2016年3月3日 加藤博司
議案第十三号「中央区人事行政の運営等の状況の公表に関する条例の一部を改正する条例」にたいする反対意見を述べます。
この条例は、2007年6月、国家公務員法改正で導入された能力・実績主義に基づく人事評価制度を、地方公務員にも導入し、地方公務員の勤務評定を廃止して、能力評価と業績評価を中心とする人事評価制度の義務づけを求めた「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律」(2014年4月25日成立)の施行をうけて改正するものです。
議案第十三号は「人事行政の運営の状況に関する公表事項を変更」するためとしています。
「法律」では、任命権者は、人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用するとし、例えば分限規定にも人事評価を適用することとしています。さらに、任命権者は、その裁量によって標準職務遂行能力を定め、これを任用に適用するとしています。これでは、区の職員を区長のいいなりにさせかねません。
「段階評価で『出来た』『出来ない』などとランク分けされる職場では、上司の顔色ばかりうかがうことになり、公務員の目が住民に向かなくなる」ことが考えられます。
人事評価制度は、住民に寄り添い問題の解決を図っていくという本来の地方自治体の在り方を大きくゆがめるものです。
憲法15条2項では「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とうたっています。公正中立の立場で国民の権利と福祉の実現のためにその能力を発揮するべき地方公務員の役割を変質させかねません。
組織論を専門とする同志社大学の太田肇教授は「行政の目的は多元的であり、成果を測定する尺度を見つけにくい。目標管理制度を取り入れるにしても、民間企業と比べると明確な目標を定めることが難しい。また、公務員の多くは、成果主義を前提としている典型的な経済人ではない。そのため、金銭的報酬を伴う成果主義は効果が期待しにくいばかりか、仕事そのものから生じる内発的なモチベーションをかえって低下させるおそれがある」と指摘しています。
以上の理由から、日本共産党中央区議会議員団は、能力主義と業績評価を中心とする人事評価制度の導入のための規定整備を行う「議案第十三号」に反対します。
同様の理由で、議案第十四号「中央区職員の分限に関する条例の一部を改正する条例」に反対します。