平成28年度中央区各会計決算の認定に対する態度表明

2017年10月13日 小栗智恵子

 平成28年度中央区各会計決算の認定に対する日本共産党中央区議会議員団の態度表明を行ないます。
 本決算特別委員会の最中、森友・加計疑惑隠しの国会冒頭解散による衆議院選挙が公示されました。
 安倍政権の「アベノミクス」によって、株価は2倍に上がり、円安差益や大企業減税で、富裕層や大企業は巨額の利益をあげましたが、賃金は上がらず、消費税増税と社会保障改悪の連続による負担増で、国民のくらしは痛めつけられ、格差と貧困はますます拡大しました。働く人の実質賃金は、安倍政権のもとで年間10万円も減り、家計消費は1世帯当たり年間22万円も落ち込んでいます。賃金と消費は経済の土台です。ここが細ってしまっていては、日本経済は良くなりません。
 労働環境も厳しさを増し、非正規雇用が拡大するとともに、長時間、過密労働が横行しています。10月6日、大手広告代理店「電通」の過労自殺の裁判で労働基準法違反を断罪する判決が出ましたが、安倍政権が選挙後に提出しようとしている「働き方改革推進法案」は長時間・過密労働の是正に背を向け、過労死ラインの残業時間を公的に容認する「過労死促進法案」といえるものです。
 安倍首相は、今度の選挙で2019年に消費税を8%から10%に引き上げることを公約に掲げていますが、委員会の質疑の中で、中央区の財政に及ぼす法人住民税の一部国税化の影響は、消費税率8%段階で13億円、10%に引き上げられた段階では20億円ものマイナスの影響が想定されることが明らかとなりました。消費税増税は、地方財政にも大きな影響を与えるものとなります。
 社会保障費は削減の一方で、軍事費は5年連続で増えており、2018年度予算概算要求では、北朝鮮核・ミサイル開発を口実にした「ミサイル防衛」費を大きく増額させるなど、総額で5兆2000億円を超えています。
 集団的自衛権の行使容認、戦争法である安保関連法や「共謀罪」法の強行など、憲法破壊を繰り返し、アベノミクスの失敗のツケを国民に押しつける安倍政権に、区民の暮らしも日本経済も任せることはできません。
 都政の問題では、小池都知事は2016年11月の築地市場の豊洲への移転を延期しましたが、豊洲市場の「無害化」という東京都の約束、「食の安全・安心」という都議選での公約を放り投げ、都政の「情報公開」「見える化」という公約を裏切って、都議会での議論を封殺し、問答無用の態度で豊洲移転をごり押ししています。業者のみなさんから厳しい批判が起こり、都政運営が立ち行かなくなる行き詰まりに直面しています。
 中央区に求められるのは、こうした国や都の悪政から区民生活を守る「防波堤」の役割をしっかり果たし、住民の福祉の増進をはかるという「地方自治の本旨」に基づく区政運営をおこなうことです。
 日本共産党区議団は、2015年9月に517項目の「2016年度中央区予算編成に関する重点要望書」を区長に提出し、2016年度予算を審議した予算特別委員会では、問題点を指摘するとともに具体的な提案を行い、予算修正案も提出しました。
 日本共産党区議団は、これらの経緯を踏まえ、2016年度決算の各款について詳細に質疑し、予算執行が適切だったかどうか検討した結果、様々な問題があると判断しました。
 よって、日本共産党中央区議会議員団は、平成二十八年度各会計決算の認定について反対します。以下、特徴的な問題について述べます。

 まず、一般会計決算についてです。
 第一に、決算規模は過去最大の967億2138万円となりました。その内28.9%、279億6千万円が土木建築費で、その半分52%、144億8千万円が市街地再開発事業に充てられました。土木建築費が民生費(241億1千万円・構成比24.9%)を上回るという23区でも特異な自治体となっています。
 第二に、規制緩和による超高層ビル・タワー型マンションを林立させる大規模開発が区内で31も進められており、急激な人口増による保育園や高齢者施設などの不足や、地球温暖化に拍車をかけるCO2増大などの課題は深刻化する一方です。マンションやオフィス需要の縮小で供給過剰となるリスクを踏まえ、持続可能で区民本位のまちづくりへと転換する「新たな舵取り」が求められます。
 第三に、住民情報システムの運用に、2016年度7億7千万円支出していますが、マイナンバーカードの発行は本年8月までで21,000枚にとどまっています。住民票や印鑑証明書のコンビニ交付を始めましたが、利用率は1.8%とわずかです。個人情報漏えいの危険の高いマイナンバー制度は中止すべきです。
 第四に、個人情報を取り扱う業務の7割が民間委託されている現状は、個人情報保護の面から問題です。PFI事業や指定管理者制度など民間事業者に施設の管理・運営を任せるアウトソーシングも拡大しており、そこで働く職員の労働環境整備の促進も重要な課題となっています。
 第五に、待機児対策のため、株式会社が運営する認可保育所を5カ所誘致しましたが、待機児は前年度よりさらに増え、本年4月時点の待機児は324人となりました。保育所増設を企業任せにせず、区の責任で、保育の質を確保し、学校施設並みに力を入れて整備することに知恵を尽くすことを求めます。
 第六に、駐輪場の使用料収入は予算で見込んだ59.8%と低く、自転車撤去保管手数料は予算比で135%となっています。駐輪場を有料化したため利用が伸びず、放置自転車も増加していることを示しています。施行前に区民や自転車利用者の意向、利用実態の事前調査が不足した結果です。区民や利用者と区立駐輪場のあり方を再検討することを求めます。
 第七に、豊洲市場の「無害化」という東京都の約束を反故にし、「築地を守る」という内容についても地元区に全く説明もない小池都知事に対し、豊洲移転計画は中止するよう求めるべきです。
 第八に、借上住宅は、グリーンホームズと晴海三丁目まちづくり支援用施設で空室率が20数%にのぼり、借上住宅全体で2億8千万円の赤字になっています。空室は区営住宅として低所得者層へ貸し出すなど有効活用すべきです。
 第九に、学校教育で大きな課題となっている教員の多忙化が解消されないどころか悪化していることは問題です。授業の準備もままならない長時間労働の改善のため、事務などの職員や非常勤講師を増やすだけでなく、35人学級の完全実施など教員定数の改善を国に強く求めるべきです。
 第十に、就学援助の入学準備金は、区独自に標準服代の上乗せ支給を行っていますが、必要になる時期に支給する他区の状況を把握していながら、所得の認定やシステム変更などを理由に入学前支給に後ろ向きなのは問題です。
 
 次は、特別会計決算についてです。
 国民健康保険は、決算年度にも保険料が値上げとなり、滞納世帯は21.26%になっています。新年度から予定される広域化にむけた検討の中で、保険料が1・2倍になる試算も出されています。「国民皆保険制度」を破壊しかねない保険料の引き上げを行わない努力をすべきです。
 介護保険は、2016年度から要支援1、2の生活支援サービスを介護予防給付から外し、総合事業に移行する制度が始まりましたが、利用者の緩和型のサービスへの移行は進んでいません。質の高い介護サービスを充実させていくことが求められます。
 後期高齢者医療保険は、決算年度、均等割額も所得割率も引き上げられ、保険料が上がる層がほとんどでした。新年度からの保険料も引き上げが検討されています。保険料が上がり、年金受給額は下がる一方で、高齢者の生活は厳しくなるばかりです。年齢で別立ての医療保険に囲い込む差別医療制度は廃止すべきです。
 
 以上で、「平成二十八年度中央区各会計歳入歳出決算の認定について」反対する、日本共産党中央区議会議員団の態度表明を終わります。

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