日本共産党中央区議団は、議案第五十七号「中央区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」に反対します。
以下その理由を述べます。
本議案は、日本橋兜町・茅場町一丁目地区の地区整備計画の決定、及び、月島三丁目地区の地区整備計画の変更に伴い、地区計画の区域内における建築物や敷地に関する制限に関する事項を追加するほか規定整備を行うものです。
「日本橋兜町・茅場町一丁目地区」については、A地区とB地区にわけ、それぞれ、建築してはならない建築物、容積率の最低限度、建築物の敷地面積の最低限度、などの内容を条例に追加するものです。
A地区である「日本橋兜町七地区」は、「東京国際金融センター構想の一翼を担う拠点形成に資する金融関連機能等の導入による業務環境の構築」などを目標にあげており、国や都が進める「アジア有数の金融センター」としてのまちづくりを推進するものです。
兜町周辺は、東証の場立ちの廃止以降、インターネット取引の普及も相まって、多くの証券労働者が去ってゆき、まちの賑わいが希薄になっているのは確かです。
しかし、まちのにぎわいは、「アジア有数の金融センター」としてのまちづくりを進めることで取り戻せるのでしょうか。
いま金融の世界は、高頻度取引「HFT」などの高速取引とともに、株の売買だけならAIが判断する時代となっており、世界の投資銀行業務は、アメリカ勢、中国勢、ヨーロッパ勢で三分されており、8大投資銀行が金融業務を主導しています。
これらの状況を踏まえれば、国や都の「世界から資金・人材・企業等を集める国際ビジネス拠点を形成する」というまちづくりは、的を外れているのではないでしょうか。
このような現実とそぐわない「投資を呼び込むまちづくり」は見直すべきです。
本来、条例とは、規制するはずのものであるにもかかわらず、条例を無視して、または、条例改正を前提として開発計画が堂々と作成され、それを担保するために条例を改定するという事例が頻繁に起きています。
本議案は、区民生活や環境を守るためではなく、「世界で一番ビジネスしやすい環境を整備する」という国や都、企業やデベロッパーの意向を受けたまちづくりを進めるための改定が含まれており、反対です。
また、「月島三丁目地区」の地区計画の変更は、超高層マンションを中心とした「月島3丁目南地区市街地再開発事業」に伴うものです。
2015年の第三回定例会の一般質問で、私が、「市街地再開発事業が、行き詰まった後のまちづくりの考えについて」質問したところ、吉田副区長は「月島地区などでは、開発の事業費全体を賄うための保留床というものでやってきたが、住宅供給をこれから大規模にやっていいのかも含めて考えなければいけない」と述べるとともに、空き家もある月島の路地長屋の風景に触れ、「従来と同じように再開発型で全部ビル化してしまっていいのかどうか。やはり問題だ。新たな知恵を使わなければいけない。そういう岐路に、今、私どもは立っている。その認識を持って、これから見直しをさせていただきたい」と答弁しました。
私は、吉田副区長の答弁を受け、「中低層のまちづくりなど研究していただきたい」とエールを送りましたが、残念ながら、市街地再開発事業は次々と進められています。
本議案にある「月島3丁目南地区」は、2月1日の都市計画審議会で、明らかにしたように、住民を分断する一方で、デベロッパーに多大な利益を与える開発事業であり、まさに、住民犠牲のもとでで進められるまちづくりです。
本議案には、この再開発事業に伴う条例改定が含まれています。
よって、日本共産党は、議案第五十七号に反対します。