2017年3月1日

2017年 区議会第一回定例会 一般質問

日本共産党中央区議会議員 志村たかよし

【質問項目】

  1. 区長の所信表明について
  2. 木質・木造建築と「リノベーションまちづくり」について
  3. 「木育」と「本の森ちゅうおう」について
  4. 個人情報にかかわる業務委託について
  5. 築地市場移転問題について
  6. ヘイトスピーチ対策について
  7. 安倍政権のもとで進む「海外で戦争する国」づくりについて

 日本共産党の志村たかよしです。日本共産党中央区議団を代表して質問します。
 なお、再質問、再々質問を留保させていただきます。

1.区長の所信表明について

 まず、はじめは、区長の所信表明についてです。
 昨日の所信表明で区長は、「新年度予算は、『20万都市への幕開け』をテーマに、都心にふさわしい基盤づくりに重点を置きました。」と述べました。予算案を見ると大規模開発中心となる市街地再開発事業だけで、予算の「14%」を占め、昨年の「13%」を上回っています。金額においては、一般会計3億円の伸びに対して10億円の伸びとなっています。
 安倍政権が進める「国際競争力強化」のまちづくりと歩調を合わせた20万都市をめざす大規模開発中心のまちづくりは、想定通りにいく保証があるのでしょうか。
 日本共産党区議団が現在行っている「区民アンケート」には、20代女性の「保活真っ最中ですが、完全に出遅れてしまいました。保育園の早めの整備を祈ります」という声や70代の方の「中央区に長年住み、税金もきちんと払ってきた。施設や病院も少ない。長く住んだ人の優遇もあっていいのでは」という声、40代の方は「住んでいる私たちには、大規模開発は本当に迷惑です。」という声など、多くの方から区政への不満が寄せられています。
 区長は所信表明で、「乗り越えるべき新たな課題も生じている」として、人口増加に伴う教育環境の整備、子育て支援の充実、良好な地域コミュニティの形成などあげましたが、これは、大規模開発を促進し人口を急増させてきた、区、自らが作り出した課題です。
 その反省もなく、31もの大規模開発を軸に、20万都市という「量」を追い求めれば、「質」が追いつかず、区民の失望は、増すばかりです。
 そこでお聞きします。
 第1に、大規模再開発による環境変化や生活インフラ整備の遅れなどによって、既存住民にたいして負の影響を多大に与えていると思いませんか。
 第2に、2016年の中央区の人口増減は、転入・転出の対比は、58対42、日本橋と京橋は、55対45と拮抗しています。「あこがれ」が「失望」に変わって転出が増加すれば、大規模開発による人口増の想定は、破たんすると思いませんか。
 それぞれお答えください。
 区長は所信表明で、「思いやりのあるまち」として子育て支援、高齢者施策、障害のある方への施策は述べたものの、生活困窮者への施策は触れませんでした。
 それどころか、生活保護の夏と歳末の見舞金を段階的に廃止しようとしており、来年度は、歳末見舞金375万5千円を廃止するとしています。
 また、高すぎて暮らしを圧迫している国民健康保険料を、1万円近く値上げするとともに、税や保険料の滞納者には、督促・催告の強化、自動電話催告システムの導入、さらに、「法的措置への積極的な取組」を行なうとしています。
 滞納者の生活実態を無視した徴収強化はやめるべきです。
 いま、「見えない貧困」は、深刻で、スマホ片手に街を歩く若者の、6人に一人が貧困状態にあると言います。私たち日本共産党が、就学援助の入学準備金を入学前に支給することを求めても、区はシステム改修の必要性を理由に拒否しています。
 区には、区民生活を守る防波堤の役割を果たし、福祉の増進を図るという自治体本来の姿への転換が求められます。
 そこでお聞きします。
 アベノミクスの失政による格差と貧困が広がる中、生活困窮世帯への施策をどのように拡充するのですか、お答えください。
 新年度は、本庁舎整備や月島地区における区施設のあり方について調査・検討をおこなうとともに、八丁堀駅周辺施設の再編、「本の森ちゅうおう」の設計に着手するとしています。
 区長が所信表明で言った「多様化し高度化する行政需要に対応する」ための整備をすすめるためには、基本計画や基本方針策定という初期の段階から、ワークショップなどの区民参加による検討が欠かせません。
 区施設の調査・検討・再編計画における初期の段階からの区民参加について、区長のお考えをお聞かせください。

