「中央区基本構想」に対する保留の発言

2017年6月19日 日本共産党区議会議員 奥村あきこ

 「中央区基本構想」の採決にあたって発言します。
 議案第二十六号「中央区基本構想」の第1章「基本構想の策定にあたって」の「1 新たな基本構想策定の背景と目的」に、「急激な人口増加に伴い、子育て、教育、高齢者福祉などさまざまな分野で行政需要が拡大しています。」と記されていますが、「急激な人口増加」のために、区民ニーズへの対応や生活インフラの整備が追い付かず、今回の「基本構想」で解決しなければならない課題としてあがったことは、区が「基本構想」と「基本計画」にもとづき、「東京一極集中」を促進してきた結果でもあります。

 2月9日に開かれた第1回「中央区基本構想審議会」で、わが党の志村たかよし委員は、急激な人口増とそれに伴う生活インフラ整備の遅れの検証が必要と考え、「一極集中の是非も加味した議論が必要」と提案しましたが、それに対し、会長職務代理の市川委員は、「一極集中の良しあしではなく、集中してきた事実を踏まえて未来を考えたい」と反論し、残念ながら、「審議会」は、これまでの20年間の中央区行政の検証なしに、一極集中のまちづくりを前提とした議論になってしまいました。

 国や都の上位計画を忠実に具体化し、一極集中のまちづくりを進めてきた中央区が今回の「基本構想」で、小池都知事が「2020年に向けた実行プラン」で打ち出した「スマートシティ」という言葉を使いました。
 「中央区基本構想」の「第2章 中央区の将来像と基本的な方向性」の「2 将来像の実現に向けた基本的な方向性」で一番最初にあげられているのが「(1)『中央区スタイル』を確立し、世界に輝く東京を創造」であり、そのなかで、「先進的なスマートシティの実現など最先端都市モデルを構築していきます」と記されています。
 都が規定する「スマート シティ」は、「成長を続け活力にあふれる、世界に開かれた、環境先進都市、国際金融・経済都市」となっており、都の「2020年に向けた実行プラン」のなかの「スマートシティ」の方向性は、「スマートエネルギー都市」「快適な都市環境の創出」「豊かな自然環境の創出・保全」「芸術文化の振興」など支持できる内容があるものの、「アジア・ナンバーワンの国際金融都市の実現」「特区制度等の活用による外国企業誘致の加速化」「多様な都市機能を集積したまちづくり」などが示されています。
 これはまさに、「東京一極集中」と「大企業に奉仕する施策」をこれまで以上に促進させることだと言えます。

 このような「世界をリードするまちづくり」「国際競争に勝つまちづくり」をこれから、20年間も求め続けなければならないのでしょうか。
 このようなまちづくりを進めれば、20年後に新たに「基本構想」を策定するときに、一極集中のまちづくりの負の結果として生まれる、急激な人口減少や高齢化、建物の老朽化、空きビル、空きオフィス対策、などに対する課題に取り組まなければならなくなります。

 日本共産党は、都市における企業活動を支援することにたいしすべてを否定するものではありませんが、「スマートシティ」の名のもとに、「東京一極集中」と「大企業に奉仕する施策」をすすめることは、自治体が存在する第1の目的である「住民の福祉の増進をはかる」という点からみても認めることはできません。
 また、審議会における運営が、「結論ありき」と感じる場面も多々ありました。たとえば、「プロアクティブコミュニティ」という言葉について、委員から適切ではないのではという趣旨の様々な意見が出されても、結局この言葉を残しました。一方で、会議記録を読み返せば、各部会の委員から出された様々な「言葉の提案」などについて、市川委員によって即、却下された様子がいくつもうかがえます。
 ちなみに、「プロアクティブコミュニティ」という概念は、「広辞苑」にもインターネット検索でも出てこない外国の一部で使われている表現です。

 「基本構想審議会」では、きわめて熱心な議論が交わされ、積極的な意見や提案も数多くあり、その精神は新「基本構想」に含まれていると思います。

 今後の「基本計画」策定にあたっては、「審議会」での議論が無駄にならないよう要望します。

 日本共産党は、これらの点をふまえ、議案第二十六号「中央区基本構想」の賛否について保留します。

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