平成29年度(2017年度)中央区各会計予算に対する態度表明

2017年3月28日 加藤博司

 平成29年度(2017年度)中央区各会計予算に対する日本共産党中央区議会議員団の態度表明を行います。
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まって4年になりますが、その行き詰まりと破たんは明らかです。
 「賃金が上がらないのに物価が高くなった(50代)」、「勤務先の業績悪化のため、昨冬よりボーナスがカットになりました(50代)」、「保険料UP、年金目減り、物価高、高齢者にとって最悪な国(60代)」、「もう年金削減だけは勘弁して下さい。老体にムチを打って働いているが、年金だけでは生活できない(70代)」など、今区議団が取り組んでいる区民アンケートに寄せられた区民の悲痛な声です。
 
 安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすという掛け声のもと、日銀の「異次元金融緩和」や3年間で4兆円もの企業減税によって、大企業は3年連続で「史上最高益」を更新し、大株主等富裕層にも巨額の富をもたらしました。
 しかし、労働者の実質賃金は、3年のうちに、年額で17万5千円も減り、家計消費は実質16か月連続で対前年比マイナスとなっています。「アベノミクス」は、格差と貧困をいっそう拡大し、社会と経済の危機をさらに深刻にしています。超富裕層がますます富み、国民全体の所得が低下しています。
 
 安倍首相は、「日米同盟第一」の立場で、世界でも異常な米国追随の姿勢を鮮明にしています。来年度の軍事予算総額は5兆1251億円と、3年連続で過去最高額を更新し、日米地位協定の負担原則に反する「思いやり予算」は3985億円にものぼります。その一方で、社会保障費の「自然増」分を1400億円抑制し、社会保障の各分野で国民に負担増と給付減を強いています。
 
 また、「テロ対策」の名で国民を欺き、思想や内心を取り締まるとする共謀罪は、物言えぬ監視社会をつくる現代版「治安維持法」です。法案提出の断念を強く求めます。安保法制のもと、南スーダンに派遣されている現地の自衛隊「日報」が明らかになり、戦闘ではなく衝突と強弁し、憲法9条違反の実態を覆い隠しています。政府の説明はウソ偽りであったことがはっきりしました。
 安倍政権は経済の問題でも、政治の問題でも、迷走を始めています。
 
 都政では、昨年7月に誕生した小池都知事は、当初予定していた11月7日、築地市場の豊洲への移転を延期しました。日本共産党都議団の調査で、豊洲新市場の安全対策の柱である、建物下の盛り土がされていなかったこと、地下水管理システムが稼働していないなど、ずさんな工事であったことが明らかになりました。9回目の地下水のモニタリング調査結果で、環境基準を大幅に超えるベンゼンやシアン化合物等の有害物質が残っていることが明らかになりました。
 豊洲の土壌汚染が解消されない中、移転そのものの是非が改めて問われています。「築地女将さん会」のアンケートで水産仲卸業者の7割が反対を表明しています。築地市場の豊洲への移転は中止すべきです。
 また、都の新年度予算では、保育園の待機児解消策や都立高校生への給付型奨学金の創設など、都民要求を反映し前進していますが、一方で、住民の強い反対がある特定整備路線など幹線道路計画をはじめ、大型開発を推し進める内容となっています。また東京五輪の高額な施設整備費は抜本的に見直す必要があります。
 
 このような国政・都政のもとで、区民に一番身近な自治体である中央区が果たさなければならないのは、国や都の悪政に対して防波堤となり、区民福祉の増進を図ることを基本に、区民生活を守ることです。
 
 中央区の新年度の一般会計予算は、前年比3億円増の953億円となり、7年連続の過去最大の予算規模となっています。
 区長の所信表明では「20万都市への幕開け」とし、「これまで積み立てきた基金などを有効活用」を行い、積極的に予算編成を行ったとしていますが、区民生活を守る予算になっているとはいえません。
 新年度予算案は、市街地再開発事業・7事業に前年比10億円増の134億円を充てるなど国や都の方針に沿って「国際競争力を高める」都市づくりをより一層すすめようとしています。
 一方、「基金残高が4年連続減少する一方で、特別区債残高が5年連続増加するなど、財政的な余力が縮小傾向にある」ことなどから、区民施設の民間開放やアウトソーシングすすめ、歳入の確保のひとつとして、区民には「受益者負担の適正化」をすすめるとしています。