2.木質・木造建築と「リノベーションまちづくり」について

 次は、木質・木造建築と「リノベーションまちづくり」についてです。
 区長は、所信表明で「環境にやさしい『スマートシティ』の実現」を積極的に推進すると発言しました。
 私は、環境にやさしいまちづくりの実現には、木材の活用が効果的だと考えます。
 戦後、国の政策で、杉やヒノキなどの植林を進めてきましたが、樹木は大きく成長しました。いまその活用が課題となっており、国は、「公共建築物等木材利用促進法」を制定して、木建築の普及に取り組んでいます。
 日本の国土に占める森林の割合は、約7割で、フィンランドに次いで世界第2位です。
日本の都市では、非木造建築を中心とするまちづくりが進められてきましたが、持続可能な循環型社会の構築において、重要なファクターとなり得るのは、都市型木造建築物と言われています。中央区では、学校建築などに、木材を積極的に使っていますが、中央区のこれからのまちづくりでは、鉄とコンクリートのタワー型建造物でなく、中高層木造建築中心の持続可能なまちづくりを促進すべきと考えます。
 今では、耐震・耐火の技術も進化し続けています。
 タテ横交互に板を組み合わせて高い強度を持たせた「CLT。クロス・ラミネイティド・ティンバー」や、アーチ型で大空間を可能にする「シザーストラスアーチ」、木と鉄とコンクリートを合わせたハイブリッド工法や木とカーボンファイバーを組み合せた建材、江東区で建設中の有明第2小・中学校の木構造建築にも使われている、耐火性を高めた「燃(も)エンウッド」など様々な技法が研究、開発、実用化されています。
 ある大手ゼネコン(竹中工務店)は、「木造・木質建築推進本部」を立ち上げるなど、これからの日本の建築において木材の活用は注目されています。
 さて、地域の魅力や個性を生かしたまちづくりの例として考えたいのが、区内でもあちこちで目立ち始めた「リノベーション」です。
 たとえば、月島の路地で、少しづつ増えているのが、長屋などの木造家屋をリノベーションした個性的で魅力的な店舗です。路地、路地に新たな魅力が創出されていき、リノベーションが面的な広がりを持てば、西仲商店街のもんじゃ目当てだけではない幅広い集客の可能性も広がります。店舗に居住すれば、地域の活性化になり、リノベーションによるまちづくりは、区をあげて取り組むべきものだと考えます。
 草加市では、民間自立型まちづくり会社がリノベーションを通じてまちを再生しようと、草加市とリノベーションまちづくり協議会が共同で、補助金にできるだけ頼らない民間主導の公民連携でまちづくりにとりくんでいます。
 そこでお聞きします。
 第1に、区長の言う「環境にやさしい『スマートシティ』の実現」と木材の活用についてどのような認識をお持ちですか。
 第2に、中央区における中高層の都市型木造建築物を中心とするまちづくりと「リノベーションまちづくり」についてどのような見解をお持ちですか。それぞれお答えください。

