平成27年度(2015年)中央区各会計歳入歳出決算の認定に対する態度表明

2016年10月12日 加藤 博司

日本共産党中央区議会議員団の態度表明を行います。
 昨年9月19日、国会議事堂を数万の国民が包囲し抗議の声を上げる中、安倍政権は、違憲立法の安保法制=戦争法を強行採決しました。安倍政権が推し進めた「安保法制」は、歴代の自民党政権も憲法9条のもとで集団的自衛権の行使は出来ないとしてきたものです。
一方、元内閣法制局長官や全国の全ての弁護士会が、違憲の声をあげ、世代を超えて「憲法9条を守れ」「戦争法案廃止」の運動が全国的に大きなうねりとなって巻き起こりました。この国民的な運動は、戦後はじめて、国政選挙で「野党共闘」を生み出す原動力となり、今年7月に行われた参議院選挙では32ある一人区中11の選挙区で野党統一候補が勝利するなど、大きな力を発揮しました。
 区長は、第三回定例会での、我が党の志村議員の一般質問への答弁でも、安保法制の必要性を容認しています。日米軍事同盟を強化する「安保法制」がアジアの平和に寄与すると考える政治姿勢は問題です。

 暮らしと経済では、中央区財政白書で、アベノミクスにより雇用・所得環境が改善し、緩やかな回復基調が続いている」と評価しています。しかし、日本経済の6割を占める個人消費が2014年、2015年と2年連続マイナス、働く者の実質賃金は5年連続マイナス、消費支出も実質で2.2%も減少しています。安倍政権は、景気浮揚策として、日銀のマイナス金利、株価維持のために公的年金の投入、円高への誘導、大企業の法人税の減税等を行っていますが、労働者の賃金や雇用には反映されず、内部留保としてため込まれています。個人消費が伸びず消費税10%への増税実施を2度にわたり延期せざるを得なくなるなど、迷走するアベノミクスの破綻は明らかです。家計の消費支出が改善しない限り、経済も暮らしも、財政も良くなりません。

 都政では、「政治とカネ」の問題で、猪瀬、舛添と二代続いて任期途中で都政を投げ出す都民不在の都政運営に対する、都民の閉塞感と怒りが広がり、7月の都知事選で、小池百合子氏が都知事になりました。小池知事は、「都政の透明化を進める上で、何よりも重要なことは情報公開の推進」とし、都民に開かれた都政の運営を行うとしています。モニタリング調査結果が出る前の豊洲新市場開設を延期し、異常に膨れ上がった2020年東京五輪の費用の解明、施設計画の見直しを行うとしています。一方、待機児童解消策として保育園の面積基準の引き下げや空き家活用など、規制緩和策を打ち出していることは、保育の質・安全性の低下につながり、注視が必要です。

 中央区に求められるのは、国や都の悪政に対して「防波堤」となって、区民の暮らしや福祉を充実することです。区民の立場に立ち国や都に積極的な働きかけを行い、区として人口増に伴う税収増や各種基金の積極的活用で、区民の要求にこたえる独自の努力が求められます。
 日本共産党区議団は、2014年9月26日に、党区議団実施の「区民アンケート」に寄せられた切実な要求を集約し、わが党の政策的な提起とともに、510項目の「2015年度中央区予算編成に関する重点要望書」を区長に提出し、積極的に予算化するよう求めてきました。2015年度予算を審議した予算特別委員会では、区政運営の問題点を指摘するとともに、具体的な施策を積極的に提案し、予算修正案も提出しまし。
 日本共産党区議団は、これらの経緯を踏まえ、2015年度決算を詳細に検討した結果、区民の長年の要望、我が党の要求、行政の努力などを反映し、認可保育所の増設、特養老人ホームの定員拡大、障害児放課後のディサービスの拡大、コミュニティサイクルの導入、小学校の増改築などの施策が予算化され実現をしていますが、予算執行に様々な問題があると判断しました。よって、平成27年度(2015年度)の各会計決算の認定に反対します。
以下その理由を述べます。

