平成29年度(2017年)中央区各会計歳入歳出決算の認定に対する態度表明

2018年10月12日 加藤 博司

 本決算特別委員会の最中、小池都知事は「都民の食の安全と安心を守る」「築地は守る」との公約を反故にし、築地市場を閉場し、土壌や地下水の汚染が残ったまま、その上、市場関係者の合意も得ることなく10月11日、豊洲市場の開場を強行しました。厳しく抗議します。また、小池都知事がすすめる東京五輪をテコにした大規模開発や、約1兆4000億円にものぼるとされる大会準備費のための負担など、都民負担の増大は深刻です。

 国政では、10月2日、第4次安倍改造内閣が発足しました。改憲推進本部長に首相側近の下村文科相を据えるなど改憲シフトも露骨です。
 安保法制の制定や改憲の策動と一体に、軍事費は7年連続増加し、大企業に法人税の減税など大盤振る舞いする一方、生活保護改悪をはじめ、医療、年金、介護など社会保障費の「自然増」を削減してきました。さらに2019年10月からの消費税10%増税が狙われ、「社会保障の財源」と言いながら、社会保障費はさらに削減しようとしています。

 中央区に求められるのは、こうした国や都の悪政から区民生活を守る「防波堤」の役割をしっかり果し、区民福祉の増進を図ることです。

 日本共産党区議会団は、2016年9月26日、505項目の2017年度中央区予算編成に関する要望書を区長に提出し、2017年度予算を審議した予算特別委員会では、問題点を指摘するとともに具体的提案を行い、予算修正案も提出しました。日本共産党区議団は、これらの経緯を踏まえ、2017年度決算の各款について詳細に質疑し、予算執行が適切だったかどうか検討した結果、スクールソシャルワーカーの小学校への配置、みんなの食堂への支援、防災アプリ、寡婦控除みなおし等(とう)の実施等(など)、前進した施策もありますが、さまざまな問題があると判断しました。

 よって、日本共産党中央区議会議員団は、平成29年度各会計決算の認定に反対します。次に、その理由を述べます。

 まず、一般会計決算についてです。

 第一に、決算年度に中央区の20年後を展望した基本構想が策定されました。基本構想では、「先進的なスマートシティの実現」などとして、今後も「東京一極集中」を促進する姿勢が基調になっています。このようなまちづくりをすすめれば、将来的には一極集中のまちづくりの負の結果として生まれる急激な人口減少や高齢化、建物の老朽化、空きビル、空きオフィス対策等への課題に取り組まなければならなくなることは明らかであり問題です。

 第二に、2兆円の経済効果をもたらしてきた築地市場がなくなることは、中央区政の地域経済にとって大事な宝を失うことになると再三にわたり指摘し続けてきましたが、行政はもちろん、区民生活や商工観光、まちづくり等、区政全般に大きな影響を与えることは本特別委員会審議の中でも明らかになりました。区は、移転を容認した責任を自覚し、今後、区内飲食店や関連業者への相談窓口の開設、生活支援などに誠実に対応することを強く求めます。

 第三に、決算総額の26%の255億円が環境土木費と都市整備費で、その半数近くの123億円が市街地再開発事業6事業に充てられています。
 国家戦略特区などに基づいて、区立城東小学校敷地の売却を行い、東京駅前八重洲地区の再開発に協力するなど、超高層ビルを乱立させる大規模開発を進めていることは見過ごすことのできない問題です。
 今年5月には区の人口は16万人を突破していますが、区内では大規模開発事業の計画が、いまだ28以上も有り、中央区は、「適正人口20万人」を展望しながら、それを突破する人口増加が見込まれることは大きな矛盾です。補助金の減少や販売価格の下落、投資の撤退などにより、破たんする可能性をまぬがれない、市街地再開発優先のまちづくりは、見直すべきです。

 第四に、人口が急増し、多様化する区民サービスの需要に対応するため、大幅な区職員の増員・育成に力を注ぐべきです。業務の外部委託や非常勤職員の増員によらず正規職員をふやし、区職員の経験や知識を蓄積することが区民サービスの向上につながります。

 第五に、格差と貧困が拡大しているもと、生活保護世帯への夏期・歳末見舞金を廃止したことは、生活困窮者の生活と健康を脅かすもので有り、復活すべきです。

 第六に、英語教育の推進により小学校教員が新たに英語を教えることや、部活動顧問の土日出勤などにより、教員の負担は年々重くなり、教員は授業準備もままならない状況に置かれています。テストの多さも問題です。早急に教員の勤務実態を把握できるようにし、子供と向き合える時間を確保し、子供にとってよい教育を実践するために教員の多忙解消が急務です。

 第七に、党区議団の長年の要求であった就学援助の入学準備金前倒し支給がやっと実現する運びとなりましたが、学校給食費は値上げが続いており、保護者負担は軽減されていません。義務教育は無償の立場で取り組むべきです。

 第八に、家庭的保育事業(保育ママ)への巡回指導数が認可保育所と比べて少ないなど家庭的保育事業への指導・監督に甘さがあります。家庭的保育事業のもとで起きた乳児の死亡事故検証をきちんと行とともに、再発防止に力を尽くし、ビデオなどの機器の活用や保育所巡回指導に当たる職員数をふやし、無認可の保育施設も対象として訪問・相談活動に力を入れるなど、すべての保育所における安全対策強化にさらに力を入れるべきです。

 第九に、認可保育所の定員は、2016年度末と比べて521人の拡大がされたものの、待機児は2016年度末の1,261人から2017年度末には1,330人に拡大しています。うち1歳児以下は1,148人にも上っており、急激な人口増の影響が現れています。認可保育所待機児対策が不十分です。

 次は、特別会計決算についてです。

 国民健康保険は、決算年度にも保険料が値上げとなり、年収の1割を超えるという高額な国保料は異常です。所得がふえない中で保険料負担だけがふえています。高過ぎる保険料を払えない滞納世帯が増加し、2017年度の滞納世帯は5,762世帯となり、資格証明証307件、短期証998件と、発行が大幅に増加しています。しかも、ノウハウが蓄積された等として、差し押さえを強化しているのは問題です。滞納世帯の5割を占めるのは所得200万円以下の世帯です。病気になっても病院にかかれない事態をなくすため、保険料の引き上げはやめ、多子世帯均等割額を軽減するために努力すべきです。

 介護保険は、一定の所得以上の人の利用料は1割負担から2割負担となっており、また、介護軽度者の生活援助サービスの予防給付外しも行われています。しかし実際には、利用者の緩和型のサービスへの移行は進んでいません。介護保険料の負担軽減と、質の高い介護サービスを充実させていくことが必要です。

 後期高齢者医療保険の滞納者は407人となっており、保険料の負担は今でも重いのに、ことし4月から、低所得者に対する保険料の軽減措置を縮小します。所得に応じて支払う所得割は5割軽減から2割軽減に縮小、被用者保険加入者の扶養家族から後期に移られた人の保険料の定額部分も9割軽減だったものが7割軽減に減らされます。医療費の適正化の名のもとで医療費の削減を行い、医療内容を差別化し、長生きを脅かし、高齢者に辛い思いをさせる制度は、即刻廃止すべきです。

 以上、平成29年度中央区各会計歳入歳出決算の認定について反対理由を述べ、日本共産党中央区議会議員団の態度表明を終わります。

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