3.「木育」と「本の森ちゅうおう」について

 次は、「木育」と「本の森ちゅうおう」についてです。
 中断していた「本の森ちゅうおう」計画が動き始め、図書館、郷土資料館、生涯学習機能を内容とする方向性が示されました。より良い施設とするための区民参加による検討が必要と考え、私からも提案させていただきます。
 まず、施設の核となる図書館についてです。
 これまでの計画では、図書館に指定管理者制度を導入するとしていましたが、計画を見直すこの際に、指定管理者制度導入は中止すべきです。
 社会教育調査(2011年度)によると、全国の図書館への指定管理者制度導入は、10.7%と低く、他の社会教育施設に比べて、職員の果たす役割が大きいこともあり、指定管理者制度が導入しにくい施設となっています。
 図書館業務は、単なる受付業務ではなく、利用者の相談にも応える業務となっているので、資料についての豊かな知識が求められます。
 そのため、スキルがそなわった職員の安定雇用が求められますが、指定管理者制度では、短期雇用にならざるをえなくなり、官製ワーキングプアも生まれます。
 佐賀県武雄市の図書館の指定管理者が本の購入などで批判を浴びたように、利益を追求する民間企業には、収入を生まない図書館はなじみません。
 図書館に指定管理者制度を導入すれば、自治体から、計画作成能力と図書館奉仕を行う能力が失われ、地方行政から図書館経営の能力が失われていくとの指摘もあります。
 このように指定管理者制度は、公立図書館の運営と相いれません。
 また、利用者は、図書館の重要な構成要素と言われ、より良い図書館づくりのためにも、住民や利用者の図書館への参加が大切になっていると言われています。
 そこでお聞きします。
 第1に、教育機関であり、その事業の継続性、蓄積性、安定性が求められる図書館への指定管理者制度の導入は中止すべきだと思いますが、いかがですか。
 第2に、区民参加による「図書館づくり」をどのようにお考えですか。
 それぞれお答えください。
 所信表明で区長が示した「本の森ちゅうおう」の「図書館機能を中心に、エリア全体で出会い・発見・交流ゾーンを形成するというコンセプト」は、ブーケ21や敬老館から続く、桜川公園から「本の森ちゅうおう」まで、緑の連続性を考慮した植樹や、「本の森」の名にふさわしい、都心のオアシスにもなる木に囲まれた図書館が目に浮かびます。
 そこに、檜原村や「中央区の森」などの多摩産材が使用できれば最高です。
 木に親しみ、木を活かし、木と共に生きていく「木育」について、2015年第3回定例会で取り上げたとき、区長は、「感性豊かな心の発達を促すとともに、国産材の利用促進による森林業の活性化や地域経済を潤わせる効用がある」との認識を示しました。
 その時、「中央区の森」がある檜原村でウッドスタートを始めたことを紹介しましたが、今は、さらに発展して、檜原村は、日本で初めて「トイビレッジ構想」を制定し、2019年9月に檜原おもちゃ美術館をオープンする計画が進んでいます。
 「本の森ちゅうおう」館内には、木に包まれる魅力的な読書室とともに、檜原村トイビレッジ構想や檜原おもちゃ美術館の協力と連携によって、大人も子供も対象とした「木育コーナー」やおもちゃ美術館、木のおもちゃの部屋が設置できれば、「本の森ちゅうおう」と「中央区の森」のつながりが生まれます。
 そこでお聞きします。
 第1に、桜川公園の緑と連続性を持った植樹、木材を活用した施設、木に囲まれて本が読める図書館についてどう思いますか。
 第2に、「木育コーナー」やおもちゃ美術館、木のおもちゃの部屋などの設置について、いかがお考えですか。
 第3に、先に紹介した区長答弁を踏まえ、「木育」を区の施策として位置付けることが望ましいと思いますが、いかがですか。それぞれ見解をお聞かせください。

