると言われています。
そこでお聞きします。
 第1に、「モンテッソーリ教育」についてどのような認識をお持ちですか。
 第2に、子どもたちの個性と自主性を育む教育環境の整備についてどのように取り組んでいますか。それぞれお答えください。
 「いじめ」問題の解決は重要な課題ですが、「いじめ」や差別のひとつの要因として、外見、貧富の格差、家庭や家族の多様な在り方、発達障害、身体的なハンディキャップ、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)などのセクシャル・マイノリティ、…など自分と違う対象に対しての感情が背景にあると言われています。
 また、小・中学校におけるいじめや不登校の原因のおよそ30%が、LGBTに起因すると言われています。
 現在の日本人のLGBTの割合は、7・6%といわれており、40人クラスだと、1クラス3人の子供がLGBTの可能性があることになります。
 セクシャル・マイノリティにたいして差別的な空気が醸し出され、テレビなどでの笑いの対象として作り出されている現実が日本社会には存在しています。以前は、「精神的に異常な人」という見方も蔓延していました。
 そもそも、人間は、一人一人違う個性を持っています。セクシュアリティも個性の一つで、LGBTというような明確な区切りもできないグラデーションを持ったものだともいわれています。
 今、道徳教育の推進に熱心な政治家から、セクシャル・マイノリティを差別的にとらえた発言が公然とされる中で、学校や教師の果たす役割が問われています。
 文科省は、2016年(H28)に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という資料を全国の小中高等学校等に配布しました。
 そこでお聞きします。
 第1に、子どもたちにLGBT、性の多様性を理解させる教育に、どのようにとりくんでいますか。
 第2に、2016年の文科省資料にある「児童生徒に対するきめ細かな対応」をどう具体的に進めているのでしょうか。
 それぞれお答えください。
 児童・生徒たちの教育環境を改善するためには、教員のおかれている環境を改善することも重要です。
2020年度から小学校の英語教育が本格化するとともに、プログラミング教育も必修化されるなど、授業数が増える一方で、教員の働きすぎや精神的負担の増大の解消は待ったなしとなっています。
 文科省の調査では、「過労死ライン」に達する時間まで働いている教員は、小学校で約3割、中学校で約6割にもなっています。
 中央区が昨年2月に実施した「教員の多忙感にかかわる調査」では、午後7時から9時までの間に退勤する教員は、幼稚園で58・6%、小学校では、48・1%で、9時以降は2・6%、中学校では51・5%で、9時以降は8・8%となっています。
 中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」では、教職員の長時間勤務の看過できない実態の改善に向けて「今できることは直ちに行う」という認識を教育に携わる全ての関係者が共有するとともに,必ず解決するという強い意識を持って,それぞれの立場で実行させるため、昨年8月に「緊急提言」をまとめました。
 「緊急提言」では、「1.校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること」の項で、校長及び教育委員会に対し、「教員が疲労や心理的負担を過度に蓄積して心身の健康を損なうことのないよう、執務環境を整備」することを求めています。
 また、勤務時間について、「自己申告方式ではなく、ICTやタイムカードなど勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムが直ちに構築されるよう努めることや教職員の休憩時間を確保すること。学校の諸会議や部活動等について勤務時間を考慮した時間設定を行う」ことなどの改善を求めています。
 そこでお聞きします。