 日本共産党区議団は、昨年2016年9月26日、毎年行っている区民アンケート等に寄せられた切実な要求や政策的な要望を集約した505項目の「2017年度中央区予算編成に関する要望書」を区長に提出し、積極的に予算化するよう求めてきました。
 本予算特別委員会では、各款について詳細に質疑し、問題点を指摘するとともに、具体的な提案を行ってきました。さらに、区民の命と生活を守る施策を予算化するという基本に立って、費用弁償の廃止等や交際費などの経費の縮減でムダを省き、簡素で効率的な区民本位の行財政運営を図ること。一人親家庭への家賃助成制度やスクールソーシャルワーカーの増員や歳末見舞金の廃止を中止することなどを内容とする予算修正案を提案しましたが、残念ながら他会派から賛同を得られず、わが党の修正案は否決されました。
 本予算案には、スクールソーシャルワーカーの小学校への配置、みんなの食堂への支援、防災アプリ、寡婦控除みなおし適用等の実施など、前進した施策もありますが、本予算を検討した結果、日本共産党中央区議会議員団は、議案第1号、議案第2号、議案第3号および議案第4号の各会計予算案に反対します。以下、その理由を述べます。
 
 まず、一般会計予算案についてです。
 第一に、新年度予算総額の32%の278億円が環境土木費と都市整備費で、その半分近くの134億円が市街地再開発事業7事業に充てられています。規制緩和による超高層ビル・タワー型マンションを林立させる大規模再発開事業やマンション建設が進められ、急激な人口増による施設不足や,地球温暖化に拍車をかけるCO2増大などの課題は深刻化する一方です。大規模開発優先のまちづくりを見直し、持続可能な、区民本位のまちづくりへ転換すべきです。
 
 第二に、築地市場の豊洲への移転について、都知事の早急な決断を求める発言ばかりで、食の安全・安心第一の立場に立っていません。「土壌汚染対策の科学的な証明」や「市場関係者や消費者の理解」が得られていない築地市場の豊洲への移転は問題です。現在地再整備の原点に立ち戻るべきです。
 
 第三に、区立駐輪場利用の有料化により、駐輪場管理運営費は有料化前よりも増えたにもかかわらず、登録台数は減ってしまいました。結果として区民負担は増大していることになります。区民の合意形成をはかるため、また意向調査のため、アンケートなどで区民の声を聞き取り、自転車施策に生かすことを再三求めましたが、消極的です。区民からの理解を得られていない区立駐輪場は無料に戻すべきです。
 
 第四に、住民票などの自動交付機の運用を終了させ、常に情報漏えいの危険がつきまとうマイナンバーカードによる住民票の写しなどのコンビニ交付サービスなど、利用を進めようとすることは問題です。マイナンバーカードを持つことを望まない人をもカード作成へと強引に誘導するやり方はやめ、自動交付機による交付を継続すべきです。
 
 第五に、格差と貧困が拡大しているもと、生活保護世帯への夏期・歳末見舞金の段階的廃止は、生活困窮者をさらに追い詰めるもので、廃止は中止すべきです。
 
 第六に、情報公開手数料を無料にすることを求めましたが、閲覧を申請しているのは多くが事業者だとして、区は有料の継続に固執しています。区民が区政情報にアクセスしやすくし、区政の透明性をはかるためにも、情報公開手数料は無料にすべきです。
 
 第七に、人口が急増し、多様化する区民サービスの需要に対応するため、大幅な区職員の増員・育成に力を注ぐべきです。個人情報を扱う業務の7割が民間委託されている現状も個人情報保護の面から問題です。業務の外部委託や非常勤職員の増員に依らず正規職員を増やし、区職員の経験や知識を蓄積することが、区民サービスの向上につながります。
 