4.個人情報にかかわる業務委託について

 次は、個人情報にかかわる業務委託についてです。
 中央区の業務が委託されている会社で働くスタッフの方から、個人情報の取り扱いを心配する相談がありました。私は、その方からお話を聞くとともに、委託会社の担当者同席で聞き取りを行い、区の経理課長にも事実確認をしていただいて、相談内容がほぼ正しかったことがわかりました。
 今回、明らかになったのは、委託会社は、区役所に派遣する労働者に、個人情報保護法の説明や業務における心構えなどの事前研修は行わず、「個人情報に関する誓約書」にサインをするだけで、事前研修を行ったとしていることでした。委託会社は、資料を自宅に持ち帰り業務を行うことを指示し、仕事中のスマートフォンの使用を禁止していません。パソコンは委託会社の持ち込みで、職員がチェックすることはないとのことです。その上、マニュアル・手順書には、区民の個人情報が使われていました。マニュアルにある個人情報については、区が確認し、黒ぬりの処置をしました。
 また、書類を保管する場所が不足しており、仮置きの状態だそうです。
 中央区では、指定管理者制度の導入や業務委託によるアウトソーシングが進んでいますが、区役所の仕事にはたくさんの個人情報が集中しており、個人情報の漏洩、流出、悪用が危惧されます。中野区では、マイナンバーを扱う業務につく臨時職員が、3800回にわたり個人情報にアクセスし、一人暮らしの女性を次々と狙った容疑で逮捕されました。よその自治体で個人情報の漏洩や悪用した事件が報道されるたびに、「中央区は大丈夫なのか」と心配します。
 新年度予算で約1億6000万円かけ「OAパソコンのデスクトップの仮想化を図り情報漏洩対策を強化する」としていますが、それで、不安が払しょくされるものではありません。
 そこでお聞きします。
 第1に、中央区において、個人情報を取り扱う業務における民間委託の割合はどの位ですか。
 第2に、入札時に、個人情報の事前研修を条件にしているのですか。また、委託業者の事前研修の有無を把握しているのですか。
 第3に、委託会社の個人情報の扱いについて、どこが責任を持ち、どのように徹底しているのですか。また、個人情報が不適切に取り扱われた事例は、ここ数年でどの程度ありますか。
 第4に、個人情報を扱う業務中の、委託業者や派遣労働者のスマートフォン使用は、情報漏洩の危険が高いと考えます。適切な対応が求められると思いますが、いかがですか。
 第5に、事故を未然に防ぐためにも、資料の収納スペースを十分に設置すべきと思いますが、いかですか。それぞれお答えください。