 教員の勤務時間を把握するためにどのような方法をお考えですか。また、教育委員会は、「プロジェクトチーム」を立ち上げて、教員の働き方改革に取り組んでいると聞きますが、議論されている内容と「今、直ちにできること」として何を考えていますか。
 お答えください。

7.卸売市場法改悪と築地市場移転問題について

 次は、卸売市場法改悪と築地市場移転問題についてです。
 10月11日の移転予定日まで4ヶ月を切った段階でも、豊洲市場は、土壌汚染問題も、施設の欠陥や使い勝手の悪さ、非効率な物流、交通アクセスの不安、千客万来施設の迷走、築地市場仲卸の7割が移転中止・凍結を求めているなど、いまだ山積する問題が解決できていない状況です。これは、豊洲市場を開場しても失敗するということ示しています。
 使い勝手の悪さや非効率な流通などの課題を解決できない根本要因は、豊洲市場の設計思想にあります。
築地市場と豊洲の大きな違いは、築地市場は、入荷、卸売、仲卸、買出、搬出までの取引と物流が、継続した流れを形成していますが、豊洲市場は、大口業者向けの物流施設整備に重点が置かれていることです。
 豊洲市場で、大規模物流センターとしての機能は強化されたとしても、目利き力のある仲卸業者減少により、多種多様な生鮮食料品を取り扱う卸売市場としての魅力が失われることは目に見えています。
 市場関係者からは、「築地市場移転は仲卸を衰退させることが真の目的ではないか」という声が出されるのも当然です。
 それを裏付けるのが、6月15日の参議院本会議で、自民、公明、維新の会の賛成多数で成立した卸売市場法の改悪です。
 その主な内容は、卸売会社が仲卸以外に販売してはならない「第三者販売禁止」や、仲卸が産地から直接買えない「直荷引き禁止」、そして、市場でしか買えない「商物一致原則」という中央卸売市場の大原則を規制緩和し、公正取引を担保するのを、農水省から公正取引委員会に変えてしまうものです。また、中央卸売市場の開場も農水大臣の「認可」から届け出制である「認定」に変えてしまいます。
 このような卸売市場法の改悪は、大手商社や外国資本の要望に沿ったもので、大規模物流センターとして作られた豊洲市場はその第1号の市場です。
 市場法の改悪によって、卸売市場の公正な価格形成を図る機能が失われ、生産地を衰退させてしまうとともに、安定した食糧供給が損われてしまいます。
 そして、農水省の責任のもとで国民に開かれていた生鮮食料品の流通システムが、今度は、民間資本に開放されて、行政の目も行き届かなくなってしまい、「食の安全・安心」も「消費者の権利」もないがしろにされてしまいます。
 築地市場を守るたたかいは、産地や商店、消費者を守り、取引の不平等を許さない経済民主主義を守るたたかいでもあります。
 そこでお聞きします。
 第1に、今回の市場法改悪は、区民をはじめとした消費者に深刻な影響を与えることになると思いますが、いかがですか。
 第2に、市場法が改悪された中で、築地市場を守ることが、消費者や経済民主主義を守ることになると思いますが、いかがですか。区長の認識をお聞かせください。
 私は、6月13日の築地等地域活性化対策特別委員会で、築地市場と選手村の物流は両立できることを説明しました。
 選手村の1万7千人の役員、選手に対する毎日毎日の物資の補給は、有明方面の環状2号線と高速晴海線、そして、船を使えば、新大橋通りと晴海通りを主な搬入路としている築地市場の物流とはバッティングすることはありません。
 大田市場や首都圏の食材加工場からの搬入にしても、わざわざ都心を通る必要もありません。築地市場から食材を搬入する場合は、築地大橋が使えます。
 ちなみに、土壌汚染で世界的にその名がとどろいた豊洲市場からの食材を選手村で使うことには、相当の抵抗があるでしょう。
 選手の移動も、ほとんどの競技施設が、臨海副都心など都心から離れているため、選手村からは、高速晴海線の方が効率的です。
 都心方面の会場に行くときは、その時間帯だけに限って、晴海から銀座までの晴海通り1車線をオリンピック専用レーンにすれば、数分で首都高都心環状線にのれます。
 築地市場を通そうとしている環状2号線の暫定道路では、片側1車線の対面交通や急カーブが危険で、新大橋通りの規制による渋滞が、場外市場や晴海通りに影響を与えます。