 第八に、就学援助の入学準備金前倒し支給や学校給食費の無料化など、保護者負担の軽減に消極的です。区は、システム改修が難しいと繰り返しますが、前倒し支給を独自に実施している自治体が全国で拡大しており、こうした自治体はシステム改修の問題はクリアしています。中1のみならず、小1も対象とすることに踏み出した自治体からも学ぼうという姿勢は見られず、国任せの態度は問題です。
 
 第九に、公衆浴場を、地域コミュニティ形成の場として、また介護予防サービスの地域支援のひとつとして位置づけし、公衆浴場の維持に務めるべきです。公衆浴場経営者との係わりを密にし、浴場利用者の声を日常的に聞き取る努力が求められます。民間ビルの中に公衆浴場を再建した入船湯の経験なども生かし、後継者不足や利用者減といった課題を解決するため、知恵を尽くすべきです。
 第十に、新年度の認可保育園の待機児は792人に、一歳児以下は510人にも上っています。保育園待機児対策が不十分です。
 
 第十一に、ひとり親家庭などへの家賃補助や低家賃住宅の供給など、生活困窮者に対する住宅施策が不十分です。中央区ひとり親住宅、高齢者向け有料賃貸住宅などはどれも倍率が30倍を超えており、低家賃住宅を望む声は多く聞かれます。住宅費がとりわけ高い中央区で、区として住宅供給に努めるべきです。
 
 第十二に、区内保育園での安全対策強化にさらに力を入れるべきです。区内の事業所内保育所で起きた乳児の死亡事故を教訓に、保育園巡回指導にあたる職員数を増やし、無認可の保育施設も対象として訪問・相談活動に力を入れ、区内での死亡ゼロを目指すことが求められます。
 
 第十三に、区内飲食店での禁煙対策を強化するなど、区として受動喫煙をなくしていく努力が求められます。禁煙にしたからといって飲食店での売上げが減ることはないという、九州看護福祉大学の調査結果や、受動喫煙防止条例を制定した神奈川件、諸外国での例を周知するなど、禁煙後進国からぬけだす一歩を、飲食店数が多い中央区だからこそ踏み出すべきです。
 
 第十四に、英語教育の推進により小学校教員が新たに英語を教えることや、部活動顧問の土日出勤などにより、教員の負担は年々重くなり、教員は授業準備もままならない状況に置かれています。子どもと向き合える時間を確保し、子どもにとってよい教育を実践するためには、教員の多忙解消が急務です。
 
 次は、特別会計予算についてです。
 国民健康保険会計は、2018年度からの広域化に向け、新年度も値上げが予定されています。滞納世帯は年々増加してきています。滞納世帯の9割を超える所得300万円以下の世帯です。また、モデルケースで明らかになった国保料は、年収の1割を超えるという高額な国保料は異常です。所得が増えない中で保険料負担だけが増えています。高すぎる保険料を払えない滞納世帯が増加しています。病気になっても病院にかかれない事態をなくすため保険料の引き上げは止めるべきです。また、多子世帯均等割額を軽減すべきです。
 
 介護保険会計は、一定の所得以上の人の利用料を3割負担にし、介護「軽度者」の生活援助サービスの予防給付外しが行われた上、「かかりつけ医」以外を受診した場合の窓口負担上乗せなどをはかろうとしています。必要な時に介護サービスが受けられない、介護保険制度の改悪は問題です。
 
 後期高齢者医療保険制度は、保険料のアップ、70才以上の高額療養費の負担上限引き上げなどが狙われています。今年4月から低所得者に対する保険料の軽減措置を縮小します。所得に応じて支払う所得割は,5割軽減から2割軽減に縮小。被用者保険加入者の扶養家族から後期に移られた人の保険料の定額部分も9割軽減だったものが7割軽減に減らします。年齢「医療費の適正化」の名のもとで、医療費の削減を行い、医療内容の差別化を行い「姥捨て山」とも言うべき制度です。年齢を重ねただけで、今まで入っていた国保や健保から追い出し、高い保険料と安上がりの差別医療を押しつける制度は、即刻廃止すべきです。
 
 以上、議案第一号、議案第二号、議案第三号および議案第四号の各会計予算案に対する反対理由を述べ、日本共産党中央区議会議員団の態度表明を終わります。

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