5.築地市場移転問題について

 次は、築地市場移転問題についてです。
 築地市場の豊洲移転問題を調査する都議会百条委員会の設置が決まり、証人喚問を3月の4日間で行うことになりました。豊洲移転は、石原慎太郎元都知事などが、深刻な土壌汚染を知りながら強引に土地を買収し、6千億円もかけて進めてきたものであり、その責任は重大です。
 日本共産党は、強力な権限を持つ百条委員会の設置をいち早く提案してきましたが、今回、反対していた他の党も設置に合意しました。
 豊洲新市場の予定地は、もともと東京ガスの工場跡地という土壌汚染が深刻な場所で、生鮮食料品を扱う市場にしてはいけない所です。
 東京ガス豊洲工場で働いていた元社員の話を聞く機会がありましたが、豊洲工場では、石炭からガスを製造する過程で発生するガス以外の気体は、煙突から排出され、東京の空を汚しました。固形物のコークスは、山となって積まれていました。液体のタールなどは、おがくずを敷いて地中に直接流し込んでいたといいます。
 上の方の土をきれいにしただけでは、地中にタールなどの汚染物質が含まれる廃棄物が残っているのです。調査すれば、有毒物質が検出されるのも当然です。
 環境基準値の79倍のベンゼンや、出てはならないシアン化合物やヒ素が検出されたことが、1月14日に公表されたことを契機に移転中止の世論が広がり続け、移転中止の検討が避けられない状況がうまれています。
 2月18日、「豊洲移転中止署名をすすめる会」が呼びかけで、築地4丁目交差点に集まった2500人の人たちが署名やリレートークの大デモンストレーションを行い、労働組合は移転反対のパレードをしました。
 千代田区長選挙の出口調査(共同通信)では、「移転は断念すべき」が50%、「豊洲に移転すべき」が35%という、情勢の激変を感じさせる結果が出ています。
 東卸の理事長選挙では、移転慎重派の候補が76%の支持で圧勝しました。
 新理事長は、記者会見で、「私たちはあくまでも、築地で働く市場の仲卸であるということ。これを大前提としたこれからの方向性をみんなで話し合っていきたいと思います」と述べています。
 そこでお聞きします。
 第1に、豊洲移転をめぐる現在の都議会の動きについてどのような見解をお持ちですか。
 第2に、モニタリング調査の衝撃的な結果をふまえ、豊洲の土壌汚染についてどの様な印象をお持ちですか。
 第3に、「移転反対」の世論の広がりをどう感じますか。
 それぞれお答えください。
 「小池都知事に、早く決断してほしい」と悲痛な声が、市場業者から聞こえます。都議選後を待つのではなく、一刻も早く、移転中止を決め、そのための対応策をとらなければ、傷口は、広がり続けてしまいます。
 「移転中止」を小池都知事に早く決断させるために、いまこそ、築地市場がある地元中央区が小池都知事に働きかけるときです。
 2001年7月、濱渦副知事が区長を訪問して移転への協力を要請した(区の経過報告に記載)直後の8月に、「断固反対する会」は「築地市場再整備に関する声明」を発表し、「移転候補地は、生鮮食料品を扱う市場とは相いれない土壌汚染という重大な問題を抱えており、消費者の不安は容易にはぬぐえない。」「揺るぎない築地市場の優位性を無視し、具体性のないまま移転を推し進めることは、地域に混乱と不信を増加させ、先人の努力の積み重ねによって築き上げられてきた歴史や文化を冒とくするものであり、到底都民の理解を得られるものではない。」と都に厳しく抗議しました。
 なんと素晴らしい「声明」でしょう。区長と区議会、市場関係者と区民が一つになって、東京都と対決した画期的なものです。基礎自治体のあり方、本来の自治体の姿を示した歴史的なたたかいと言っても過言ではありません。
 日本共産党中央区議団は、移転反対を鮮明にしたこの「声明」の立場を堅持し続けています。
 そこで、かつて移転反対の立場に立っていた区長にお聞きします。
 第1に、小池都知事が行う決断について、区長は、豊洲への「移転の決断」または「移転の中止」のどちらを望んでいますか。
 第2に、豊洲移転をめぐる現状をみると、この「断固反対する会」の「声明」の内容は、今も生きていると思いますが、いかがですか。
第3に、区長は、現在行っているモニタリング調査によって汚染物質が検出された場合、2001年の「声明」の立場に立ち戻った意思表明を早急に小池都知事に行うべきだと考えますがいかがですか。
 それぞれお答えください。