 築地に環2を通して選手を移動させることは、愚策であり、やめるべきです。
 「豊洲市場の食材を選手村で使えるという確証はない」「世界的に有名な築地市場の食材を使えば世界のアスリートは喜ぶ」「選手村と築地市場は両立できる」「環2の暫定道路は危険」という現実を見れば、築地市場を残すしかなく、豊洲はバスの駐車場にする。
 これが現実を踏まえた解決方向ではないでしょうか。
 委員会でのこのような指摘にたいして、吉田副区長は、否定できず、「次元が違う」と答弁をはぐらかしましたが、私と吉田副区長との「次元の違い」は、「築地市場を残す立場」と「環2を通してまちづくりを進める立場」の違いではないでしょうか。
 いま、区が問われているのは、不動産デベロッパーの利益のために、築地市場の移転を容認するのかということです。
 そこでお聞きします。
 区長は、環状2号線を含めた晴海や勝どきの大規模開発を促進させるために、築地市場移転を容認しているのでしょうか。区長の本心をお聞かせください。
 オリンピックをたてに、中央区の財産である築地市場を移転させて、環2を通してしまおうというのは、断じて認めることはできません。
 環2が築地を通らなくてもオリンピックには、大きな影響は出ませんが、晴海での再開発で儲けをあげたいデベロッパーにとっては、何としても環2は貫通させたいでしょう。
 しかし、オリンピック後の晴海のまちづくりは、インフラを整備してから行えばいいのです。インフラ整備ができていないのに大規模開発計画を進めるというのは、民間が判断したことです。選手村の土地が格安で民間に売却されたのは、土地購入と事業完成のタイムラグがあるからとの説明がありました。1㎡10万円以下という格安で売却したのですから、相当しばらくの間、事業が止まったとしても、選手たちが使った建物がそれなりにあるのですから、「果報は寝て待て」とデベロッパーに待ってもらえばいいのです。
築地市場を残すことを前提とすれば、様々な解決法が見いだせるはずです。
 晴海や勝どきの交通基盤整備も、オリンピックと切り離し、専門家の知恵を出しあえば、きっといいアイデアが出てくるでしょう。
 豊洲移転をめぐる混迷の打開策は、小池都知事が初心に帰り、豊洲移転を中止し、築地市場での営業を継続させるという決断をすることしかありません。
 地元中央区が、移転中止を都に求めることで、局面は大きく変わり、歴史的にも大きな役割を果たすことになるでしょう。
 築地市場と場外市場は、一体となって築地ブランドを築き上げてきました。築地市場が残れば、場外市場はさらに大きく発展していくことでしょう。インバウンド効果もますます高まり、築地や銀座を軸とした周辺地域との回遊性を積極的に構築する観光政策を充実させることもできます。
 江東区の区長も区議会も「移転延期」の決断を検討するなど、ますます混迷を深めている今、地元自治体が「移転反対」の声をあげることは、豊洲への移転を阻む大きな力になります。八方ふさがりの小池都知事に「築地市場を守る、豊洲は有効活用する」という道に歩みだしてもらうために、中央区は大きな役割を果たせると考えます。まだ、築地市場が営業している今なら間に合います。
 そこでお聞きします。
 第1に、豊洲への移転が混迷している最大要因は、築地市場を無理に移転させようということにあると思います。区長は何が原因だと思いますか。
 第2に、築地市場は、移転するより現在地で存在し続ける方が、区や区民にとってのメリットは、はるかに大きいと思います。なのに、なぜ、区長は、移転断固反対から移転容認に変わってしまったのでしょうか。理由をお聞かせください。
 区長、初心に立ち返りましょう。
 「食の安全・安心」と「築地ブランド」そして「中央区の地域経済」を守る立場に戻ることは今なら可能です。将来に禍根を残さないためにも、ぜひ区長には「移転反対」の決断をしていただきたいのですが、いかがですか。お答えください。

 以上で、1回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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