 最初に、一般会計についてです。
 平成27年(2015年)度の決算をみると、一般会計歳入決算額は、883億3588万2018円で過去最大規模となっています。「オリンピック・パラリンピックで中央区の黄金時代を!!」をテーマに、「2020年オリンピックを機にさらなる躍進のチャンスと捉え」るとして予算を編成しました。そして、オリンピックをテコにしたまちづくりを進めることに意欲を燃やし、今区内では、選手村ができる晴海地区を含め、再開発事業が進行中のもの25事業、準備中が7事業、全部で32事業も進められています。
決算では、市街地再開発助成や学校増改築、築地魚河岸の整備費などの「投資的経費」が231億円となりました。市街地再開発事業助成は、7事業に80億円を支出し、「銀座6丁目・松坂屋跡地」や「日本橋2丁目・高島屋周辺」などのオフィス、商業施設の再開発にもそれぞれ13億円の補助金が投入されました。
 予算審議の際、国や都の「国際競争力を高める」都市づくり路線にのって、「都市再生特別地区」の手法により規制緩和や区道の改廃で大サービスし、超高層・超過密な都市をつくることは、災害時の危険を増大させ、オフィスの供給過剰となる問題を指摘しましたが、さらにマンションについても2020年問題といわれる供給過剰などの問題も指摘されています。こうした大規模開発中心のまちづくりは抜本的に見直すべきです。

 第二に、人口増に福祉施設などのインフラ整備が追い付かず、待機児童は増加の一途です。さらに認可保育園を増設して、早急に待機児童ゼロにするために力を尽くすべきです。

 第三に、投資的経費の増大で、財政が厳しくなるとして、区民には、「受益者負担の適正化」の名のもとに、駐輪場の有料化、放置自転車撤去・保管料の徴収を導入しました。有料化などによる新たな負担増は4000万円となりました。しかし、駐輪場登録台数は予算計上時の想定の半分にとどまり、区民の理解が得られていないことは明らかです。

 第四に、健康増進、区民相互の交流や文化・観光資源として注目されている公衆浴場が、この1年で2軒、廃業となりました。公衆浴場の営業継続のために支援をさらに強化すべきです。

 第五に、マイナンバー制度が導入され、予備費からも流用して10億7000万円が使われました。情報保護の安全対策のために湯水のように税金が使われています。利用実態は、個人番号カードの発行枚数が約1万2千枚と、人口の一割にも達していません。個人の情報を国家が管理して、徴税強化や社会保障給付の抑制に使われるマイナンバー制度は問題です。

 第六に、教員の多忙な実態を解消するため超過勤務を減らし、子どもたち一人一人に目が届くきめ細かな指導ができる少人数学級を小・中学校すべての学年に早急に実施することを求めてきました。国の方針を待つという消極的な姿勢を見直し、区独自に早急に実施すべきです。

 第七に、区長の公用車の不適切な利用が見受けられます。運転日誌の記載事項を改善し、公用車の使用目的を明らかにすることを求めます。

 第八に、予算の態度表明で、当時の舛添都政のもとで、豊洲新市場計画は、土壌汚染対策の欠陥、高騰する汚染対策費と整備費、非効率的な施設・物流計画など、問題が山積しており、オリンピックにあわせて強行しようとしている築地市場移転計画は凍結すべきと主張しました。現在、移転は延期され豊洲新市場を巡る矛盾が噴出しています。移転計画を根本的に見直すよう都に求めるべきです。
       
 次は、「国民健康保険事業会計決算」についてです。

 国保料は毎年値上げされ、国保の広域化にむけて一般会計の繰り入れを抑制するとして、高額医療費の4分の2を保険料賦課総額に参入したため、一人あたりの国保料は、過去最高の114,725円になりました。滞納世帯が22%を超える深刻な事態となっており、すでに区民の負担能力を超えています。「国民皆保険制度」を維持するために、国庫負担を増やし、保険料を抑制することを国に求めるとともに一般会計からの繰り入れを増やすべきです。また国保の広域化はやめるよう求めるべきです。

 次は、「介護保険事業会計決算」についてです。

 介護保険料は基準額で2015年度、12%の引き上げとなり月額5,920円、年額71,040円となりました。さらに制度の改悪も進み、一定の所得以上の人は利用料が1割負担から2割負担になり、施設の食事代や部屋代の補助の削減が行われたため負担が増えています。特養老人ホーム新規入所は原則要介護3以上に制限されました。介護保険は社会保障の一環として国の政策です。国に対して国庫負担を増やし責任を果たすことを強く求めるとともに、区としてもサービス抑制・低下を招かないよう財政投入すべきです。

 最後に、「後期高齢者医療会計決算」についてです。

 後期高齢者医療制度は、2年ごとに保険料の見直しが行われ、年金支給額の削減の中で、負担は重いものとなっています。滞納者は424人へと増加してきています。75歳以上の人口増と医療費負担が保険料に直接跳ね返る仕組みとなっていることに加え、制度導入時に低所得者に対して設けられた減免制度も廃止されようとしており、今後も保険料負担が重くなることは確実です。年齢で区切って別立ての医療制度に囲い込む世界に類を見ないこの制度は即刻廃止すべきです。

 以上、各会計歳入歳出決算の認定に対する反対の理由を述べ、
 日本共産党中央区議会議員団の態度表明を終わります。

ページトップへ▲