6.ヘイトスピーチ対策について

 次は、ヘイトスピーチ対策についてです。
 中央区には、中国、韓国、朝鮮の方など4635世帯、6176人(1/1現在)の外国人が住民基本台帳に登録されています。
 区長が所信表明で言った「誰もがあこがれ住んでみたいと思えるまち」を作るために、ヘイトスピーチ対策は避けて通れません。
 特定の民族や国籍の人々を激しい言葉で攻撃し、差別や憎悪をあおる表現として社会問題となっているヘイトスピーチ、ヘイトデモにたいする行政の対応は、大きな課題になっています。
昨年6月3日に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が公布・施行されました。
 この法律は、ヘイトスピーチ・ヘイトデモなどの解消に向けた取組について、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、基本施策を定め、これを推進しようとするものです。
 基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとし、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしています。
 昨年12月に法務省は、「ヘイトスピーチ解消法」の解釈指針となる「参考情報」を、ヘイトデモ・街宣で深刻な被害が生じている全国13自治体に提示しました。ここには、中央区も含まれています。その後、「参考情報」は希望する70自治体に提供されています。
 地方自治法244条2項では「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」としていますが、「参考情報」では、解消法を指針に「正当な理由」があると認められる場合、利用を拒むことができるとしています。
 つまり、「正当な理由」があるかどうかを、「不当な差別的言動は許されない」とした解消法の理念を指針として判断することができ、脅迫的言動や、昆虫や動物に例える著しい侮辱、「町から出ていけ」などの排除をあおる文言が当てはまるとしています。 
 例えば、公園など公共施設を利用しヘイトスピーチが行われることが予想される場合、法の理念を判断指針に「正当な理由」が認められれば、利用を拒むことができます。
 ヘイトスピーチ解消法の理念が、本当の意味で実現されるためには法律ができることによる社会の変化を、それぞれの地域が体現していくことが不可欠です。
 2月4日、川崎市で開催された集会でジャーナリストの安田浩一さんは、「ヘイトデモは、差別の対象となる当事者だけでなく、地域を、社会を壊す。私たちには人と社会と地域を守り抜く義務がある」と講演し、条例制定の必要性を訴えました。
 そこでお聞きします。
 第1に、「ヘイトスピーチ解消法」で示されている「当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めること」をどう受け止めていますか。
 第2に、「参考情報」に基づき、区はどのような対応をとるのですか。また、条例制定について、どうお考えですか。
 第3に、中央区人権擁護委員会では、「ヘイトスピーチ問題」がどのように審議されているのですか。
 それぞれお答えください。

7.安倍政権のもとで進む「海外で戦争する国」づくりについて

次は、安倍政権のもとで進む「海外で戦争する国」づくりについてです。
 区長が所信表明で言及した「世界で最も安全で安心な都市『東京』」と成りえたのは、戦後、平和憲法のもとで、日本が歩んできたからにほかなりません。
 安倍政権は、この平和憲法を踏みにじって、日本を「戦争する国」に変えようとしていますが、そのやり方は、ウソ偽りで国民を欺くものです。
 たとえば、破棄していたと政府が答弁していた陸上自衛隊南スーダン派遣施設隊「日報」が存在していた問題です。
 「日報」(2016年7月11日付)には、自衛隊宿営地のすぐ目の前のビル付近で、日没まで激しい戦闘があったことが記されています。「日報」に基づき、上級部隊の中央即応集団司令部が作成した「モーニングレポート」(翌12日)には、「7日の銃撃戦を発端とした政府軍と反主流派の衝突は、ジュバ市内全域の戦闘へと拡大。戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘が確認される等、緊張は継続」と記述しています。
 この「日報」や「モーニングレポート」で報告された内容を隠したまま、安倍首相は、「戦闘行為ではなかった。衝突、いわば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」(2016年10月参院予算委員会)と説明し、自衛隊の派遣延長と駆け付け警護などの新任務付与を強行しました。
稲田防衛相は、衆院予算委員会(日報が公表された翌8日)で、「戦闘」という言葉を使わない理由を「憲法九条の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突と言っている」と説明しました。つまり、自衛隊の南スーダンPKOへの派遣が、憲法九条違反になるので、「戦闘」を「武力衝突」という言葉に置き換えたというのです。
 南スーダンは、現在、「停戦合意が成立していない」「自国民を虐殺している現政権は国と言えない」「日本政府は現政権を支持しており、中立とは言えない」という状況で、PKO参加5原則は完全に崩れています。歴代自民党政権で、安全保障を担当してきた柳澤協一氏も「今の南スーダンの現況は、PKO参加5原則を満たしていない」と指摘しています。アメリカさえもPKOを送っていないのです。
 南スーダンの現実を直視しないばかりか、自衛隊派遣を正当化するために情報を隠す日本政府の姿勢は、現地で活動する自衛隊員たちの命を危険にさらすことになります。自衛隊をただちに撤退させるべきです。
 そこでお聞きします。
 第1に、現在の南スーダンの現状を見てPKO参加5原則は、成立しているとお考えですか。
第2に、政府は、南スーダンが内戦状態にある厳しい現実を直視し、自衛隊をただちに撤退させるべきと思いますが、いかがですか。
 それぞれお答えください。
 今開かれている国会に、安倍政権は、これまで強い反対世論のもとで、三回も廃案になった「共謀罪」と同じ中身の「法案」を「テロ対策」のためとして、名称を「テロ等組織犯罪準備罪」と変えて、出そうとしています。
 「共謀罪」は、犯罪を共謀していると判断したときに罰することができるもので、「具体的な犯罪行為を罰する」という近代刑法の原則に真っ向から反し、その対象は、一般市民にまで及びます。これは、憲法がその自由を保障する思想や内心が罰せられる危険性をはらんでいるため、「平成の治安維持法」「監視・密告社会の再来」と言われています。
 テロ防止に関する条約は世界で13本つくられており、日本は、そのすべての条約を締結し、条約に基づく国内法も整備されているため、テロ対策は、今の刑法などで十分対応できることは、国会審議でも明らかになっています。
 今回の法案創設の根拠として、国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だと説明していますが、この条約は、そもそも国際的なマフィアなどを取り締まる条約です。
 34条項1項には、「国内法の基本原則に従って」とあり、条約を締結するのに、共謀罪などの法律を作る必要はなく、テロ防止のためと言うのはまったくのウソなのです。
 戦前、絶対主義的天皇制のもとで、治安維持法などの弾圧立法が猛威をふるい、「思想・信条の自由」、「言論の自由」を処罰することによって、自由にものが言えなくなり、日本は侵略戦争へと突き進んでいったという歴史があります。
 安倍政権が、強行成立させた安保関連法、いわゆる「戦争法」の本格的な発動、軍備拡大や武器輸出、国民の目と耳、口をふさぐ秘密保護法、警察が気軽に盗聴できるようになった刑事訴訟法の改悪、憲法9条改悪の策動などと一体となった「共謀罪」の創設は、日本をまた戦前の暗闇の時代に逆戻りさせる「海外で戦争する国」づくりの一環と言えます。
 安倍首相は、核兵器の増強まで公言するトランプ大統領と安保条約による同盟関係をさらに強化するとしていますが、日本が、このまま突き進み「戦争する国」に変質してしまったら、2020年まで安全で安心な東京を維持できるのでしょうか。
 そこでお聞きします。
 第1に、「テロ等組織犯罪準備罪」などと「テロ対策」を装っての「共謀罪」創設は、やめるべきだと思いますが、いかがですか。
 第2に、安倍政権が強引に進める安保関連法、秘密保護法、刑事訴訟法の改悪、憲法9条改悪の策動、「共謀罪」創設などの動きについて、どのような見解をお持ちですか。
 それぞれお答えください。 
 国有地売却をめぐる問題や差別的な言動が問題となっている大阪市の森友学園が運営する塚本幼稚園は、戦前の道徳教育の柱とされた教育勅語の暗唱や軍歌の合唱など特異な教育内容が注目され批判も出ています。
 安倍政権は、「日の丸・君が代」の押しつけを保育園などにまで広げようとしていますが、これは、憲法19条「思想良心の自由」に反するとともに、「愛国心」をふりかざし、従順に国に従う国民を育成しようとするものであり、断じて許されません。
 もともと「日の丸・君が代」は戦前、日本の侵略戦争のシンボルとして使われたもので、拒否感をいだく国民は少なくありません。「君が代」の歌詞は“天皇の世の中が未来永劫続きますように”というもので主権在民という国のあり方に真っ向から反する内容です。
 安倍政権のもとで進むこれらの動きは、戦前への「時代錯誤」というだけではなく、まさに、「海外で戦争する国」への体制づくりであり、今を戦前にしようとするものといっても過言ではないでしょう。
 そこでお聞きします。
 保育園に「日の丸・君が代」を押しつける計画は、憲法を踏みにじるうえ、子どもの心身の成長にとっても有害だと思いますが、いかがですか。お答えください。

 以上で、一回目の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。

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